平岩弓枝『聖徳太子の密使』

平岩弓枝『聖徳太子の密使』

 

聖徳太子の愛娘が、猫たちをお供に旅をする。

厩戸王子(うまやどのおうじ、聖徳太子のこと)の愛娘、綿津見珠光王女(わたつみのたまひかるのひめみこ)は、少年のような声と物腰の少女だった。
格好も少年のいでたちを好んだ。荒馬を乗り回し、男のように活発だったが、父の血を継いで、非常に賢明でもあった。

厩戸王子は常々、わが倭国のより一層の発展のためには、百済や唐国から学ぶだけでは飽き足らないと思っていた。海の向こうにはもっと進んだ国があるという、そういう国からも学びたい、学ばなければならない。

しかし他国の進んだ知識を吸収できるだけの知力と勇気を備えた人材となると、誰も思いつかなかった。我が娘、珠光王女以外は。

平岩弓枝『聖徳太子の密使』

平岩弓枝『聖徳太子の密使』

厩戸王子は、愛娘を派遣する決心をする。珠光王女はふたつ返事で喜んで引き受ける。

珠光王女がこの大遠征のお供に選んだ相手は、なんと猫達だった。
博学の知恵猫、北斗。
三つの珠を嵌め込んだ首輪をつけた、オリオン。
腕自慢で虎そっくりな、スバル。

それからもうひとり、愛馬の青龍。

平岩弓枝『聖徳太子の密使』

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王女は男装して「珠光王子」と名乗り、荒海に繰り出す。猫達は働きやすいよう人型に変身して、どこまでも忠実に珠光に尽くす。馬の青龍も、要所要所で、血筋の非凡さをいかんなく発揮する。今の地名でいえば、沖縄から台湾、東南アジア、インドと回って、最後にはエジプトに至る。どの国でも珠光一行は大活躍して、悪を退治し平和をもたらす。戦う相手は、妖怪や化け物、仙人や悪魔など、魑魅魍魎な悪党たち。

内容的には子ども向けの冒険物語だけど、なんといっても、猫達がいじらしいんだなあ。どこまでも一生懸命で、マンガ「猫村さん」よりかいがいしく、知恵と勇気と友愛と忠心にあふれ、最高な猫達だ。帆を操り、舵をこぎ、料理をし、干し魚を手作りする。敵が現れれば珠光を守って命がけで戦う。その合間にユーモアも忘れない。珠光が、人間ではなく、この猫たちをお供に選んだのも当然だ。これ以上のお供はいない。人間ではあり得ない活躍ぶりだ。

いずれ映像化されるかもしれない、そしたら是非見たい、そんな期待を抱かせる、ファンタジックな物語。

(2010.6.7.)

平岩弓枝『聖徳太子の密使』

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平岩弓枝『聖徳太子の密使』

平岩弓枝『聖徳太子の密使』

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『聖徳太子の密使』

  • 著:平岩弓枝(ひらいわ ゆみえ)
  • 出版社:新潮社
  • 発行:2009年
  • NDC:913.6(日本文学)小説
  • ISBN:9784103279150
  • 285ページ
  • 装幀・挿絵:蓬田やすひろ
  • 登場ニャン物:北斗、オリオン、スバル、おもろ、ポッテッド、ほか
  • 登場動物:青龍(馬)、他

 


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平岩弓枝『聖徳太子の密使』

8.9

猫度

8.5/10

面白さ

8.5/10

猫活躍度

9.5/10

猫好きさんへお勧め度

9.0/10

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