小松左京『猫の首』

小松左京『猫の首』

 

SF短編集『猫の首』収録

8作品が納められています。
残念ながら、猫が登場するのは、表題の『猫の首』だけ。
でも、さすが小松左京氏といいますか、ごく短いストーリーの中に、規模の大きさが感じられる作品が多く、ひき込まれます。

猫の首

近未来ワールド。

一見、今の世界と変わらないように見えるのに、なぜか人々は妙に恐れていた。
何物かを。

平凡な住宅街。
ある朝、彼は、恐ろしいものを発見した。
それは、いたいけな子猫の、無残な姿。
猫を飼っていることが、奴らにバレた!

彼は恐怖に震えながらも、ある偉大なる決心をする・・・

猫好きにはつらい描写が出て来ます。
残酷な場面に、思わず本を置きたくなってしまうかもしれません。
でもどうか、最後まで読んでください。
ごく短い小説ですから、すぐに読めるはずです。
そして、彼の行為を再考してください。

自分は、猫の為に、ここまでできるだろうか、と。

↓↓ ついでなので、収録されている他の作品もご紹介。 ↓↓

日本脱出

人気の無い海辺で笑い戯れる若者たち。
とんでもない物を発見してしまい、その結果?
そういえば、『日本沈没』という名作もありましたね。

拾われた男

雨の降りしきる中、車の前に飛び出してきたのは全裸の美女。
男は助けを求められて、車に乗せる。
女の家は豪邸だった。大金持ちだったのだ。
そして、夢のような生活が始まる。

女のような悪魔

うっかり悪魔をホテルに誘ってしまったばかりに、悪魔と結婚するハメになってしまった男。
といっても、おそろしく人間的な、ごくふつうの女のような悪魔だ。
そりゃ、多少は悪魔的なところはある。角や尻尾が生えていたり、火を自由に扱ったり。
でも、性格は、まるで人間の女だ。それもきわめて嫉妬深い。

異次元結婚

結婚式の披露宴の酒なんか、あまりガブのみするものではない。—当の花婿自身は、なおさらのことだ。

なのに、飲んじゃった。正確には、そうと気づかず飲まされちゃった。
その結果、男の大事なモノが・・・結婚初夜だっていうのに!

SFというより、コメディ的な作品。
笑ってください。

Mは2度泣く

その、立派な体格の男は、探偵を名乗っていた。
が、驚くべき過去を隠し持っていたらしい。
その過去があばかれるときがきて・・・

出来てしまった機械

近未来の恵まれた(恵まれ過ぎた)学生たちが、気まぐれに作り上げた機械とは!?

この作品、昭和41(1966)年発表なんですね。
驚くほど未来を先取りしている中で、ひとつだけ、さすがの小松左京さんもこれだけは予想できなかったんだと興味深かった部分。
それが、「電話」です。
コンピューターでの検索で即時に欲しい情報が手に入るとか、人工知能が人間の教育まで担うとか、まるで平成のIT産業を見てきたかのような描写ですが、そんな中、電話をかけまくって口頭で問い合わせをしているという点が、それだけが、時代錯誤的でした。
他があまりに見事に予言しているだけに、かえって目立ってしまっていました。
そして、電話という違和感があるがために、ますます「これは半世紀前に書かれたSFなのだ」と再認識させられ、この作品の面白さが増加しています。
少なくとも私にとってはそうでした。

大坂の穴

歴史好き・戦国武将好きな人にお勧めの短編。
大阪市の地下に、秘密の抜け穴がある?

符:著者年譜

くわしい著者年譜が巻末にあります。

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『猫の首』
SF短編集

  • 著:小松左京(こまつ さきょう)
  • 出版社:集英社文庫
  • 発行:1980年
  • NDC:913.6(日本文学)小説
  • ISBN:9784087503098
  • 232ページ
  • 登場ニャン物:無名
  • 登場動物:-

 


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