堀本裕樹/ねこまき『ねこのほそみち』

副題:春夏秋冬にゃー。
猫が出てくる俳句を、堀本裕樹が解説。
それとは別に、ねこまき(ミューズワーク)がその俳句からインスピレーションを得てマンガを描く。
「それとは別に」
そこが面白いのです。
同じ句を、堀本裕樹とねこまきが、それぞれ勝手に解釈して、見開きにひとつにまとめています。ほぼ同じ解釈あり、全然別な解釈あり、比べて楽し、あら私のはどちらとも違うわと、さらに比べてさらに楽し。
全部で88句。どの句にも猫が出てきます。
いくつか紹介させていただきますね。

堀本裕樹/ねこまき『ねこのほそみち』
「たばこ吸ふ猫もゐてよきあたたかさ」嵩文彦(page14)
この句を読んだとき、まっさきに私が思い浮かべたのは、ぷかぷかたばこを吸っている猫。
いやいや、猫はたばこを吸わないし、猫にたばこは毒だ、そういう情景を詠んだのではなくてきっと、「たばこ吸う 猫もゐてよき あたたかさ」と区切るんだろうな、つまり、たばこを深く吸い込んで吐く、かわいい猫も膝にいる、きっと春が近いのだろう、お日様が縁側にぽかぽかあたって、ああ良いあたたかさだなあ、という平和な情景を詠んでいるんだろうな?と思い返し、・・・
堀本氏の解説を読んでみたら、氏は
この句の面白いところは、猫に対する作者の想像力である。おそらく作者もたばこが好きなのだろう。健康を害する恐れもあるが、心をリラックスさせる効果もあるたばこを猫に吸わせてみたらどうか。こんな暖かな春の日なら、人間のようにたばこを吸う猫がいたっておかしくない。むしろ「猫コにたばこ」はお似合いでないか。作者はユーモアたっぷりに、そんな想像をふくらませたのである。
page14
おやま、私の最初の解釈と同じじゃないですか。そっちが正しかったの?
でも、ねこまき氏ほ絵では、おじいちゃんが縁側でたばこを吸っている、猫がそのけむりにじゃれている。私が思い直した方の解釈と同じ。
うふふ。
どちらが正しいかは関係ないのですよね。どちらともとれるところがこの句の妙。
「花野人(はなのびと)バスケットより猫放つ」小松世史子(page88)
私が連想したのは、・・・
不妊手術が済んで、さくら耳に耳カットされた猫が、花咲き乱れる公園にリリースされる、あにゃたはこれでも正式なTNR猫よ、この公園に毎日ごはんを運んであげるからね、これからは子猫の気分にもどって安心して暮らせるのよ、よかったね、でもお願いだからおいたはしないでね、人んちの庭でウン●とかはダメよ・・・
対し、堀本裕樹氏の解釈は、普段、室内で飼われている猫が、電車やバスを乗り継いで、秋の草花の咲き満ちた野原で、思い切り遊んでおいでと放たれる、そんなのどかな風景。
対し、ねこまき氏のマンガは、・・・脱走常習犯の猫を花咲き乱れる野原でやっとこ捕まえた!
あはは。最後のこれが、いちばん笑えるし、猫飼いとしてはいちばんホッとしますネ。
「暑き日や先づ猫が邪魔夫(つま)が邪魔」上野さち子(page94)
これに思い切り同意する妻は多いんじゃないでしょうか。
昭和のおやじたちとちがって、平成さらに令和の夫たちは、昔よりは家事に参加?してくれているようですが、それにしても。
ほんっとに、邪魔!!なんです。転がったままの男ってモノは。いっそ、トドかマグロが転がっている方がまだ邪魔感が少ないかもです。男たちよ、もし熟年離婚されたくなかったら、妻が掃除機をかけはじめたら起き上がって窓ふきくらいしなさい。
ねこまき氏のマンガ・・・ほほえましいけど、これをしちゃうと、あとでもっと大変になるんだよ・・・
「哀しみのかたちに猫を抱く夜長」日下野由季(page166)
ズシっと来ました。私にはこの句には、もう何も言うことはありません。できません。ただ膝の猫を抱きしめるだけです。
堀本裕樹市の解釈も、ねこまき氏のマンガも、全員、同じきもちとおもわれます。

堀本裕樹/ねこまき『ねこのほそみち』

堀本裕樹/ねこまき『ねこのほそみち』
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『ねこのほそみち』
春夏秋冬にゃー
- 著:堀本裕樹(ほりもと ゆうき)
- 絵・著:ねこまき(ミューズワーク)
- 出版社:株式会社 さくら舎
- 発行:2016年
- NDC:911.3(日本文学)詩歌:俳諧、俳句
- ISBN:9784865810493
- 186ページ
- モノクロ
- 登場ニャン物:無名の猫が多数
- 登場動物:-