竹内薫『99.9%は仮説』

副題:『思いこみで判断しないための考え方』。
竹内氏の本はわかりやすくて面白いのである。だからこの本も喜んで買って読んだのである。
とはいえ、当初は物理学の本を猫本リストに加えるつもりは全然無かった。読む本全部に書評を書いていたら、こちらもたまらないしね。
ところが、この本の著者プロフィールを見てみたら、「猫好き科学作家」となっているではないか。
あらら。
そういう目で改めて読めば、これは猫飼い主にも是非読んで欲しい本だった!
もちろん、猫のねの字も出てこない。竹内氏の専門は物理学なのだ。
が、コチコチ頭の物理学教授とちがい、サイエンスライター・竹内氏の文章は平易でわかりやすく、ストーリー展開もうまい。物理学の本とは思えないほど読みやすい。私のような文学頭でもさらっと読めてすとんと頭に入る。この本なら猫サイトで紹介しても無理はない。
そして、その内容。
竹内氏は、この世に100%分かっているもの、絶対的に確定しているものなんか無いと説く。
「常識はただの思いこみ」であり「仮説にすぎないのです。」そして「こびりついた仮説をはがすのはたいへんだけど」「とにかく常識を疑え!」「常に常識を疑う癖をつけて、頭のなかにある仮説の群れを意識するようになれば、それは『頭が柔らかい』ということなのです。」
もっともわかりやすいのは、多分地動説の例だろう。
昔の人々にとって、地球が宇宙の中心に静止しているというのはあまりに自明の理だったため、誰も疑おうとしなかった。疑うという発想自体思いつかなかった。だからどれほど矛盾点が観測されても、昔の人たちは無理矢理天動説にこじつけた。
それをひっくり返したのが地動説。「地球は宇宙の中心で静止している」という仮説を疑うことで、すべての観測的矛盾点がすんなりと解決した。
科学を進歩させたのは、そういう、頭の柔らかい天才たちだった。
頭が柔らかいこと。
なにも科学の世界だけでない、これは猫飼い主にとっても重要なことだと思う。
猫とうまく暮らせない人の多くが、頭が固い人なのである。違う世界、違う考え方、竹内氏の言葉を借りれば、違う仮説が存在することに気がついていない人なのである。
猫には猫の仮説があることに気づくことが出来る人。
人間社会だけの仮説をさらりと捨てることが出来る人。
そういう人なら、猫と楽しく愉快に暮らせるだろう。
どうぞこの本を読んで、コチコチ頭をぐにゃぐにゃ柔らか頭に変えてください。
そして、膝のぐにゃぐにゃ猫を一層愛してあげてください。
(2007.5.29)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『99.9%は仮説』
思いこみで判断しないための考え方
- 著:竹内薫(たけうち かおる)
- 出版社:光文社新書
- 発行:2006年
- NDC:404(科学評論)
- ISBN:9784334033415
- 254ページ
- 登場ニャン物:-
- 登場動物:-