竹内薫『もしもあなたが猫だったら?』

竹内薫『もしもあなたが猫だったら?』

 

副題:『「思考実験」が判断力をみがく』。

竹内薫氏はいい!
どこがいいかと言えば、本当に猫好きなところがいい!

世の中には猫好きを装った自称文化人や有名人はわんさといる。が、彼らのオフィシャルサイトをご覧あれ。中には猫サイトを作ったり猫本や猫写真集を出版している人もいるが、ほとんどのサイトが金儲け関係のリンク(芸能関係とか、出版関係とか)しか貼っていない。ひっじょーに寂しい。

しかし竹内氏のサイトは違う。

トップページにあるリンク集の、一番目立つ一番上に、「日本にアニマルポリスを誕生させよう!」のバナーがドンと貼ってある。実に愉快だ。(注:2008/7/16現在)

もちろん、本も面白い。

まず第一にわかりやすい。
難しいはずの物理学を、話し言葉でさらっと説明してくれる。

それだけではない。
ときどき、まったく思いがけないところで、猫が出てきたりする。

たとえば、粒子と量子の違いについて。

たとえば猫砂は粒子だけど量子じゃありません。あるいは米粒も粒子だけど量子じゃありません。(中略)何がちがうかというと、まず、猫砂や米粒は、遠くから見ていると似ていて粒同士の区別がつかないように見えますが、よくよく見てみればわずかな色や形の差があるから、原理的には区別がつきます。要するに個々の粒子には「個性」があるわけです。ところが、量子には個性がありません。・・・
page101

粒子と量子の説明で、猫砂を例に取る科学者なんて他にいるかぁ?\(^o^)/

ところで、猫好きな皆様が気になるのは「もしもあなたが猫だったら?」どうなるの?ということだろう。

本の最初の章で、竹内氏はある思想実験を行っている。
たとえば、もし青と赤が、ある日突然、いれかわったら?

そんな馬鹿な、なんて言わないように。そもそも、私の見えている「この赤」と、アナタが見ている「同じ赤」、どちらも同じように感じられているとは限らないのだ。だってどちらも個々の脳が見せている「色」にすぎないのだから。

ヒトは3原色で色を見てカラフルだと威張っているが、これは大変思い上がった、おろかしいことなのである。
なぜならば、鳥はなんと4原色で色を見ているからだ。

しかもその4原色の分け方が、ヒトよりはるかに完成度が高い。きっちり全ての色が見えるように調整されているのである。ヒトには見えない色も当然しっかり見えている。鳥に言わせれば、ヒトの見ている世界なんて50年前の白黒テレビと大差ないんじゃないだろうか。

猫は、2原色で色を見ている。
しかしだからといって、ヒトより「世界が狭い」なんて、全くあり得ない。

まず、猫は人より動体視力がずっと良い。動いているものがしっかり見えている。また暗いところで見る能力はヒトの数倍だ。嗅覚も、犬ほどではないけれどヒトよりはるかに良い。さらに聴覚も、ヒトの8倍は聞こえている。
同じ部屋にくつろいでいても、ヒトと猫とでは感じる世界がまるっきり違うのだ。

いくら想像力空想力をたくましくしても、鳥や猫の世界を人間は知覚する事は出来ない。が、全く違う世界があるのだと認識することは非常に重要だという。

他人の立場になって考えることが出来れば、無駄な諍いもなくなるでしょうし、視野が広くなるので、物事を大局的に眺める癖がつき、社会生活や人間関係が楽になります。また、さまざまな可能性も広がりますから、人生がうまく廻るようになります。
page3

まったくその通り。
たとえば、猫を嫌いという人はたいてい「呼んでも来ない」などと言う。
呼べば来るというのは、100%、人サイドの人的な発想にすぎず、地球上のほとんどの生物は「呼ばれたら行く」という発想そのものがないのだ。だから、来ないのがふつう。
にもかかわらず、呼んで来てくれた時の愛猫の愛おしさよ!

あなたもぜひこの本を読んで、様々な立場から物事を見る方法を学んでくださいにゃ~。

(2008.7.16)

PS.「2原色で超優秀な動体視力で暗闇で見えて臭いがわかって音が凄い世界」というものがなかなか想像できない方は、保坂和志 『明け方の猫』 をお勧めします。猫になった男の体験がリアルに書かれた小説です。

竹内薫『もしもあなたが猫だったら?』

竹内薫『もしもあなたが猫だったら?』

竹内薫『もしもあなたが猫だったら?』

竹内薫『もしもあなたが猫だったら?』

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『もしもあなたが猫だったら?』
「思考実験」が判断力をみがく

  • 著:竹内薫(たけうち かおる)
  • 出版社:中央公論新社 中公文庫
  • 発行:2007年
  • NDC:401(科学理論、科学哲学)
  • ISBN:9784121019240
  • 211ページ
  • 登場ニャン物:-
  • 登場動物:-

 

目次(抜粋)

第1日 もしもあなたが猫だったら?
第2日 もしも重力がちょっぴりだけ強かったら
第3日 もしもプラトンが正しかったら
第4日 もしもテレポーテーションされてしまったら
第5日 もしも仮面をつけることができたら
第6日 もしも小悪魔がいたならば
第7日 もしもアインシュタインが正しかったならば

 

著者について

竹内薫(たけうち かおる)

年東京生まれ。猫好き科学作家。東京大学、マギル大学大学院卒業(専攻:科学哲学・物理学)。理学博士。
著素『99.9%猫が好き!』(小学館文庫、2007)、『猫はカガクに恋をする?』(藤井かおりとの共著、インデックス・コミュニケーションズ)、『コマ大数学か特別集中講座』(ビートたけしとの共著、フジテレビ出版、2006)、『99.9%は仮設』(光文社新書、2006)、『世界が変わる現代物理学』(ちくま新書、2004)ほか多数。

*竹内薫オフィシャルサイト
https://kaoru.to/

(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)


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竹内薫『もしもあなたが猫だったら?』

5.7

猫度

2.5/10

面白さ

8.5/10

猫好きさんへお勧め度

6.0/10

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