常喜寝太郎『全部救ってやる』巻04

猫も、犬も、生きているのだから。
最初は、無責任餌やり婆さんの話。庭に集まる野良猫たちに食べ物を与えるだけで、他は何もしない。つまり、去勢避妊手術は受けさせないし、猫トイレも設置しない。野良猫の数は増えるばかりで、糞害に悩んだ隣人からの相談がはいる。個人で保護活動をしている久我と、彼を手伝う星野は、その解決のためにある提案をする。
いっぽう、こちらは老犬保護施設。老衰や病気で寝たきりで、里親が見つかりにくい子、行き場のない犬たちが暮らす終着点。
施設、といっても、ここも個人ボランティアで、しかも建物は賃貸だった。その契約終了日が迫っている。60頭もの老犬たちの行き場がなくなる。いったい、どうすれば!?

感想
このシリーズ、どの作品も良いのですが、私はこの第4巻目が今までの中で一番良いと思いました。
餌やり婆さんだって、悪人とは思えません。少ない年金をやりくりして、食べものだけでもと野良猫たちに与えていたんだなと、これは私の勝手な想像ですが、でもたいてい、そうですよね。無責任だから手術しないのではなくて、こういうケースはたいてい、手術費用まで出せないから、あるいは、単なる無知で、手術しないだけです。
そして、「糞害に困った」住民もすてきな人。世の中、こういう人ばかりならどんなによいか!

そしてさらに、老犬たちをたった一人でお世話しているレミさん、すばらしすぎます。文字通り犬たちと寝食を共にし、休息といえばその辺でわずか数時間のごろ寝だけ、あとは1週間フロ入らずで懸命なお世話。尋常ならぬ体力、精神力、まさに人格者です。

だからこそ、彼ら善人を食い物にするような、あるいは保護活動をしにくくするような詐欺野郎には腹がたちます。でも、実際、いるんですよね。クラウドファンディングの案件を見ていても、ときどき「???」な案件を見つけることがあります。こーんな怪しいの、なぜ審査に通ったか疑問って奴。幸い、支援者の皆様も賢く、そういう「見るからに怪しいクラファン」に支援金が集まっているのも見たことありませんが。
読んでいて、本当に心温まる巻でした。この調子で、どんどん連載をお願いします!めっちゃ楽しみ。
ところで、この方の猫の絵。猫のいかにも柔らかく丸っこい感じがとてもよく出ています。またポテッと座っているところなど、太っているわけでもないのに、しっかり猫の体重も感じられます。よほど猫を抱きなれていないと、こういう絵は描けませんよね。いいなあ。

主人公・久我の姿勢にも共感です。私は保護団体等が活動資金の支援を求めることはなんら間違ったことではないと思っていますし、動物が好きな人が募金するのもすばらしい事だと思います。
でも、活動する人間が最初から寄付金目当て、寄付金に頼り切って動物たちを助けようとするのは間違っていると思います。
一時的ならよいです。例えば、それまで何も知らなかった中学生が、ある日、怪我を負った子猫を見つけ、しかし自分のお小遣いではとても足りず、その子を助けるために寄付を集める。そういう行為は賞賛するしかありません。
が、継続して保護活動していくのであれば、自分の力で基本的な部分はできること、それが大前提であるべきと思います。足らない部分は支援をお願いしても良い。が、集めた子達のフード・猫砂代、そのくらいは支援ゼロでも自分でまかなえるようでなきゃ。
・・・他人頼みでスタートすると、いずれほぼ必ず、儲けが先な団体に堕落してしまいます。
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

目次(抜粋)
- 第28話 地域猫問題
- 第29話 こんな人が住んでたんだ
- 第30話 ご近所ネットワーク
- 第31話 誰かのために
- 第32話 看取りシェルター
- 第33話 やっちゃん
- 第34話 進むしかない
- 第35話 クラファンの相談
- 第36話 愛じゃないかな
- 第37話 パーフェクトライフ
『全部救ってやる』巻04
- 著:常喜寝太郎(つねき ねたろう)
- 出版社:株式会社小学館 マンガワンコミックス
- 発行:2025年
- NDC:726(マンガ、絵本)マンガ
- ISBN:9784098541010
- 190ページ
- モノクロ
- 初出:「マンガワン]2024年12月23日~2025年3月17日配信分
- 登場ニャン物:猫たち
- 登場動物:犬たち
