書評:『招き猫の宮』

『招き猫の宮』

 

著者:菊地真・荒川千尋、デザイン・写真:板東寛司。

招き猫のルーツについて書かれた本。

まず口絵の写真が美しい。
猫写真家として有名な板東寛司氏の撮影なだけあって、招き猫を単なるオブジェとしてではなく、まるで生きた猫を扱うかのように、優しい視線で写しているような気がする。
ずらりと並んだ招き猫達、これだけ集まるとなかなか壮観だ。

我々が「招き猫」で真っ先に思い浮べるのは、常滑系の陶器の猫だろう。
白い二頭身で、耳の内側が赤く、小判を抱えたお馴染みの猫だ。

この本の写真を眺めて初めて気が付いた。
伝統的招き猫には、 なんと「肉球」が描かれていない!

日本人として産まれてもう何十年も常滑系招き猫を見続けてきたのに、今の今まで気が付かなかったうかつさ。

板東氏の、生きた猫を撮るような視線に出会って初めて、生きた猫との決定的な相違点に気が付いた次第。
面目ない。

第一編「かたち:形容の招き猫」では、なぜ招き猫があのような、片手をあげた縁起物になったのかを、史実に基づいて述べている。
江戸城で有名な太田道灌を導いた黒猫にはじまり、今の形ができあがるまで、江戸時代を中心に招き猫の変遷が語られる。

第二編「こころ:精神の招き猫」では、猫を高貴で尊いものとして仰ぎ見る日本人の精神を、遠く平安時代に遡って考証している。
猫が登場する平安文学として、宇多天皇の日記、源氏物語、枕草子、更級日記その他が細かく論じられている。
とても面白いと思った。
これらの古典に猫が登場することは知っていたが、こういう論点から論じられたのを見たのは初めてではないだろうか。

猫が渡来動物であることは猫好きなら誰でも知っていよう。
仏教法典を守るために法典と一緒に朝鮮半島から渡ってきたというのが一般に言われている説である。

平安時代の当時、舶来物と言えばどれも、非常に貴重で有り難く大切なものであった。
猫もしかり。
猫は、天皇家をはじめ平安貴族にもてはやされ、ペットブームと言われる今でさえ考えられないほど、敬わんばかりに大事にされた。

その「猫=尊い」という気持ちが日本人の中に脈々と受け継がれ、招き猫という‘神にも近い縁起物として祭り上げられるような存在’に育ったのだという。

読んでいて大変に気持ちが良かった。
私の大好きな猫がどれほど大事にされたかという話を、これでもかと書いてあるのだから。

王侯貴族に愛された日本の猫達。
そして、今尚「招き猫」として、幸運の守り神と祭られている猫達。

今、招き猫はブームだという。
「日本招猫倶楽部」が設立され、「来る福招き猫まつり」が盛大に行われ、若いアーティスト達が現代感覚に満ちた招き猫を次々と創作している。
海外にも招き猫が広まりつつあるそうだ。

猫好きの私としては、招き猫ブームは大歓迎である。

(2004.02.27)

『招き猫の宮』

『招き猫の宮』

『招き猫の宮』

『招き猫の宮』

『招き猫の宮』

『招き猫の宮』ずらり並んだ招き猫たち

『招き猫の宮』

現代作家による現代風招き猫も

『招き猫の宮』

日本文学史上の猫たちの紹介

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『招き猫の宮』

  • 著:菊地真(きくち まこと)・荒川千尋(あらかわ ちひろ)
  • デザイン・写真:板東寛司(ばんどう かんじ)
  • 出版社:戎光祥出版
  • 発行:2004年
  • NDC:387(民間信仰)
  • ISBN:4900901377 9784900901377
  • 143ページ
  • カラー
  • 登場ニャン物:多数の招き猫たち、歴史上の猫たち
  • 登場動物:-

 

目次(抜粋)

  • 【森羅万象】いつも、どこかに招き猫
  • 【変幻自在】アートになった平成の招き猫
  • 【基礎知識】招き猫・これだけは知っておきたい
  • 【当世事情】招き猫ムーブメント最新事情
  • 【基礎知識】招き猫・これだけは知っておきたい
  • 第1編 ●かたち●形容の招き猫
    • 幸運を呼ぶ招き猫伝説
    • 「かたちの招き猫」の登場
  • 第2編 ●こころ●精神の招き猫
    • 第一話 帝位を招く猫
    • 第二話 恋を招く猫
    • その他
  • 栄光時代のたそがれ~猫から『史記』へ

 


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『招き猫の宮』

『招き猫の宮』
8.1

猫度

9.0 /10

おもしろさ

8.0 /10

画像

8.0 /10

猫好きさんへお勧め度

7.5 /10

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