水無月さらら『猫の橋口さん』

大好きなお母さんを失った男の子を、飼い猫が心配して・・・。
ふうわりと、あたたかい気持ちになれる小説です。
ちょっぴり切なくて、ちょっぴり悲しくて、ちょっぴり涙ぐんだりしちゃうけど、読み終わった口元にはきっと爽やかな微笑みが浮かんでいるでしょう。
「ひなた」は10歳の男の子。
大好きだったやさしいお母さんが、ある日突然、死んでしまいました。
その第一発見者はひなたでした。
ひなたは、その直後に高熱を出して寝込んでしまい、お母さんのお通夜もお葬式も出られませんでした。
お父さんはワーカホリックで、そんなひなたをひとりぼっちでマンションに置いたまま、朝早くから夜遅くまで仕事ばかり、しばしば出張にも出かけてしまいます。
ある日、ひなたは、外に出られなくなりました。
学校や買い物に行きたいのに、家から一歩も出られないばかりか、ドアを開けることさえできない。
冷蔵庫は空っぽ。
お父さんは出張中。
このまま飢え死にしてしまうのかなあ。
ぐったりと横たわったひなたの耳に、不思議な声が聞こえてきます。
「橋口ソノエ」と名乗るその声の主は、お母さんの愛猫ノアール!?
ノアールの前世は人間の女性で、お母さんのばあやだった!?
人間は誰でもいつかは、愛する者を失うという経験をします。
「死」に対して、ひとはどう向き合えばよいのか?
残された者達はどうすればよいのか?
20歳の老猫・橋口さんが、幼いひなたとその親友、それから大人のお父さんを、静かにやさしく導いていきます。
(2008.7.7.)

水無月さらら『猫の橋口さん』
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『猫の橋口さん』
- 著:水無月さらら(みなづき さらら)
- 出版社:中経出版 中経文庫
- 発行:2008年
- NDC:913.6(日本文学)小説
- ISBN:9784806129400
- 223ページ
- 登場ニャン物:橋口さん(ノアール)
- 登場動物:-