アシュリー・ウォード『動物のひみつ』

ウォード博士の脅威の「動物行動学入門」。争い・裏切り・協力・繁栄の謎を追う。
本書の元となったオーディブルオリジナル『THE SOCIAL LIVES OF ANIMALS』は、英国での宣伝が全くなかったにもかかわらず、2週間にわたってAudibleのチャートでトップを記録している。
著者略歴より
オーディブル、つまり、耳で聞く著作というつくりでわかるように、専門用語を極力排除した平易な文章、日常的な表現で語られています。つまり、非常に読みやすい。約700ページもの分厚い書籍でありながら、すらすらと読めてしまいます。

しかし内容は濃密です。たとえば、吸血コウモリが飢えた仲間に血を吐き出して与える話。シロアリの自己犠牲。小さなアリの巨大な建築物。魚たちの生き残り作戦。ネズミの知恵。ゾウの感受性。ハイエナたちの掟。マッコウクジラ対巨大イカの対決。チンパンジーとボノボの違い。その他、その他。まさに生物知識の倉庫です。
私にとってとくに興味深かったのは、オキアミの話でした。ライオンやゴリラやイルカなどの派手な動物達は非常にポピュラーですから、彼らの生態もよく知られています。私のような動物好き+本好きであれば、正直、この本に書かれているくらいのことはすでにほとんど知っています。
けれども、オキアミの話は新鮮でした。オキアミといえば今までは、南極の代表的な被捕食生物で重要な栄養源、くらいのイメージしかありませんでした。しかし、そんなものじゃなかった!これほどの重要生物、キーストーン種だったとは!オキアミに謝らなくてはなりません。
世界中の海には85種ほどものオキアミがいること。南極海に生息するナンキョクオキアミを世界中の人々に配れば、一人あたり一万匹にもなるということ。人間の小指くらいの大きさしかないオキアミだが、その総重量は全世界の人間の全体重を超えること。海に住む捕食動物達がどれほどオキアミにその栄養を頼っているか。オキアミが消えれば、南極を代表する動物達の多くが同時に消えてしまうこと。それほど重要なオキアミなのに、ぜんぜん強い動物ではないこと。人間の眼には些細とみえるような環境変化がオキアミたちには決定的な結果をもたらし、連鎖的にその地域全体の生物相が大きく減少してしまったという事件が実際に起こっていること。等々。

ところで、地球上の哺乳類のバイオマスは重量ベースで、ヒトが34~36%を占めるそうです。野生動物は、ゾウもカバもネズミもクジラもトドもアザラシも全部いれて、わずか4%。残り60~62%はウシ・ブタ等の家畜だとか。その、哺乳類の3分の1を占めるヒトより、オキアミの総重量の方が多いとは。これだけでもオキアミってすごいと思いませんか?
地球の生命体って、本当に繊細なバランスの上に成り立っているんですね。間違ってもオキアミたちが絶滅したり大減少しないことを祈るばかりです。
ほかにも、面白くて為になる話がてんこ盛り!生き物が好きな方には超おすすめな一冊です。700ページという分厚さが物足りなく感じられるような本です。私もほぼ一気読みでした。著者の膨大な知見に感謝♡

※著作権法に配慮し、本の中見の画像にあえてボカシをいれる場合があります。ご了承ください。

目次(抜粋)
はじめに
- 夜を翔る吸血コウモリ
- 血を分け与える
- 知性の進化と社会生活
- ほか
1章 氷と嵐の世界に棲む謎の生物
- 南極海を越える
- 襲いかかる大波と猛烈な嵐
- 表アザラシの恐ろしい歯
- 南極海の「キーストーン種」
- オキアミは孤立を嫌う
- ほか
2章 シロアリはコロニーを守るために自爆する
- 女王バチの大仕事
- 極めて危険な状況
- 女王バチと働きバチ
- 昆虫が作る「超個体」
- ハナバチの多様性
- ほか
3章 イトヨが決断するとき
- 「いかれているのか?」
- 泥にまみれてイトヨを観察
- 魚の群れに魅せられて
- 自動運転車と魚の群れ
- 「混乱効果」を利用して生き延びる
- ほか
4章 渡り鳥は「群衆の叡智」で空を飛ぶ
- ムクドリの大群
- 黒い太陽
- 注意を向けるのはたった七羽
- 鳥の群れの隊形の秘密
- 雲の上を歩く子どものように
- ほか
5章 ネズミ、都市の嫌われ者が私たちに生き方を教えてくれる
- 気がついたらネズミだらけ
- 人間が繁栄を助ける
- ドブネズミはほとんど単独行動
- ピザを運ぶネズミ
- 巧みに独餌を避ける
- ほか
6章 家族の死を悼むゾウ
- 家畜との出会い
- 四大家畜の起源とは
- 羊飼いという職業
- 小型化した家畜の脳
- 牛は仲間の顔を見分ける
- ほか
7章 ライオン、オオカミ、ハイエナが生き延びるための策
- アフリカの夜、ライオンの鳴き声
- ほとんど類のない体験
- 茂みから飛び出してきたもの
- トロフィー・ハンティング
- 地球上で最も恐るべきハンター
- ほか
8章 クジラ、イルカ、シャチ、最も謎めいた動物
- 荒れた海でクジラを探す
- 推進二〇〇〇メートル、驚異の潜水能力
- 巧みな「非常線」
- マッコウクジラ対巨大イカ
- クジラと暮らすイルカ
- なんのために「抱擁」するのか
- ほか
9章 類人猿の戦争と平和
- 霊長類が人間を知る手がかりに
- サルの二日酔い
- チャクマヒヒの「犯罪」
- ヒョウがいる!
- 警戒声を使い分ける
- ほか
エピローグ
- 人間も社会動物である
- 人間は孤独に耐えられない
- 「集団で生きること」の効用
- 遺伝子と社会的ネットワーク
- ほか
謝辞
訳者あとがき
参考文献
索引
著者について
アシュリー・ウォード Ashley Ward
英国ヨークシャー出身。シドニー大学kの動物行動学の教授。科学雑誌に100以上の論文を発表し、多くの悪術書に引用されている。
(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)
『動物のひみつ』
博士の脅威の「動物行動学入門」。争い・裏切り・協力・繁栄の謎を追う
- 著:アシュリー・ウォード Ashley Ward
- 訳:夏目大(なつめ だい)
- 出版社:ダイヤモンド社
- 発行:2024年
- NDC:480(動物学)
- ISBN:9784478116289
- 729ページ
- モノクロイラスト(カット)
- 原書:”The Social Lives of Animals” c2022
- 登場ニャン物:-
- 登場動物:多数



