書評:今泉忠明『野生ネコの百科』

今泉忠明『野生ネコの百科』

 

ネコ科全般について知りたい方に。

ネコ科は、地上でもっとも完成された肉食獣である。
鋭い牙。頑丈なあご。出し入れ自由な爪(チーターを除く)。強靱な筋肉。柔軟な背骨。高い知能。
体のどの部分を見ても、これほど機能的で、かつ、これほど美しい動物はいないと思う。
そのネコ科動物たちはしかし、イエネコ種(飼い猫たち)を除き、今や全種が「絶滅のおそれがある動物」に指定されている。

この美しい動物たちを守るためには、まず、彼らについて「少しでもよく知ること」。
知れば、毛皮のコートを魅力的だなんてバカな発想はきれいに抜ける。効きもしない漢方薬に目の飛び出るようなお金を出すこともなくなる。ネコ科動物たちへの一番の圧迫は、人間による密猟なのである。開発による生息可能地域の減少も痛いが、それ以上に密猟圧が壊滅的被害を及ぼしているそうだ。

ネコ科動物たちは、地上の動物たちの頂点にたつ種である。この頂点が生存できなくなったとき、その土台も大きく揺らぐ。ネコ科動物を守るとは、彼らだけを守る事ではないのである。彼らが生息できる環境をそっくり守らない限り、ネコ科動物の保護はとうてい不可能なのである。

そしてその「環境」の中には、我ら人類も含まれるのである。
ところで、現存する食肉目(CARNIVORA)ネコ科(Felidae)は、3つの亜科に分類されることが多い。
ネコ亜科(イエネコ、オセロット、ピューマなど)、チーター亜科(チーター)、ヒョウ亜科(ヒョウ、トラ、ライオンなど)の3つである。
ネコ属、オオヤマネコ属、ヒョウ属、チーター属、ウンピョウ属の5つに分類する説もある。

しかしこの本では、「化石種を含めるとこの分類は妥当ではなく、…」という主張から、次の3つに分類されている。

メタイルルス族 Metailurini
  イリオモテヤマネコMayailurus iriomotensis
チーター族 Acinonyxini
  チーター Acinonyx jubatus
ネコ族 Felini
  ヨーロッパヤマネコ Felis silvestris
  ウンピョウ Neofelis nebulosa
  ユキヒョウ Panthera(Uncia) uncia
  ヒョウ Panthera pardus
  ライオン Panthera(Leo) leo
  等

本の中身は、まず生息地によって章分けした上で、各種につき8~2ページを使ってくわしく説明している。

アジアの章では、トラ、ユキヒョウ、ウンピョウと続くのは納得できるとして、その次に、体が小さく生息数も少ないイリオモテヤマネコが来ている。
著者のイリオモテヤマネコに対する思い入れがかいま見られるような気もし、ついほほえんでしまう。

私の正直な気持ちとしては、イリオモテヤマネコとツシマヤマネコは「日本に生息するネコ科」として別章を立てるか、せめてアジアの筆頭に持ってきたいくらいだ。
私の思い入れも相当強いらしい(汗)

写真も豊富で美しく、見ても読んでも大満足できる一冊である。
なお、私が持っているのは古い版だが、新しい版が出たようだ。

(2008.8.2.)

今泉忠明『野生ネコの百科』

今泉忠明『野生ネコの百科』

*2017年現在は、日本に生息する2種のヤマネコ(イリオモテヤマネコ・ツシマヤマネコ)は、遺伝子上、いずれもベンガルヤマネコに極めて近い種であるとの見解が優勢のようです。
参考文献=『遺伝子からみたイリオモテヤマネコとツシマヤマネコの渡来と進化起源』増田隆一、1996年

今泉忠明『野生ネコの百科』

今泉忠明『野生ネコの百科』

今泉忠明『野生ネコの百科』

今泉忠明『野生ネコの百科』

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『野生ネコの百科』
動物百科

  • 著:今泉忠明(いまいずみ ただあき)
  • 訳:姓名(ひらがな)
  • 出版社:データハウス
  • 発行:1992年(第4版は2011年)
  • NDC:489.53(哺乳類・ネコ科)
  • ISBN: 4887181213(初版)、9784781700991(第4版)
  • 155ページ
  • オールカラー

 

目次(抜粋)

アジア
・トラ
・ユキヒョウ
・ウンピョウ
・イリオモテヤマネコ
・ベンガルヤマネコ
・スナドリネコ
・ツシマヤマネコ
・アジアゴールデンキャット
・マレーヤマネコ
・サビイロネコ
・マーブルドキャット
・マヌルネコ
・ハイイロネコ
・ボルネオヤマネコ

アフリカ
・ライオン
・チーター
・サーバル
・アフリカゴールデンキャット
・クロアシネコ

西アジア
・ヒョウ
・カラカル
・ジャングルキャット
・スナネコ

ヨーロッパ・北アメリカ
・ヨーロッパヤマネコ(リビア・ステップ)
・スペインオオヤマネコ
・ヨーロッパオオヤマネコ
・カナダオオヤマネコ
・ピューマ
・ボブキャット

南アメリカ
・ジャガー
・オセロット
・マーゲイ
・ジャガランディ
・タイガーキャット
・ジェフロイネコ
・アンデスネコ
・パンパスキャット
・コドコド

日本の動物園で飼育されているネコ科動物

 

著者について

今泉忠明(いまいずみ ただあき)

東京水産大学卒業、国立科学博物館で哺乳類の分類・生態を学ぶ。文部省の国際生物計画(IBP)著作、環境庁のイリオモテヤマネコの生態調査等に参加。上野動物園で動物解説員を勤め、(社)富士自然動物園協会研究員として富士山の動物相、トガリネズミの生態、行動などを調査川崎市環境評価審議会委員を務める。
  現在“西表島に未発見のオオヤマネコは棲めるか”なども考察してる。すなわち、「1頭のネコ科どうぶつの行動範圏の広さは、体重1kgあたり0.28~4平方キロと推定したが、体重が4kgほどのイリオモテヤマネコでは1.1~16平方キロの行動圏が必要だと言うことがわかる。実際の生態学的調査の結果でも、1.1~5平方キロという数字が出ている。つまり、行動圏にだぶる部分がまったくなかったら、面積およそ300平方キロの西表島に生息しているヤマネコの数は、獲物がたっぷりいて人間が住んでいなかったら272頭、少なければ50頭を欠くくらいのということになる。噂ではウンピョウ大の大型のヤマネコがもう1種、西表島にいるという。ウンピョウの体重およそ20kgであるから、その行動圏は22~80平方キロとなり、西表島に生息できる頭数は4頭から13頭ということになる。一般に30頭が個体数維持の限界と考えられるが、13頭で数百万年を生き続けてきたとは考えにくい」と。
  主な著書に『アニマル・トラック』自由国民社、『動物の衣食住学』同文書院、『進化を忘れた動物たち』講談社、『地球絶滅人類記』竹書房、『動物たちの愛』化学工業日報社などがある。
(注:省庁名は発行当時のまま転記しています。)

(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)


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8.7

猫度

10.0 /10

面白さ

7.5 /10

情報度

9.8 /10

愛猫家へお勧め度

7.5 /10

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