大山淳子『猫弁と幽霊屋敷』

大山淳子『猫弁と幽霊屋敷』

「猫弁シリーズ8」。

百瀬太郎、弁護士。依頼されるのはペット訴訟ばかり、で、あだ名は猫弁。癖の強い前髪、丸メガネ、安っぽいスーツ、靴だけは上等。名声欲・出世欲・金銭欲、すべて無し。見るからに冴えない男だが、その頭脳は超優秀で、かのアインシュタインをも凌ぐほどとの噂さえある。

あらすじ

今回の依頼人は、「幽霊屋敷」と呼ばれる家を知らないうちに相続していた女性。彼女は極端な男性恐怖症で、ほぼ引きこもりの毎日だ。百瀬太郎は彼女の代理に幽霊屋敷に泊まり込んで調査する。他にもしなければならないことは山ほど、せっかく婚約者の大福亜子と同棲生活を始めたというのに、今日も家にも帰れない忙しさ。

その百瀬の事務所では、猫たちがいなくなっていた。遁走したのではない、全ニャン、ある大規模な里親会「にんにゃんお見合いパーティー」に参加したのだ。百瀬の猫たちはどれも大人猫で、なかなか里親が見つからなくて困っていた。里親会でぜひ良縁を、と期待したのに。

ペットホテル立てこもり事件!?人質は人間ではなくて動物たち?

大山淳子『猫弁と幽霊屋敷』

感想

百瀬太郎は、今回も、どこまでも真っすぐで純粋、つねに正義の味方、かつ、底抜けのお人よし。

あの時、思った。「ゆるキャラ」という言葉があるが、百瀬太郎は「ゆるしキャラ」だと。なにごとも「許し受け入れる」と決めてかかっているようで、開くとと遭遇してピストルで撃たれても、「当然です」と死んでゆくに違いない。
(中略)
「百瀬太郎は尊いゴミ箱である」
これだと膝を打った。嫌なものは放り込んでおけばいいし、放り込んでも放り込んでも満杯にならない、魔法のゴミ箱。そう思わせるくらい彼は心底「ゆるしキャラ」なのだ。
page 91-92

「ゆるしキャラ」は良いとして、「尊いゴミ箱」ってどうなのよ、とは思うけど、つまり、そのくらい何でも許してしまう御仁だということ。そんな人、私の周囲にはいません。しかも天才。そんな人、日本中どこを探してもいそうにありません。なのに、妙に身近に感じられる人物。そこらへんに立って「こんにちは」とか言っていそうな男。魅力的です。

今回は、ハクという名前のハクビシンが出てきます。

ハクビシンは、ジャコウネコ科の動物。漢字表記「白鼻芯」の通り、黒い顔の真ん中に白い筋がまっすぐ降りているオシャレさんで、つぶらな目はかわいく、長い尻尾はしなやかで優雅、なかなか愛すべき動物です。

しかし、雑食で畑の作物を荒らしたり、木登りがうまく、民家の屋根裏に入り込んで住みついたりするので、害獣扱いされている動物でもあります。

ハクビシンは鳥獣保護法で狩猟鳥獣に定められており、法律上、許可なく捕獲はできない。飼うこともできない。東京都は外来生物法により、ハクビシンを「地域の生態系に被害を与える影響が大きい種」と特定して防除を勧めている。
防除の具体策としては、家へ侵入させないように穴をふさぐ、あるいは餌となるものを置かないようにする。侵入などの実害があった場合は、捕獲許可を持つ専門業者に依頼して捕獲し刹処分すると、明文化されている。
page 126-127

「鳥獣保護法」なんて名称で「許可なく捕獲はできない」なんて書いてあるとまるで保護しているように聞こえますが、それは真逆。実態は、どんどん殺せ、飼っては(=保護しては)いけない、たとえ弱ったり怪我をしていても見殺しにしろ、どーしても保護とかしたいなら行政と交渉してしち面倒な手続きを踏め、という法律です。法律上は獣医師であっても無許可で保護治療等してはいけないことになっています。

ですから百瀬がハクビシンに出あったとき、馬鹿正直な百瀬のこと、法律通りに行動しないか、ちょっとヒヤリとしたのですけれど。

大丈夫でした。ハクビシンのハクも幸せになりました。やはりこの作品は、誰でも、どんな生き物でも、全員が救われる小説でした。決して誰も見捨てられない。どこまでもハートフルなミステリーです。

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まとめ:大山淳子「猫弁」シリーズ

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

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著者について

大山淳子(おおやま じゅんこ)

2006年、『三日月夜話』で城戸照入選。2008年、『通夜女』で函館港イルミナシオン映画祭シナリオ大賞グランプリ。2011年、『猫弁~死体の身代金~』にて第3回TBS・講談社ドラマ原作対象を受賞、TBSでドラマ化もされた。著書の「あずかりやさん」シリーズ、『赤い靴』など。「猫弁」シリーズは多くの読者に愛され大ヒットを記録したものの、2014年に第一部完結。2020年に『猫弁と星の王子』で第二リーズをスタート。
(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)

『猫弁と幽霊屋敷』

「猫弁」シリーズ8

  • 著:大山淳子(おおやま じゅんこ)
  • 出版社:株式会社講談社 講談社文庫
  • 発行:2023年
  • NDC:(日本文学)小説 
  • ISBN:9784065324806
  • 323ページ
  • 登場ニャン物:テヌー、ゴッホ、、ボコ、ハンニャ、ゆるり、ひい、ふう、みい、ミケランジェロ、ビイ、クレオパトラ
  • 登場動物:シロ(犬)、ハク(ハクビシン)、にょろ丸(セイブシシバナヘビ)
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