宮沢賢治『注文の多い料理店』『どんぐりと山猫』
新潮文庫『注文の多い料理店』収録。
『注文の多い料理店』
有名すぎて、殆どの人は幼年時代に絵本で読んで(見て)いるでしょう。
たいていの絵本には、ナイフとフォークを持ってナプキンをかけた大猫の姿が、挿し絵として登場します。
だから、この話は大猫が大活躍する話と勘違いされている方も多いと思いますが、実際には、わずか一行「にゃあお、くわあ、ごろごろ。」と鳴き声が聞こえるだけなのです。
しかし、その一声が強烈までに印象的なのです。
これは猫の童話だ、と、ずっと思い込んでしまうほどに。
(2002.4.10)
『どんぐりと山猫』
山猫と題しているのだから、これは“野生のネコ科”にいれるべき作品ではないかと言われそうですが。
でも、私の見たところ、宮沢賢治の“山猫”は、カナダオオヤマネコやベンガルヤマネコなどの仲間というより、山にいるイエネコ、もしくは、猫又の仲間(つまり、イエネコの発展形)のように思えるのです。
山猫の署名をみて、一郎は真っ先に「ウウーッといううなり声」や「ウォーという吠え声」ではなく、「にゃあとした顔」を思い浮かべているのですから。
だからやはり、ヤマネコではなく、猫なのです。
宮沢賢治の作品の中では好きな小品のひとつです。
(2002.4.10)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『注文の多い料理店』
- 著:宮沢賢治(みやざわ けんじ)
- 出版社:新潮社 新潮文庫
- 発行:1990年
- NDC:913.6(日本文学)小説
- ISBN:4101092060 9784101092065
- 358ページ
- 登場ニャン物:無名
- 登場動物:
目次(抜粋)
イーハトヴ童話『注文の多い料理店』(全)
- 序
- どんぐりと山猫
- 狼森と笊森、盗森
- 注文の多い料理店
- 烏の北斗七星
- 水仙月の四日
- 山男の四月
- かしわばやしの夜
- 月夜のでんしんばしら
- 鹿踊りのはじまり
雪渡り
ざしき童子のはなし
さるのこしかけ
気のいい火山弾
ひかりの素足
茨海小学校
おきなぐさ
土神ときつね
楢ノ木大学士の野宿
なめとこ山の熊
注解・・・天沢退二郎
つめくさの道しるべ・・・井上ひさし
収録作品について・・・天沢退二郎
年譜