松尾由美『ニャン氏の憂鬱』
ニャン氏の事件簿シリーズ3冊目。猫缶を開ける音の「音楽的な響き」??
あらすじ
茶谷歩(ちゃたにあゆむ)は入社三年目の24歳、勤め先は製缶会社。缶詰の中身ではなく、外側、カンカンを作る方である。アマチュアロックバンド「スクーターズ」のギタリストでもある。
そんな、まだ下っ端の茶谷が、大株主(の秘書)との会合(?)に使命されちゃて。抜擢の理由は、「茶谷くんはロックバンドをやっていたわよね?」大株主は、音楽をやっている社員と話がしたいそうで。いや、音楽と言ってもアマチュアバンドなんですけど?ほかにもピアノとかやっている社員なんていくらでもいそうなんですけど?
しかし命令とあれば仕方ない、その大株主(の秘書)が待つVIP応接室に行ってみると、まっていたのは。
いかにも秘書然とした、くろっぽいスーツ姿の男と、足元で威張っている一匹の猫。大株主の猫なんだろうなあ。飼い猫の世話までしなければならないなんて、秘書も大変だなあ。
ところが、「猫缶を開けるときの音楽的な響き」について話しているうちに、なぜか茶谷は大株主に気に入られたらしい?いや、”本人”はいないんですけど。秘書と飼い猫にしか合っていないんですけれど。
しかも、なんやかんや話しているうちに、なぜか昔の体験話になって、それは茶谷の奇妙な体験で、不思議な話が大好きだという大株主が謎解きをしてくれて・・・
ニャン氏の推理が冴える作品が全部で6つ。
感想
なんかますます楽しいですね、このシリーズ!
ミステリー小説でありながら、暴力シーンとかが全然無いのがよいです。読んでいると、こちらまで明るい気持ちになれるのがとても気持ちよい。ニャン氏と丸山は神出鬼没で、ほとんど茶谷をストーカーしているのかってくらいに頻繁に現れます(笑)。裏を返せばそれだけ茶谷のまわりに不思議が起こったということです。そして猫と人の主従は、不思議なところにはかならず吸い寄せられてしまうのです。そしてさっと解いてさっさと立ち去ってしまうのです。
今回は、ニャン氏の生い立ちについても、少しですが語られます。苦労した猫だったのでした。良い飼い主にめぐり会えて、その飼い主亡き後も、よい秘書に恵まれて、ニャンちゃんよかったねえ!
また、ニャン氏の苦手なものも判明します。そうだよね、猫ってたいてい、そういうモノが嫌いだよね~どれほど賢くても、ニャン氏は猫。ああ、こんな猫に雇われてみたい!(笑)こんな猫になら、私、無給でも喜んでお仕えしますとも。あれ?私、うちの猫たちにすでに、無給どころか完全持出でお仕えしていたんだった・・・
猫がお好きなあにゃた、ぜひお読みくださいにゃ~。おもろいヨ。
※ニャン氏シリーズ
- 『ニャン氏の事件簿』
- 『ニャン氏の童心』
- 『ニャン氏の憂鬱』
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
目次(抜粋)
- 密室のカナリア
- 見張り台からずっと
- 黄昏のブロック塀
- 猫を見たかい
- ホスピタル・オディティ
- アンダー・ヒズ・サム
著者について
松尾由美(まつお ゆみ)
1989年『維持g変カフェテラス』を刊行しデビュー。91年「バルーン・タウンの殺人」がハヤカワSFコンテストに入選。主な著作に〈バルーン・タウン〉シリーズ、〈安楽椅子探偵アーチー〉シリーズ、〈ハートブレイク・レストラン〉シリーズ、『雨恋』『九月の恋と出会うまで』『煙とサクランボ』『花束に謎のリボン』『わたしのリミット』『ニャン氏の事件簿』『ニャン氏の童心』などがある。
(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)
『ニャン氏の憂鬱』
「ニャン氏の・・・」シリーズ3冊目
- 著:松尾由美(まつお ゆみ)
- 出版社:株式会社東京創元社 創元推理文庫
- 発行:2020年
- 初出:「ミステリーズ!」Vol.95(2019年6月)~Vol.100(2020年4月)
- NDC:913.6(日本文学)小説
- ISBN:9784488439101
- ページ
- カラー、モノクロ、口絵、挿絵、イラスト(カット)
- 原書:
- 登場ニャン物:アロイシャス・ニャン(ペンネーム:ミーミ・ニャン吉)
- 登場動物:ジャン・ガルジャン(ジャンガリアンハムスター)