モリス『人間とヘビ』

モリス『人間とヘビ』

 

かくも深き不思議な関係。

この本は、ヘビを生物学的に説明した本ではない。
「先史時代から現代までの人間の歴史を通じて、人間とヘビの関係を考えようとする」本だ。
どこまでも「人間とヘビの関係」に徹底し、ヘビそのものの説明は少ない。
生物学より文化人類学といってよい。

モリスはイギリス人だから、モリスのヘビ観や研究対象も当然、もっぱらイギリスをはじめとするヨーロッパが中心となり、あとはイギリス文化とつながりが深いエジプトやインドの話となる。
日本についてはわずか数行触れられているだけである。
日本人とヘビ(特にアオダイショウやマムシ)はかなり密接な関係で暮らしてきたから、モリスが調べたら面白かったのではないかと思うだけに、少し残念だ。

キリスト教文化の西洋人モリスと、日本人の私とでは、ヘビ観がかなり違うような気がする。(私のヘビ観が典型的な日本人かと問われれば、否、かなりズレていると答えなければならないだろうけれど。)
そのため、我々日本人がこの本を読む場合、「人間とヘビ」史だけでなく、西洋文化史(心理学?)も読み取れるような気がして、トリプルで面白い。

ヘビは古代の頃から特別視され、神聖視され、恐れられ、嫌われ、そして利用されてきた。
遺跡に描かれたヘビ。
神話や聖書に登場するヘビ。
毒ヘビと人間の関係。単に噛まれて痛いとか死ぬとかだけでなく、魔術に使われたり、医療に利用されたり。
時にヘビはあまりに誇大評価された。見ただけで死ぬとか、あるいは何十メートルにも達する大蛇とか。
そして、今の時代、ヘビは最も「嫌われている動物」のひとつだ。なぜ人はこうもヘビを嫌うのか?

みっちり書かれています、けっこう読みでがあります。
じっくり読んでください。
猫は出てきません。

(2007.5.28.)

モリス『人間とヘビ』

モリス『人間とヘビ』

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『人間とヘビ』
かくも深き不思議な関係

  • 著:ラモナ & デズモンド・モリス Ramona & Desmond Morris
  • 監修:小原秀雄(おばら ひでお)
  • 訳:藤野邦夫(ふじの くにお)
  • 出版社:平凡社ライブラリー
  • 発行:2006年
  • NDC:487(脊椎動物・爬虫類・ヘビ目)
  • ISBN:458276584X 9784582765847
  • 314ページ
  • 原書:”Men and Snakes”
  • 登場ニャン物:-
  • 登場動物:ヘビたち

 

著者について

デズモンド・モリス Desmond Morris

(1928~ )
イギリスの動物学者・著述家。イングランドのウィルトシャー州生まれ。バーミンガム大学とオックスフォード大学の動物学科で学ぶ。グラナダTVのロンドン動物園撮影部長、ロンドン動物学協会の哺乳類部門管理者を務めた後、執筆活動をはじめる。
著書に『裸のサル』(角川文庫)、『マンウォッチング』(小学館ライブラリー)、『ジェスチュア』(ちくま学芸文庫)など多数。

ラモナ・モリス Ramona Morris

イギリスの歴史家、著述家。オクスフォード大学の歴史学科を卒業後、1952年にデズモンド・モリスと結婚。
ふたりの共著に、本著『人間とヘビ』の他、『人間とサル』『人間とパンダ』がある。

小原秀雄(おばら ひでお)

東京都生まれ、女子栄養大学名誉教授。専門は、動物学(哺乳類)、人間学、環境科学。NPO法人・野生生物保全論研究会会長、(財)日本自然保護協会元理事長・現顧問ほかを務め、活躍中。著書多数。
近著に『人類は絶滅を選択するのか』(明石書店)、『親と子の動物行動学』(教育出版)、『ゾウの歩んできた道』(岩波書店)など。

藤野邦夫(ふじの くにお)

石川県生まれ、翻訳家。
訳書に、F.R.ウィルソン『手の五000万年史』(新評論)、G.アンダーソン『ガンに打ち勝つ患者学』(実業之日本社)、E.ルディネスコ『ジャック・ラカン伝』(河出書房新社)など多数。

(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)


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モリス『人間とヘビ』

5.7

動物度

8.5/10

面白さ

7.0/10

猫好きさんへお勧め度

1.5/10

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