書評:柳広司『シートン(探偵)動物記』

柳広司『シートン(探偵)動物記』

 

シートン動物記にはウラがあった!?。

おなじみの手法から始まる。
探偵が、並はずれた観察眼で、訪問者自身の事を次々と的中させて驚かせるという、古典的導入部である。

探偵役はシートン。あの動物記で有名な、アーネスト・トンプソン・シートンである。

本の中ではシートンは80代の老人として登場するが、動作はまだまだ機敏で若い者に一歩も引けを取らない。
そして、あの「動物記」を生んだ元となった鋭い観察眼は、歳を取って衰えるどころかますます冴え渡る。

本に収められているのは:
「カランポーの悪魔」
「銀の星」
「森の旗」
「ウシ小屋密室とナマズのジョー」
「ロイヤル・アナロスタン失踪事件」
「三人の秘書」
「熊王ジャック」
の7編である。
あの「狼王ロボー」に殺人事件をからませたり、ハタオリスに事件解明のヒントを持ち出させたり、もとの話を知っている人たちには楽しいシリーズだ。

柳広司『シートン(探偵)動物記』

柳広司『シートン(探偵)動物記』

残念ながら、猫が出てくる「ロイヤル・アナロスタン失踪事件」は、オリジナルの話を知らない方が楽しめるけど・・・
少なくとも私としては、もっと工夫して欲しかったなあ。
オリジナルの話を知っている人ならバレバレな筋じゃん。
これでは手抜きと言われても仕方ないぞ?

とか言いつつも楽しく読みましたけどね。

私的には、「三人の秘書」が一番面白かった。
主人公的動物の種類をここで書いてしまうとネタバレになっちゃうので書けないけど、野生動物好きの人なら、マスチフとボブキャットが逃げ出す場面で、どの動物か分ってしまうだろう。
本ではその動物の正体は最後まで隠されているが、別に分かっても問題ない。
むしろ分かって読む方が面白いかも。結末が予想できて。

この本は、動物好きシートン好きなら、きっと楽しめる本です。
子供でも面白く読めると思う。
ロボーが「檻の中で」死んだと書かれた一カ所だけは訂正して欲しいが・・・誇り高きロボーは檻の中ではなく2本の鎖につながれて死んだ・・・それ以外は、とても面白かった。
シートン翁も、大変魅力的に描かれていた。
またシートン動物記を全編読みかえしたくなりました。

(2006.8.8)

柳広司『シートン(探偵)動物記』

柳広司『シートン(探偵)動物記』

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『シートン(探偵)動物記』

  • 著:柳広司(やなぎ こうじ)
  • 出版社:光文社
  • 発行:2006年
  • NDC:913.6(日本文学)小説
  • ISBN:4334924980
  • 293ページ
  • 登場ニャン物:ロイヤル・アナロスタン
  • 登場動物:オオカミ、カラス、ハタオリス、ウシ、スカンク、ハリネズミ、グリズリー熊、他

 

目次(抜粋)

「カランポーの悪魔」
「銀の星」
「森の旗」
「ウシ小屋密室とナマズのジョー」
「ロイヤル・アナロスタン失踪事件」
「三人の秘書」
「熊王ジャック」

 

著者について

柳広司(やなぎ こうじ)

2001年に『黄金の灰』でデビュー。同年『贋作「坊ちゃん」殺人事件』で、第12回朝日新人文学賞を受賞。文学作品に想を得たり、実際に起きた歴史的な事件や実在の人物に材をとり、本格的なミステリーや物語に仕立て上げるその手腕には定評がある。主な作品に『饗宴(シュンポシオン)』『はじまりの島』『吾輩はシャーロック・ホームズである』『新世界』『トーキョー・プリズン』など。

(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)


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柳広司『シートン(探偵)動物記』

柳広司『シートン(探偵)動物記』
9

動物度

9.5/10

面白さ

9.0/10

愛猫家へお勧め度

8.5/10

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