映画『グーグーだって猫である』

映画『グーグーだって猫である』

 

小泉今日子主演、犬童一心監督。

漫画、全巻6冊、持っています。名著中の名著です。おおいに期待して映画を観ました。

感想は・・・正直に言います・・・かなり期待外れでした。(関係者の方、ファンの方、すみません)

ふわふわ~とした雰囲気は、大島弓子ワールドそのまんま。ほわんとした中に優しさがギュッと詰まっています。主役小泉今日子さんの演技も、マンガの動き方(ポーズ)に似ていて、よく研究されているなと感心しました。マンガの絵がそのまんま実写になっていました。そこはすばらしかった。

でもね・・・

以下、ネタバレです。

↓ ↓ ↓ 【閲覧注意:ネタバレ含む】 ↓ ↓ ↓

あの名作マンガが、なんでこうなっちゃうの!?というのが、私の素直な感想。良いところがすっかり取っ払われて、原作にはない(し、猫好きにはどーでも良い)場面が多数追加されていました。残念です。

原作「マンガ・グーグー」は、”命”と真正面から向き合った作品です。命や愛というものを、あれほどしかも淡々と素直に、且つ、意欲的に語った作品は滅多にありません。ここでいう”愛” は恋とかLOVEとか、そういうガツガツした感情ではありません。仏教でいう慈愛に近いでしょうか。見返りは求めず、まして恩に着せるなんてせず、そこにいる相手を、ただそこにいるというだけで慈しむ。そのままの姿で受け入れて、そのまま慈しむ。

そこには、凡人から一段離れた、高みの世界が広がっていました。

でも、映画の「グーグー・・・」は、凡人の世界に連れ戻されていました。

皆、優しい。けど、それだけ。漫画の底に流れている哀しさというか深みが感じられない、少なくとも私には、感じられませんでした。

ストーリーの前提に、愛猫サバの死があります。あれほどまでに愛し慈しんだ猫の死があります。グーグーとの運命的な出会いによって、サバを失った悲しみがうすらいだ頃、主人公の弓子さん(映画では麻子さん)に癌が見つかり、入院・手術・治療と、命がけの体験をされます。ご自身の死への恐怖よりなにより、グーグーの今後を心配する弓子さん。遺書を書き、人々に頭を下げて頼み込みます。その辺の、マンガに描かれた心痛が、映画ではあっさり「遺書を書きました」のセリフ1行で済まされているのが、なんか軽すぎというか・・・

今の日本には、里親募集される猫が多数いますが、大人猫が募集される理由の多くが、飼い主の死や病気に起因するものです。幼猫~子猫ならすぐに貰い手が付きます。でも大人猫はなかなか決まらない。悲しい現実です。長い年月をともに暮らした大人猫を、もし自分の病気や死が原因で不幸にしてしまったらどうしよう、これは猫と暮らしている者にとっては恐怖です。乱暴な話ですが、もし人間の子供であれば、最悪でも国家がなんとかしてくれる、けれども、猫は・・・この大事で大切な、愛しい猫は・・・

映画の麻子さんの場合は、グーグーを引き取ってくれる当てはあります。それでも、飼い主であれば、わが身の手術よりも心配で恐ろしいことなのです。

その、身を切られるような恐怖心が、映画では弱すぎる・・・

また。

マンガでは、手術後、弓子さんは捨て猫に出会い、献身的に、手厚くお世話します。グーグーも捨て猫を受け入れます。弓子さんとグーグーの優しさ、心の広さ。

1頭だけではありません。弓子さんは、なぜか、次々と捨て猫に出会ってしまうのです。会ってしまったら見捨てられない。家族がどんどん増えます。

その、家族が増える場面も、映画ではまったく描かれていません。グーグー以外の登場猫物は、グーグーが追いかける白い雌猫だけで。

そう。

グーグーは、映画では、外出自由猫なんです!これも、違和感いっぱいです。

どうして、映画とかでは猫はいつも、外出自由で描かれるのでしょうか?今は完全室内飼育が主流となりつつあり、また法律でも室内飼育が奨励されています。この流れが進めば、完全室内飼育が義務付けられる日も遠くないかもしれません、犬の係留(囲い込み)飼育が義務付けられているように。

なのに、映画では、グーグーは外を走り回ります(マンガでは外に出しません)。そして登場人物たちは、それをニコニコと見ています。グーグーは一度迷子になり、人々は慌てますが、その後でさえも「今後は完全室内飼いに」とはなりません。

ここは猫愛護サイトですので、映画のレビューであっても、ストーリーや画像や演出ではなく、猫をどう扱っているか、それが何より重要なポイントとなります。どれほど素晴らしいストーリーでも、どれほど見事な映像でも、猫の扱いに管理人が不満足な映画は、猫愛護サイトとして評価できません。

「グーグーだって猫である」は、大島弓子さん(の作品)が大好きな人が作った映画だと、私は感じました。大島作品への愛情があふれていました。大島弓子ワールドの再現という意味では、私の評価は100点満点です。

けれども、猫の扱いが、時代遅れすぎました。1996年から掲載されたマンガの方が外に出していないのに、どうして2008年制作の映画では出してしまっているのか、残念至極です。

(2015.5.15.)

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

映画『グーグーだって猫である』

  • 出演:小泉今日子、 上野樹里、 加瀬亮、 大島美幸(森三中)、 村上知子(森三中)
  • 監督/脚本:犬童一心(いぬどう いっしん)
  • 時間:116 分
  • 製作年度:2008年
  • 原作:大島弓子
  • 音楽:細野晴臣
  • 登場ニャン物=グーグー、無名の白猫、サバ(サバ役の人間)

 


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映画『グーグーだって猫である』

6.3

猫度

6.0/10

面白さ

6.5/10

猫好きさんへお勧め度

6.5/10

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