西加奈子『しずく』

西加奈子『しずく』

短篇集の中のひとつ、タイトルにもなっている『しずく』の猫たちが愛らしい。

フクさんとサチさんは、二匹の雌猫です。フクさんは六歳と少し。サチさんは七歳になる少し前。二匹の飼い主たち、シゲルとエミコがどこかで出会って勝手に恋をして結婚したので、二匹も一緒に暮らすことになったのです。

どちらもずっと単独飼育でしたから、自分以外の猫の姿を見たのは、お互い初めてでした。だから最初はおおいに戸惑いました。

でも気が付いたときには仲良しになっていました。

「のおおおおおおおおおおおお、のおおおおおおおおおお」
これはサチさんの鳴き声です。

「だふううううううううう、だふううううううう」
これはフクさんの鳴き声です。

二匹は、お互いをけなしたり、舐め合ったり、言い争ったり、一緒に寝たりしながら、猫らしく、のんびりノホホンと暮らしていました。

が、二匹には解らなかったけど、シゲルとエミコの生活は少しずつ変わってきていたのでした。

 

*   *   *   *   *

わずか30ページ程の短編ですから、これ以上は書けません。これ以上を書いたらネタバレになってしまいます。

猫たちの描写が愛らしい作品です。うちの子たちを見ていても、猫同士ってほんとうにこんな会話をしているのかもしれないと思ってしまいます。最初から最後までずっと猫の視点で、猫たちの会話で、猫たちの描写で、猫好きにはたまらない小作品。

残念ながら、他の短編に猫は出てきませんが。

猫好きな方はぜひお読みください。ニヤニヤし続けた後にちょっとりしんみりします。お勧めです。

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

『しずく』

  • 著:西加奈子(にし かなこ)
  • 出版社:株式会社光文社 光文社文庫
  • 発行:2007年
  • 初出:『ランドセル』小説宝石2006年4月号、『灰皿』同6月号、『木蓮』同8月号、『影』同10月号、『シャワーキャップ』同12月号、『しずく』単行本刊行時書き下ろし
  • NDC:913.6(日本文学)短編小説
  • ISBN:9784334747220
  • 222ページ
  • 登場ニャン物:フク、サチ(以上『しずく』)
  • 登場動物:ー

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目次(抜粋)

ランドセル
灰皿
木蓮

しずく
シャワーキャップ

文庫版あとがき
解説 ・・・ せきしろ

著者について

西加奈子(にし かなこ)

ほかの著作に『さくら』、『きいろいゾウ』、『こうふく みどりの』、『こうふく あかの』、『うつくしい人』、『きりこについて』など。2008年『通天閣』で織田作之助賞を受賞。

(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)

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