ラトリッジ『猫の贈り物』
猫の目から見たこの世界。
原題は “Diary of a Cat” つまり、“ある猫の日記”。
その題名の方が、内容をずっとよく表していると思う。
主人公の猫の名前はわからない。
日記中には“ぼく”とのみ記されている。
猫の目がみた断片的な人間模様、原因や理由など追及しない、事実そのままを、見た分だけ、淡々と描いている。
他の猫が家にやってきたときも、優しいミセス・ヴィが突然病に倒れたときも、思いがけない姿で戻ったときも、あっさりと、事実だけを述べている。
“猫の贈り物”と題されているのだから、きっと最後には奇跡が起こって、・・・などと期待しても何もおこりません。
強いて言えば、この猫の存在そのものが最大の贈り物ということだろうか。
記憶に残った一文は、ミセス・ヴィのひとこと、
「可愛げを追求することに命をかけた一生って、さぞや疲れるでしょうね。」
アイドルがアイドルで居続けるのは、たしかに疲れることではあるかも知れない。
(2002.4.30)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『猫の贈り物』
- 著:リー・W・ラトリッジ Leigh W. Rutledge
- 訳:鷺沢萌
- 出版社:講談社文庫
- 発行:1995年
- NDC:933(英文学)小説 アメリカ
- ISBN:4062732106 9784062732109
- 212ページ
- 原書:”Diary of a Cat” c1995
- 登場ニャン物:(無名)、ミスター・ブル、ボビー・ブープ、ブリジット、ザッカリー、パフ
- 登場動物: