山下洋輔『猫返し神社』

山下洋輔『猫返し神社』

日本を代表するジャズピアニストは、「猫返し神社」の生みの親。

ジャズ愛好家でなくとも、山下洋輔の名を知っている人は多いのではないでしょうか。日本が誇る大ジャズピアニストで、作曲家。エッセイストとしても知られています。

その山下洋輔さん、実は大の猫好きでもありました。世に音楽家で猫好きは多いし、作家で猫好きはもっと多いくらい?音楽家で作家となれば、猫好きなのは当然かもしれませんが!(笑)

この本は、2009年11月24日から約4年間にわたって飛鳥新社のHPに掲載したブログ「山下洋輔の猫ラシドレミファ♪」に加筆し書籍化したものです。 猫は動く宝石だという言葉をよくききますが、まさに猫は私のようなジャズ・ミュージシャンが日々、創り上げようとしている「即興芸術」の極みに近い動物です。

はじめに

本の発行時までに山下さんが生活を共にした猫は、累計6ニャン。ブログ掲載中は、アーちゃん、ピロちゃん、リーちゃんの3ニャンがいました。

その事件が発生したのは、先代猫たちと東京は立川市で暮らしていた時です。米軍基地があった頃に軍関係者のためにつくられた「ハウス」と呼ばれていた戸建てで、同じような家が数軒並んでいたそうですが、芝生の庭があり白ペンキの柵があり、当時の猫たちは出入り自由の放し飼いでした。それでも皆、ちゃんと家に帰ってきていたのですが。

ある日。白猫のミオちゃんが、帰りませんでした。あてもなく歩き回る山下さん。チラシを作って電柱にはり、友人にも探してもらいましたが、どこにもいません。ミオちゃんは前脚が少し不自由なのです。いなくなって17日間も過ぎてしまいました。とうとう神頼み、はじめて見る神社の境内にはいって深く拝みました。

そうしたら、翌日、ミオちゃんが帰ってきました。山下さんはお礼参りをしただけでなく、たまたまある雑誌の企画で「将来に残したい日本の名風景」というのをやっていたので、そこに「猫返し神社」としてその「立川水天宮 阿豆佐味天神社(あずさみてんじんじゃ)」を紹介したのです。

山下さんの知名度もあって、反響絶大。猫好きの人、猫がいなくなった人が、つぎつぎとその神社を訪れるようになり、何も知らなかった宮司さんが驚いて原因をつきとめ、ついに山下さんに直接会いに来たそうです。「おイカリではなくお喜びのようなので、ほっとしました。(
page71)」のみならず、とうとうこの神社の縁起の由来文に「猫返し神社とも呼ばれる」と正式に書かれてしまいました。

・・・と、ここまで読めば、私のこと、すぐに検索。ありました!「立川水天宮 阿豆佐味天神社」 https://azusami-suitengu.net/ 。立派な神社ですね。で、ちゃんと「猫返し神社」のページまで作ってあって。にゃは。すごい猫絵馬の数!

猫返し神社(命名者:ジャズピアニストの山下洋輔さん) 愛猫の無事や健康を祈りに多くの方がいらっしゃいます。境内社の蚕影神社(こかげじんじゃ)がその社で、蚕の天敵がねずみ、猫を守り神にしています。「絵馬」に願いを書いたら、無事に帰ってきたという報告も寄せられています。 また、境内には「ただいま猫」の石像があります。やさしく撫でて下さい。

公式HPより

神社の話のほかに面白かったのが、『COLUMN1「猫」か「ネコ」か「ねこ」か?』論争です。

ブログを掲載することになった山下さん。表記を「猫」か「ネコ」か「ねこ」のどれにするかで悩みます。そこに寄せられた膨大なコメントの数々。「猫」がいい、いや「ネコ」だと、延々40ページにわたって議論。同じ動物の、同じ音でも、人により年代により、さらに漢字かカタカナかひらがなかで、微妙に感じ方がかわってくる、なかなか興味深いですね。

重い話はありません。電車の中でも気楽に読める一冊です。写真も豊富ですが、私がもっているのは文庫本なので全部白黒の小さな画像なのが残念です。

*山下さんのブログは書籍化に伴い、2013年11月にクローズされました。

山下洋輔『猫返し神社』
山下洋輔『猫返し神社』

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

『猫返し神社』

  • 著:山下洋輔(やました ようすけ)
  • 出版社:株式会社徳間書店 徳間文庫
  • 発行:2017年
  • 初出:飛鳥新社2013年12月刊行
  • NDC:914.6(日本文学)随筆、エッセイ
  • ISBN:9784198943424
  • 269ページ
  • モノクロ
  • 登場ニャン物:アーちゃん、ピロちゃん、リーちゃん、ミオちゃん、他多数
  • 登場動物:-

目次(抜粋)

はじめに

ごあいさつ

子供2人対長老古参猫その1 アーちゃん

子供2人対長老古参猫その2 ピロちゃん

子供2人対長老古参猫その3 リーちゃん

ピロとリーの華麗なる闘い

ポリポリ、ブシ、ネコカン問題

猫が美女に見える瞬間

初代3匹、葉山での日々

山下家のご先祖猫

発生!「猫返し神社」事件 その1

発生!「猫返し神社」事件 その2

リーちゃん脱走てんまつ記

全国猫神社談義

[COLUMN1]「猫」か「ネコ」か「ねこ」か?

[COLUMN2]猫会談@関根家

猫返し神社に初詣

(以下略)

著者について

山下洋輔(やました ようすけ)

1969年、山下洋輔トリオを結成。フリー・フォーム演奏でジャズ界に大きな衝撃を与える。以降、日本ジャズ界の第一人者であり、名得制すととしても多くのファンを持つ。1998年、映画『カンゾー先生』の音楽を手書き、「芸術選奨文部大臣賞(大衆芸能部門)」を受賞。主な著書に『ピアノ弾き翔んだ』『ドラバタ門』『ピアニストを笑うな!』『蕎麦処 山下庵』『即興ラプソディ 私の履歴書』『山下洋輔の文字化け日記』『もけら もけら』『ぼくのいちにち おんなおと?』など多数。 (著者プロフィールは本著からの抜粋です。)

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