グールド『ワンダフル・ライフ』

ワンダフルライフ

 

 

奇想天外な生き物たちの発見物語

たとえば、目が5つもある生き物。

昆虫の複眼ではない。ヤツメウナギの”目のように見える”鰓孔でもない。我々人間が、ふつうに「目」といわれて、ふつうに想像するような「目」である。
それが5つもある。

そんな生物が、実在した。

たとえば、「ゲゲゲの鬼太郎」に出てくる妖怪のような生き物。

「ぬりかべ」のように平らで、「一反木綿」のようにひらひらと動く。しかも、3歳児がクレヨンで殴り書きしたような口がちょこんと開いている。

そんな生物が、実在した。

5つ目の生物はオパビニア、平らな生き物はオドントグリフスである。

書名の「ワンダフル・ライフ」は、二重の驚嘆(ワンダー)の念を込めたものだという。

すなわち、生物そのものの美しさに対する驚嘆と、それらが駆り立てた新しい生命観に対する驚嘆である。
p.13

バージェス頁岩の動物群発見は、生物進化の歴史上、ダーウィンの進化論の発表と同じくらい、あるいはもっと、画期的で驚異的な出来事だった。

ワンダフル・ライフ

このような直線的な進化論がひっくり返される

それまでの進化論の常識がひっくり返されるような大発見だった。あまりに意外過ぎて、バージェス頁岩の化石群が発見されたのち、その重要性が理解されるまで半世紀以上もかかってしまったという。しかも、第一発見者は素人どころか、当時の古生物学会の権威であったにもかかわらず。

そう、1909年にこの化石群を発見したのは、「最高の古生物学者にしてアメリカの科学会に置いて最高の権力を握った行政官でもあった人物チャールズ・ドゥーリトル・ウォルコット」(p.12)その人だった。しかし、彼でさえ、この化石生物たちがどれほど奇異であるか、見抜けなかった。人間とは、あまりに想定外のことに出会うと、なかなか理解できないものである。

この動物群の真の姿が見えてきたのは、1960年代以降になってからだった。ハリー・ウィティントンと、彼の優秀な大学院生たちの、20年にも及ぶ研究の結果、ようやく新しい解釈が生まれたのである――それまでのあらゆる常識を覆すような。

この本は、バージェス動物群発見物語と、ひとつひとつの種について、どの点でどう不思議であるかを詳細に説明した本である。

カンブリア紀の生物たちについては、日進月歩で新しい発見や説が出されており、1989年出版(原書)のこの本に書かれている内容は、すでに相当古い。単行本の表紙に描かれたハルキゲニアだって、現在の復元図とはまるで違う(そもそも上下逆である)。

それでも。

古生物ファンなら、この本、きっと猛烈に面白い!

ワンダフル・ライフ

ワンダフル・ライフ

とくに古生物を専攻したいと思っている学生さんなど、面白いだけでなく、参考にすべき考え方など、役立つ情報も多いだろう。
古生物に興味のない人にとっては、長すぎ、つまらない本だろうけど。

というわけで、生き物全般(とくに古生物)に興味のある人だけにおすすめ。

ワンダフル・ライフ

猫達も大興奮?(笑)

(2017年9月7日)

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『ワンダフル・ライフ』
バージェス頁岩と生物進化の物語

  • 著:スティーブン・ジェイ・グールド(Stephen Jay Gould)
  • 訳:渡辺政隆(わたなべ まさたか>
  • 出版社 :早川書房
  • 発行年 :1993年
  • NDC : 457.8 (古生物学. 化石)
  • ISBN : 4152035560 (文庫版 9784150502362)
  • 原書 : Wonderful Life: The Burges Shale and the Nature of History c1989
  • 登場ニャン物 : -
  • 登場動物 :マルレラ、ヨホイア、オパビニア、ハルキゲニア、ナラオイア、アユシェアイア、ウィワクシア、アノマロカリス、サンクタカリス、オドントグリフス、その他多数のバージェス動物群

目次(抜粋)

  • 序言および謝辞
  • 1章 期待の図像を解読する
    • 図版が語るプロローグ
    • 梯子図と逆円錐図―進歩を象徴する図像
    • その他
  • 2章 バージェス頁岩の背景説明
    • バージェス以前の姓名―カンブリア紀の爆発的進化と動物の起源
    • バージェス以後の生物―過去をのぞき見る窓としての軟体動物群
    • その他
  • 3章 バージェス頁岩の復元―新しい生命観の構築
    • 静かなる革命
    • 研究の方法論
    • その他
  • 〈バージェス劇〉
    • 第一幕 マルレラとヨホイア―疑念の芽生えと生長 一九七一~一九七四年
    • 第二幕 新しい観点の確立―オパビニアへの敬意 一九七五年
    • その他
  • 4章 ウォルコットの観点と歴史の本質
    • ウォルコットが多様性の逆円錐形的増大にこだわったわけ
    • 電気的ノート
    • その他
  • 5章 実現しえた世界―”ほんとうの歴史”の威力
    • もう一つの物語
    • 偶発栄を例証する一般的なパターン
    • その他
  • ピカイアをめぐるエピローグ
  • 訳者あとがき
  • 図版クレジット
  • 文献目録

著者について

スティーブン・ジェイ・グールド (Stephen Jay Gould)

1941年、ニューヨークに生まれる。1967年コロンビア大学で博士号を取得し、26歳の若さでハーヴァード大学助教授に就任、1973年には教授に昇格した。”断続平衡説”を提唱し現代進化生物学の第一人者として活躍するかたわら、『ダーウィン以来』(杉本・寺田訳、早川書房)をはじめとする一連の科学エッセーの著者としても知られる。専攻は古生物学、進化生物学、科学史。

著者プロフィールは本著からの抜粋です。


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グールド『ワンダフル・ライフ』

6.2

猫度

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動物度

10.0/10

面白さ

7.0/10

情報度

8.0/10

おすすめ度

6.0/10

プラスポイント

  • 古生物学に興味がある人はぜひ
  • 説明が丁寧でわかりやすい
  • とにかく不思議な生物群にびっくり!

マイナスポイント

  • 長くて、ちょっとくどい
  • 2017年の今、情報が古い

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