松浦静山『甲子夜話 正編』1~6(2)

松浦静山『甲子夜話』

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『甲子夜話』で「虎」が出てくる部分の原文

すべて、平凡社東洋文庫(電子書籍)より、[1]等は東洋文庫の巻数を表します。太字はすべてnekohonによるもの。

なお、「虎」の字が出てくるだけの場合は、その部分だけの抜き書きとし、前後を省略させていただきますことをお断りします。

巻二十一〔八〕

虎と熊が馬を狩るときの話。

予が中に、対州より召かゝへたる士あり。此(この)もの郷国にて度々朝鮮の和館に往たり。渠(かれ)虎の馬をとることを語るを、人信ぜざりしが、近頃、予が隠荘に対侯の馬役来りて、同じ話をなす。是より人々前言を信ぜり。虎の馬をとらんとするには、始めは馬とともに走ること数回して、夫より馬の背に乗跨る。馬懼(おそれ)て、走ることいよゝ急なり。若し馬走ること遅ければ、虎尾を以て打てこれを走らせ、遂に息きれて踣(たふ)るゝに至て馬を食ふと云。猛獣にても、始よりは取食はざるものと見へたり。然るに蝦夷地にて熊の馬を取るは、始よりとび掛りて、ひしゝと馬の脚を折て、肩に負て去ると云。さあれば、熊の勇猛は虎に過たりと謂べし。

[2] page 29-30

巻二十四〔六〕

虎狩り等の長い記述。虎の図も。

象、虎は吾邦その皮牙を見、或は画図にする者多しと雖ども、未その真物の活動するを視る者なし。然ども象は徳廟の御時、東都に来り、又近頃長崎に渡来すれば、人皆目撃して図る所なり。虎に於ては画家も模写のみにて、未真を視て図せる者なし。又漢画と雖ども、宋以来の画、我に伝るもの、亦其貌一ならず。予その真を知らんと欲ること久し。曩(さき)に対州の士江口氏有ㇾ故て来て吾に仕ふ。名を為督と云。火術を能す。朝鮮の将崔信明と云に学ぶ。頗るその道を得たり。彼れ嘗て久くかの邦の倭館に在番す。予因て虎を見しやと問ふ。為督その目撃の状を伸ぶ。予乃これを書記して収置たりしに、戌寅の禍に烏有となる。この時為督既に平戸に帰る。因て去年書を与て旧年の話を質す。為督乃復筆録して報呈す。今則左に録す。又為督が記憶する所のもの三事を附て書呈す。今亦同載す。

〇為督、先年挑戦在留のとき、慶尚道の中、草梁和館にて、六月炎天の夕方、木陰の生る頃納涼に出んとて、一両輩、隅の矢倉の側ら土居に上り、田の向ふの山を見るに、その半腹小松原の際に虎居たり。其さま後の両足を折、前の両足をたて居たり。このとき俄に白雨せしかば、忽ち起立道に飛出〔道土居より間五十間余〕、西を指して歩行く。強雨にも流石に困りたる容子もなく緩々と歩行く。その貌至て不形に見へ、頭は下て鼻の先き土より一二寸計りあがり、前足は土竜の如く短く見へ、尻高くあがり、尾は後に引き、尾先は地より一寸計もすきたり。其全体の形容は見苦しきもの也。其図。

それよりして野道に入り、新墓原〔此所土居より二町余と云〕の辺にて、大石の陰にかくれたると見へしが〔此にかくれたりと覚たれば、皆曰、石の大さいか程なれば虎全く見へざるやらんと申合ひ、直に見て来らんと門を出、彼石の所にゆくに、石は土に埋れて平らなる片面のみにて、少しも物隠れの高みなし。同行の者の申すは、少しもかくれ処なきに、最前虎のかくれたるは、虎は竹の側にては身隠れて見へのものと云。今此石の上には藤(富士は蔓草の名。我邦のふぢにあらず〕四五本あり。定て此藤にかくれたるもの歟。藤葉は小笹の如くなれば、笹の種類にて然らんといひ合へり〕、暫く有て其石の先より出、怒りたる様に見へ、容子は手足釣合て細く成り、常に絵がける虎の如し。其図。

夫より又頭を下げ、尾を曳てしづ〃〃と歩行き、段段と遠ざかり、終には行方を知らずとなり。

二月二十三日虎狩之事
扨三国の和議調ふりしかば、多太、釜山、西生水営、機張の城々へ藩兵を置き、其外は吾が日本へ帰州す。宗対馬守、松浦式部卿、有馬左近将監、大村新八郎、五嶋大和守は釜山に在城しけるが、徒然の余りには、日和さへよければ替わる々々東萊の曠原に出、或は絶景島に渡つて麝狩(麝、韓名ノロ)を致れ、欝散を晴らし居られけるが、或る夜の咄しに、列将一所に大狩を致さんの企てあるに、則二月二十三日は分きて快天につき九徳山に出て虎狩あらんことを談じらるゝに、五将とも思ひ立れ、誰城番に残るべく見ゆる人なし。此九徳山と申すは、来たは東萊に列なり、東は釜山を懐き廻し、南は多太の島根につヾき、西は一片の大河を受たる大山なれば、頂上の巌石聳ちたる所、或は松の森林には必ず虎の多からんと、兼て申しあへる間だ、此日乃ち九徳山に虎狩あらんに極まる。此日の城番鬮(くじ)取りに成ければ、有馬、大村の二将城番の鬮中(あた)りにて、宗、松浦、五島の三将虎狩の中り鬮なりしかば、松浦、五嶋の両将の仰せに、虎狩は朝鮮在陣の仲ちならでは叶はざる事なりと、喜び勇み玉ふも理(こと)はりなり。扨釜山を発足あつて、戌亥を指し、東莱の上松林の中を朝倉に狩らんとあり。それより場所へ落着玉へば、鬮順んに三将並に従士どもにも、習の通り間伏を持つ。列卒の者共、多年分捕の銅鑼太鞁を持ち出したれば、此を叩き立るに虎を五つ狩出したり。宗の手に三つ〔初め悪虎一ツ、佐護内膳が間伏を駆通る。内膳、松が枝の上より、一両筒を持て、矢坪の真たヾ中を撃つ。あやまたず中れば、悪虎大に怒り、雷づちの如き声を発つて駆戻り、内膳が登りたる松の根を掘ること急なり。松これが為めに倒れんとするを、次の間伏より阿比留源左衛門これを撃つに丁と中る。虎怒つて源左衛門が方へ駈寄つて、松の根を掘ること前のごとくす。次の間伏より佐々木右京これを撃つに、虎怒つて右京が登りたる松の根を掘ること前の如くす。次より三山善作、右京が松の根の悪虎を撃つ。虎、善作が登りたる松の根を初めの如くす。次より大浦帯刀これを撃つ。虎初めの如くす。次より多田監物これを撃つ。虎初めの如くす。次より糸瀬猪兵衛これを撃つ。虎初めの如くす。次より一宮助五郎これを撃つ。虎初めの如くす。次より内山玄蕃これを撃つ。悪虎弥々精神加はりたるように見へて益々怒り、玄蕃を見込んで立たる気色、をそろしきとも云ふ計りなし。虎は次第に百千の雷の落ちかゝる声して、一と掘に掘崩さんと、玄蕃が登りたる松をゆさゝする処を、井田助四郎是を撃つ。第一番の矢坪なればたまり兼けん、虎倒れて一とかへりかへつて起き立ち、助四郎を白眼(にら)みたる所を、斎藤彦九郎松が枝より飛下り、鎗を以て突てかゝる。虎胸ぐらを突れて、鎗をかなぐり、血の泡吹いて吼てかゝるを、西山源左衛門、湯浅藤左衛門駆寄て仕留たり。其大さ、ことい牛二つ合たる程あつて、古今無類の大虎なれば、矢強きと云も理はりなり。此次に取れたる虎は義智召れたり。此虎初め列卒より声をかけ、虎は殿の間伏じやと声々に叫ぶも可笑し。扨義智眼をきかせ玉ひ、すはや虎ぞと見玉ひ、矢坪を白眼んで撃玉ふに、過まち玉はず、鉛丸は眉間より肩中通つて、脇腹に出づ。壮虎大ひに怒り、雷のげきする声して、義智の登り玉ふ大松の根を、忽ち四五尺掘り穿つ。大石荒河助己れが登りたる松より下り立て、義智の登り居玉へる松の根、壮虎の後ろに忍び寄ると見へしが、鉄砲振りあげて骨も研(そ)げ皮も破れよと、彼壮虎が背骨をかけて丁と撃つ。虎怒つて荒河助を一と呑にせん勢ひにて飛でかゝ無手(むず)と組んで投たりければ、ころころと五六間転びながらにつと起あがる。壮虎未だ弱らざれば、弥々精神加はりたる勢ひにて飛でかゝる。荒河助、鉄砲を持て二た撃三撃つヾけざまに打つ。壮虎いか程撃れてもひるむことなく、荒河助が寄らば引摑まんと、爪を張つて飛でかかるを、ひらりと飛びちがひ、刀を抜て真向を切る。壮虎切られながら飛びかゝるを、身をひねり遣りすごして、横腹を刺せば、義智下腹を切破らる。腸わた出て虎少し弱りたれども腸わたをひきながら、又義智を目掛けて振直り吼かかるを、義智前足を薙ぎ、返へす刀なに両眼を切て仕留め玉ふ。荒河助御手柄々々と、二た声三声大音にさけべが、近習の諸士、己れ々々が間伏を外して寄り集まる。第三番目に取れたる虎は、初め大浦才蔵が間伏の前に出る。才蔵思ふ矢坪を撃たれば、鉛丸あやまたず肩中より肝をかけて腰骨に留まる。虎は飛かへり才蔵が登りたる松の根を掘る。次より大浦十兵衛、其次より江口藤兵衛、立石右近、綱崎万六左衛門、鈴木松兵衛、宮原彦五郎、神宮清三郎等が手に仕留けり〕、松浦の手に一つ、五嶋の手に一つ取れて、朝倉の狩は相済みにけり。昼は草梁原にて麝狩あり。獲物夥し。夕倉はアメラゴルの上は手を狩んとあり。既に場所にも着れければ、鬩(くじ)取りに任せて松浦、五島、宗と順々に間伏を持つ。扨列卒ども九徳山の絶頂、岩の聳へたるあたりより狩り初め、虎を一つ狩り出し、それより萱の中を見へ隠れに、未申へ向つて追ひけるに、追々萱の中、此こ彼こより狩り出して、夕倉には都合七つ追ひ出しけるを、松浦の手に三つ取れてより、一つを見失ひ、跡に三つ追ひ往きけるを、五島の手に一つ、宗の手に二つ殺さる〔夕倉には義智鬮に取り負け玉ひ、一番松浦、二番五島なり。扨列卒の者ども、虎二つ諸所に殺し残されたるを、義智の間伏の前に追ひ出さんと勇み進む。列疎s津銅鑼太鼓を叩て狩立るに、義智の間伏際より何ゆへにやきれけん、左りを指し、道を替つゝ三浦、織部と大石源太郎が間だを指て蒐け通る。源太郎、織部むき直り、同時に鉄砲を放つに、音に応じて両虎に中る。織部が撃たる虎は、仕組の通りに仕留めたれども、源太郎が撃たる猛虎は剛強なり。乃ち猛虎大石が登り居たる松の根を掘こと火急なり。阿比留助右衛門二放しまで撃外し、手早くこみかへし三放し撃つに、あやまたず矢坪を撃抜く。猛虎少し弱ると見へけれども、其力強大にして助右衛門が登りたる松の根を掘る。助右衛増すが枝に見へざれば外に助くる人無し。源太郎、助右衛門を助けんと松より下らんとする処を、猛虎最前の仇なれば、助右衛門を捨て源太郎に飛かゝれども届かず。直に源太郎が登りたる松の根を掘る。源太郎刀を抜き持、下た枝に下り、足を踏みとめて彼虎を刺す。猛虎振りかへりて源太郎が刃をかめば、頭を振る拍子に刃なみ鋸の如くになる。源太郎が登りたる松は小ければ、乃堀倒されんとす。源太郎も松の上なれば、思ふ儘には働き得ず。下ん々々とする所を、兄荒河助遥かにこれを見て、一と飛に来り、大石を持て猛虎を撃つ。源太郎も兄が来るに力を得て、松よりで下たれば、猛虎荒河助には少しも眼をかけず、源太郎に飛でかゝるを、源太郎大力を出し、虎の頭を突退て尻尾を取て引く。虎益々怒り、大声を挙て吼喰はんとするを、荒河助突き倒す。源太郎は刀を抜て腹を刺し、又頭を蹈つけ眼を刺す。ときに荒河助腮(あご)を取りて引けば、皮裂けて血出ること夥し。荒河助は力に任せて踏付たれば、耳もとより脳出、眼口の底穴より血出て止まず。源太郎乃首切て耳を見れば、耳先き数十ヶ所裂けて居たり。両人笑ふて云ふやう。此虎多年の間だに朝鮮人を三十余人喰たるよとて列卒に渡す。又先き達て取れたるは、織部が次に手束孫七、手束近左衛門、根神目彦七朗、竹岡喜六郎、岡田右衛門兵衛、益田次郎左衛門等が手に仕留けり〕。虎狩果て、夕陽西に傾けば、帰城あるにつき、虎十一、麝十九、行列の先にたて、御手柄次に従士何某と、一つ々々に木の大札を建、其跡に引つヾき三将の行列正々としたるありさま、御手に属したる村々の朝鮮人共も、皆街(ちま)たに出て見物し、一日に夥敷(おびただしき)虎の捕れやうや、朝鮮は将士と云へども虎を見ては怖るゝ者ばかりなるに、日本の勇気、明の大兵と云へどもおそれ玉はざりしも理はりならずやと、咄し入たるありさまを見て、帰城の人々鮱々しくぞ思ひけり。扨金百総、斥候より帰て云やう、今度三国の和議は、秀吉公の寿命を量つて、ことを引き延さんとの計策によるなれば、秀吉公の心に叶ふ計ひならず。依て追付和議破れて、和兵再び来るべしとて、明よりの戌兵どもは専ら日本人の攻るには難く取て、和人お守るにも難き城を築く由申ければ、列将も申談じられ、堅固の縄を以て、三月初めより釜山城を修覆せんとぞ論談ある。心安からぬ沙汰どもなり。

二十六日虎狩。松浦、大村手柄之事
斯(かく)て列将待ち儲け玉ふ日にもなれば、松浦、大村従士に命じて宣はく。虎狩は〔以下本書脱落不全〕

虎落之事
崔命男云く。虎落とは陥穴(おとしあな)のことなり〔虎は兎角人の気を察し、体を用心堅固と心得るものなれば、山野に鹿などを陥すやうの穴へは落ず。依て村々の家並みに家を造る由〕。陥穴は先づ家並に家を造り〔陥穴は井の如く深さ四五丈に掘り、其上に柳の小枝を敷渡し、其上に土を覆ふなり。家並みに陥穴を仕懸るは、虎の疑ひをさらしむる為なり。エサの仕懸様は、家の真中の天井にからくりを為し、籠に犬を入て穴の上に釣てある由〕、戸口を明け、それより虎這入れば、虎落て出さき無く〔極楽おとしの如く、敷居の内に這入れば戸の落るやうこしらへ、虎破れば破れ安き家に作る。押破るに気の付ざるは獣類ゆゑなり〕、家の内を二三日が間は、出る所有ならんかと廻れども、出る所なきによつてひだるく成り、命ちをとらるゝとは思ひながら、真中に釣てある犬を喰んと志ざせども、若し落し穴、あらんかと疑ふゆゑ、折々犬を望むばかりにて打止めども、漸々空腹堪がたく遂に釣籠の犬に飛かゝれば、からくり落て犬籠は上にあがり、虎は陥穴の覆を踏破り数丈の底に陥ると云ふ。

館内虎狩之事
近時明和年中、和館中山の内にて開市の日虎狩あり。其日東莱より稗将商訳など数人市大庁へ参り居、初め虎西館の方へ狩り出し、既に外構の塀を飛越んとするを、松の上に間伏をかまへたる者三拾目筒にて肩中を撃ば、虎塀の上より真向に落ち、立あがらんとする所を、小出小平太大身の鑓(やり)にて胸板を衝貫く。虎は突れたる鑓をかなぐり、已に小平太が手元に近寄る処を、其鑓を刎(はね)すて人の鑓を以てひた衝に衝き遂に仕留めたり。是を東館に伝へ聞。稗将の申すは、壮虎は中々三十目位の鉄炮にて撃れ、鎗の三筋や十筋つかれたればとてなかゝ弱はるものにはあらず。是は病虎にてぞありつらんと云中、又耳元より虎の鳴声し、疾雷の耳底に轟(とどろく)が如し。其声に怖れて今迄もの強き評議など申したる稗将等大きに畏れ、下人の居所の二階にかくれ、下人は皆々床の下に隠れたるとなり。其虎は小次郎鉄炮にて小鼻を手おはせ、其儘東向寺前の竹林に入て見へざるゆへ、竹林の前の柏木より得と見定めんと、鉄炮を木にたてかけ、既に登らんとするを、竹林より虎飛び出、数人の立ふさがりたるには目をかけず、人々の間をかけ通つて彼小次郎の股と木の皮とを合わせて喰付しを、小次郎が僕脇差にて両眼を切りたゝみかけ撃けれども、尚これをはなさず。因て甚助大斧を以て脳を切り割る。これを見て大勢寄合て、いも刺にして殺したるとぞ。両虎ともに手負いたれば、其吼る声寔(まこと)に雷鳴の如くなりしと云へり。

[2] page 94~101

巻四十四〔三〕

仁田四郎忠綱が大猪に馬乗りた話の補足に虎の故事。前半は猪狩りの話につき略します。

(前略)又似たる事の『知不足斎叢書』中にあるは、『江南余載』に、保大中、太平府聶女、歳十三歳。母為攫去。女持刀跳登背、連斫其頸。奮跳不脱。遂斫死、乃還家葬母屍(注)」是如くなれば、猛獣と雖も、その急処を取られては勝こと能はず。又保大は、五代の時、江南偽唐の二主季景、即位、改元保大。

[3] page 178

(注)横書きで漢文は書きにくいので(汗)、以下に書き下し文を記します。

保大中、太平府ノ聶ノ女、歳十三歳。母ノノ為ニ攫(さらわれ)去ル。女刀ヲ持チ跳テノ背ニ登リ、其ノ頸ヲ連斫ス。奮跳スレドモ不脱セズ。遂ニヲ斫(き)リ死セシメ、乃家ニ還リ母ノ屍ヲ葬ル。

巻六十〔一三〕

鵺(ぬえ)について。

頼政の鵺を射しこと、世普く所ㇾ知なり。この鵺のこと諸書に異同あり。謡曲も俗ながら古き物なれば、玆に挙るに、『鵺』又『現在鵺』と云謡には、頭は猿、尾はヘビ、足手はの如くにて、啼声鵺に似たりとあり。その起こりは『源平盛衰記』よりや出けん。去れども『記』には、頭は猿、背中は、尾は狐、足は狸、声は鵺なりと見ゆ。又『平家物語』には、頭は猿、軀は狸、尾は蛇、手足はの如くにて、鳴声鵺にぞ似たりけると。(後略)

[4] page 223

巻六十八〔一〕

荷物一覧表の中に。

巻六十八〔一〕荷物一覧表の中に
(前略)
●巾着〔の毛皮、下ぶくら〕
(中略)
●牡丹に獅子の符合
 ●根付(木彫。狂獅子二疋)
(中略)
獅子に牡丹の巾着
(中略)
●竹の印籠(府合せか、不詳)
 ●根付(象牙彫。、足をなむる軀
 ●印籠(角長手。地さび竹、金高蒔絵、草画の竹、一面に)
 ●緒〆(虎目石か、忘る)
(後略)

[5] page 76、78、81

巻七十九〔一三〕

漢文の中に「虎」の字.

予少壮の頃、看書のとき感読の言あれば、輙(すなは)ち鈔出せり。今玆故紙の中に獲たれば迺(すなはち)挙ぐ。
(中略)
●鳳皇生而有仁義之意。狼生有貪戻之心。両者不等。各以其母。嗚呼戒之哉。〔『賈誼新書』〕
(中略)
猛虎在深山、百獣震恐。及在檻穽之中、揺尾而求食。積威約之漸也〔司馬遷、報任安書〕
(後略)

[5] page 325, 328

『甲子夜話』で「獅子」が出てくる部分の原文

すべて、平凡社東洋文庫(電子書籍)より、[1]等は東洋文庫の巻数を表します。太字はすべてnekohonによるもの。

なお、「獅子」の字が出てくる部分だけの抜き書きとし、前後を省略させていただきますことをお断りします。

巻六十〔二四〕

蜀山人の狂歌。

蜀山人の狂歌は自ら一家を為せり。たヾ恨む其人適用の才なきことを。因て予が得し所の歌を輯録して、聊吊意を寓す。
(中略)  
  に小判の絵に
菊桐のこがねをすてゝて柏木に
 こゝろひかるゝるからねこのつな
(中略)
  獅子舞を犬吠る絵に
から邦のおそろ獅子もやいかならん
  淮南王の犬にむかはゞ
(後略)

[4] page 236-237

巻六十八〔一〕

荷物一覧表の中に。

(前略)
●巾着〔の毛皮、下ぶくら〕
(中略)
●牡丹に獅子の符合
 ●根付(木彫。狂獅子二疋)
(中略)
獅子に牡丹の巾着
(中略)
●竹の印籠(府合せか、不詳)
 ●根付(象牙彫。、足をなむる軀
 ●印籠(角長手。地さび竹、金高蒔絵、草画の竹、一面に)
 ●緒〆(虎目石か、忘る)
(後略)

[5] page 76、78、81

『甲子夜話』で「豹」が出てくる部分の原文

すべて、平凡社東洋文庫(電子書籍)より、[1]等は東洋文庫の巻数を表します。太字はすべてnekohonによるもの。

なお、「豹」の字が出てくる部分だけの抜き書きとし、前後を省略させていただきますことをお断りします。

巻七十二〔一〕

品物一覧表の中に。

(前略)
一、皮茵
これは対州に知る者ありて、韓国産を求めたるが、縦二尺に余るべく、横は一尺有半にもこゆべし。文章愛すべく、普通に踰し皮なりしが、亦後寅に焚す。
(後略)

[5] page 160

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著者について

松浦静山

宝暦10年1月20日(1760年3月7日)-天保12年6月29日(1841年8月15日)82歳。本名は松浦清(まつらきよし)、静山は号。江戸時代。肥前国平戸藩の第九代藩主。官位は従五位下。死後に贈従三位。十七男十六女と子沢山で、うち十一女・愛子は公家の中山忠能に嫁いで慶子を産み、この慶子が孝明天皇の典侍となって宮中に入り、明治天皇を産んだ。よって清は明治天皇の曽祖父にあたる。
(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)

『甲子夜話』1~6

  • 著:松浦静山(まつら せいざん)
  • 編:中村幸彦、中野三敏
  • 出版社:平凡社
  • 発行:1977年
  • NDC: 480(動物学) 489.53(哺乳類・ネコ科) 645.6(家畜各論・犬、猫) 726(マンガ、絵本)748(写真集)913.6(日本文学)小説 914.6(日本文学)随筆、エッセイ
  • ISBN:4582803067 9784582803068 (甲子夜話1)
  • モノクロ
  • 登場ニャン物:猫、山猫、虎
  • 登場動物:犬、馬、牛、狐、狸、鼠、雷獣、河童、他多数
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