高橋由太『ちびねこ亭の思い出ごはん』

副題:「黒猫と初恋サンドイッチ」。
ちびねこ亭は「思い出ごはん」を作ってくれる小さな食堂です。「思い出ごはん」とは「陰膳」のことです。
【陰膳】(1)長い間不在の人のために、家族が無事を祈って供える食事のこと。(2)法事法要のときに、故人のために用意する食事。
ちびねこ亭の「思い出ごはん」は(2)のほうで、食べると故人の声を聞いたり、ときには会うこともできるとのウワサがながれていました。
ストーリー
大好きな自慢のお兄ちゃんは、琴子を守って死んでしまった・・・
琴子はふぬけたような毎日を送っていた。そんな彼女を心配して、ある人がこっそり教えてくれた秘密。海のそばの「ちびねこ亭」という食堂で「思い出ごはん」を注文すると、死んだ人に会えるという。
琴子は早速、予約を入れて、千葉県のその食堂を訪ねに行く。
ほか、小学生のほのかな失恋の話。年老いた夫の、病死した妻への想い。そして、青年の、母との切ない思い出。彼らといつも一緒にいる、ちっちゃい茶ブチ柄の子猫「ちび」。
彼らは本当に、懐かしい死者に会えるのだろうか?
感想
ふぅわりとしたマシュマロのような、やさしい小説です。
そこにあるのは、逝ってしまった人への、焦がれるようなおもいだけ。一目でいい、その人にまた会いたい。一言でいい、その人の声をまた聞きたい。
4人の愛がそれぞれ語られますが、私としては、老夫婦のおもいが一番すてきだと思いました。惹かれあって、結婚して、長い年月を一緒に暮らして、寿命が来てもなおあそこまで相思相愛のままでいられるって、いいなあ。
ソニー生命保険株式会社が50歳~79歳の配偶者がいる男女682名を対象に行った調査では、
「生まれ変わっても今の相手(配偶者)と結婚したいと思うか」聞いたところ、『そう思う』と回答した方は全体で64.8%。半数以上の方が今の相手と「また共に過ごしたい」と考えていることがわかります。
ただし、男女別にみると、『そう思う』と回答した人の割合は、男性72.5%、女性56.0%となり、16.5ポイントの差がみられます。「非常にそう思う」の割合を見ても、男性36.5%、女性が18.9%と17.6ポイントの差がでており、(後略)ref:CanCan.jp『生まれ変わっても今の人と結婚したいですか?50歳以上の既婚者に聞いた夫婦のキモチ』2023.10.1作成。
この数字を高いとみるか低いと見るかは人それぞれですが、・・・小説の老夫婦は間違いなく、「非常にそう思う」の中でもトップクラス同士、「何が何でも絶対にまた一緒になる!」ってタイプなんです。すごいです。
静かな空気が流れ、爽やかな後味が残ります。そんな小説でした。お勧め。

なお、余談です。ウミネコが飛び交う砂浜、ひっそりと落ち着いた小さな食堂。小説内に細かい住所は載っていませんが、いくつか地名は出てくるので、GoogleMapで探しました。昔は地図帳で、最近はネットで、その土地を探しながら読むのは私のクセです。残念ながら、それっぽいほど静かそうな海岸線は見つかりませんでした。でも、こういうお話は、ドカンと実在するより、夢とうつつの間にたたずんでいる方がよいのかもしれません。
※著作権法に配慮し、本の中見の画像にあえてボカシをいれる場合があります。ご了承ください。

目次(抜粋)
- 茶ぶち猫とアイナメの煮付け
- 黒猫と初恋サンドイッチ
- サバ白猫と落花生ごはん
- ちび猫と定食屋のまかない飯
著者について
高橋由太(たかはし ゆた)
2010年、第8回「このミステリーがすごい!」大賞隠し球として『もののけ本所深川事件帖 オサキ江戸へ』でデビュー。「オサキ」シリーズ、「ぽんぽこ」シリーズ、「猫は仕事人」シリーズなど、多くの時代小説の人気シリーズ作品を執筆している。時代小説以外の作品に「黒猫王子の喫茶店」シリーズ、「作ってあげたい小江戸ごはん」シリーズのほか、『あなたの思い出紡ぎます 霧の向こうの裁縫店』『神様の見習い もののけ探偵社はじめました』などがある。
(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)
『ちびねこ亭の思い出ごはん』
黒猫と初恋サンドイッチ
- 著:高橋由太(たかはし ゆた)
- 出版社:(株)光文社 光文社文庫
- 発行:2020年
- NDC:913.6(日本文学)小説
- ISBN:9784334790059
- 250ページ
- 登場ニャン物:ちび、、無名の黒猫、ミミ
- 登場動物:ウミネコ



