常木寝太郎『全部救ってやる』巻07

常木寝太郎『全部救ってやる』巻07

シリーズ7冊目。

たった一人で、動物たちを救助し続ける久我。孤軍奮闘する久我に協力する人が少しずつ増えてきた。美容師の星野。保護団体ディフェンドのくるみ。さらに、ブリーダーの轟も、もしかしたら?

ストーリー

長い間、長内は動物保護会の神的存在だった。彼女はどんな子も無条件で受け入れてきた。久我もくるみも尊敬していた人物。なのに。

彼女の家は死体であふれていた。飼育ネグレクト。ショックは大きかった。

こちらは売れないアイドルグループ、「LOVEポイ金魚」。金魚すくい歌を無邪気に歌っていたが、そのメンバーの一人が、ある日、排水路の横を通りかかると、そこには金魚たちが沢山。金魚すくいで売れ残った金魚が捨てられたのだ。彼女は「売れない自分も捨てられるかも」と我が身のように感じ、金魚たちをすくいあげるが、弱って次々に死んでしまう。

金魚すくいの金魚たちの過酷な運命を知ってうなだれる彼女。

いっぽう、こちらはJRAの騎手を目指す青年。厳しい体重制限に悩みながら、それでも騎手の夢を諦めずにいる。そしてもうひとり、キャラクター作家の彼女は競争馬をモチーフにしたオンラインゲームの馬一頭のデザインを頼まれた。実在の馬をモデルにしたゲーム。どの馬を選ぼうか、競馬の世界を初めて覗いた彼女が受けた衝撃とは?

 

常木寝太郎『全部救ってやる』巻07

感想

金魚すくいの金魚たち、競馬のサラブレッドたち。どちらも人が人工的に作り出した品種で、人の手で繁殖できている生き物たち。つまり「商売」「金儲け」とガッチリ直結した生物たちであり。

この子達の問題を取り上げてくれたのは感謝です。けれども、私としては、金魚すくいやサラブレッド競馬界の存続を肯定する内容となってしまっているのはちょっと残念です。

金魚すくいなんて、もう過去の娯楽。現代社会には全く不要な世界だと私は思います。だってそうでしょう?掬うのは生きた金魚である必要はぜんぜんない、ヨーヨー風船でも十分に楽しいですし、バーチャル金魚やメカ金魚のほうがもっと面白くできそうです。金魚すくいに対する疑問はこちらのページでもすでに書いています。

『金魚たちの悲劇』https://nekohon.jp/wildlife-wp/kingyosukui/

競馬については、競馬があるからこそウマたちが地上に存続し続けていられるという事実があり、それは私も知っています。野生馬は絶滅しました。かつては野生馬と思われていたモウコノウマも、最近の研究では、一度家畜化された馬が再野生化したものと判明しています。

そして、私も、ウマほどに美しい生物種が地上から消えてしまうことを望むものではありません。

とはいえ、です。日本国内だけで、年間7000頭ものサラブレッドが産ませられているという事実。すべて人為的に計画出産させられた馬たちです。サラブレッドは人工授精や受精卵(胚)移植などの人工的な受胎方法は国際的なルールで禁止されていて、その点は、人間が腕を膣内につっこんで人工授精させる牛等より多少恵まれています。ではあるものの、いつ、誰と交配させるかは全部人間が決めています。最後の「行為」のみ馬たちにまかされている、というだけの話です。人為的な計画出産であることに変りはありません。

 

常木寝太郎『全部救ってやる』巻07

 

産まれたサラブレッドがすべて競走馬になれるわけではありません。競争率は高く、最初の段階で半分は落とされます。運良く中央競馬や地方競馬に出走できても、成績が悪ければ終わり。成績がよくても、歳をとれば終わり。競馬界に名を残すような名馬であれば種馬として引退後も(しばらくは)大切にされ、また、運が良い少数は乗馬クラブ等に引き取られますが、その他の大多数は・・・肥育場に引き取られます。つまり、太らされて殺されて肉にされます。

サラブレッドは20~25年、個体によっては30年も生きることの出来る生き物です。しかし、寿命まで生きられるサラブレッドは、産まれた7000頭/年のうち、何頭いることか。サラブレッドは「速く走ること」だけを重視して作出された品種ですから、性格的には繊細で神経質です。一般人相手の「乗馬クラブ」にはあまり向かない品種なのです。乗馬クラブであれば20歳のベテラン馬でも活躍できますけれど、そんなサラブレッドはどれだけいるのか、私としては疑問しかありません。

と、こんなことは作品の中ではあまり詳しくは説明されていず、逆にかなり楽観的な言葉が紹介されていたりして。ちょっとモヤモヤしてしまう部分がありました。

私は馬は好きです。乗馬体験も少なからずあります。馬という生き物が、家畜化されたお陰で現代まで生き延びてくれたことには感謝です。けれどもそのことと、サラブレッドという品種を残べきかということとは別問題です。サラブレッドたちはあまりに「作られすぎて」います。その姿形についても、能力についても、頭数についても。そして彼らの運命は過酷すぎることが多いです。

産まれた馬たち全員が、安心してその寿命を全うできる世界になってほしいと、心の底から願っています。

 

常木寝太郎『全部救ってやる』巻07

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像にあえてボカシをいれる場合があります。ご了承ください。

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目次(抜粋)

  • 第58話 罰ゲーム執行だな
  • 第59話 足りないのは遊びだよ
  • 第60話 金魚の保護活動
  • 第61話 金魚すくいの闇
  • 第62話 金魚救いの歌
  • 第63話 馬の保護活動
  • 第64話 もう一度
  • 第65話 がんばれパウンドタイガー
  • 第66話 未来は変わっていきますよ

『全部救ってやる』巻07

  • 著:常木寝太郎(つねき ねたろう)
  • 出版社:株式会社小学館 マンガワンコミックス
  • 発行:2026年
  • NDC:726(マンガ、絵本)漫画
  • ISBN:9784098544653
  • 190ページ
  • モノクロ
  • 初出:「マンガワン」2025年9月29日配信分~2026年1月5日配信分
  • 登場ニャン物:-
  • 登場動物:犬、馬、金魚
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