出久根達郎『猫の縁談』『猫阿弥陀』
『猫の縁談』
出久根氏は古本屋さんです。
最近流行の、アルバイトの高校生が何でもかんでも定価の半額で売っているような、そんないいかげんな古本屋さんではありません。
一冊一冊を吟味して価値を見極めてから売買する正統派の職人的古本屋さんです。
ある日、変なおじいさんが3冊の希本を持ち込みました。
なんとおじいさんの飼っている3匹の雑種猫(それも成猫)とそれぞれセットで売りたいというのです。
3人の古本収集家が、希本欲しさに、嫌々猫を引き取りましたが、やがて希本にケチがつき・・・。
しかし、さすが‘本物の価値を見抜く目を持った’収集家達。
仕方なく引き取ったはずの猫の価値を見抜くまでに、時間はかかりませんでした。
といっても、その猫たちは決して、実は高価な血統書猫とかではないのです。
ごく普通の猫たちなのです。
ごく普通の猫が古本収集家の心をつかんでしまったのです。
希本売買の話のはずが、いつの間にか全員が本そっちのけで雑種猫の取り合いになってしまうところが、猫好きにはなんとも嬉しい話です。
『猫阿弥陀』
変な話です。
かなり錯綜していて、読んでいて混乱します。
ニャオおばさんと呼ばれる変なおばさんと、そのおばさんのかいた「小説」、おそらくはおばさんの自伝なのでしょうけれど、それらが常に猫や古本と絡み合いながら、独自の世界を作っています。
出久根さんは正統派古本屋さん。
どこまでが本当の話で、どこまでが出久根さんの創作なのか分かりませんが、なにしろ古本屋の常連にはユニークな人が多いようです。
古本や古本業に興味のある人なら、屋台裏を覗けて面白いかも。
(2002.4.10)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『猫の縁談』
- 著:出久根達郎 (でくね たつろう)
- 出版社:中央公論社
- 発行:1989年
- NDC:913.6(日本文学)小説
- ISBN:412001780x 9784120017803
- 247ページ
- 登場ニャン物:『猫の縁談』サダコ、アサコ、キミコ、『猫阿弥陀』ヌキ、無名の猫たち
- 登場動物:-
目次(抜粋)
- 猫の縁談
- 腹中石
- そつじながら
- とつおいつ
- 猫阿弥陀
- あとがき