大佛次郎の猫短篇と猫童話四編
『白猫』
第二次世界大戦の最中の話。
一人家を守って残っていた哲太は、焼け出されたらしい見知らぬ少女を家に招き入れ、一晩泊まらせる。
少女はまた、哲太の知らない間に、飼い主とはぐれたらしい白猫をその家に入れる。
悲惨な状況の中、たくましく生きていく少女を描いた小品。
最後にはふわりと幸せな気持ちになれます。
『猫の旅行』
大佛次郎氏の子供向けの小品。
まだキャリーにいれてネコを運ぶ習慣が一般化されていなかった時代。
引っ越しは決まったが、さてネコのミミはどうしましょう、と家族会議を開く。
とまあ、それだけの内容です。
運び方は、現代からみれば、あまり上等とはいえないのですが、あの時代ではそれでも良い方だったのでしょうし、家族の猫に対する想いもほのぼのとしたものがあります。
『小猫が見たこと』
小猫がかいま見た人間世界の様子。わずか7ページの小品です。
『白猫白吉』
子猫の白吉はある日人間の子供達の会話を盗み聞きします。
「トラとライオンとではどちらが強いだろう」
「ゾウの方がもっと強いだろう」。
そのうちに、あらら不思議、白吉の体がどんどん大きくなって・・・
10ページほどの童話です。
『スイッチョねこ』
スイッチョ、って、何のことかわかりますか。虫のウマオイの事です。秋になると、スイッチョ、スーイッチョンと良い声で鳴きます。
子猫の白吉は、おかあさんねこの言いつけに背き、スイッチョを捕まえようとして、間違えて生きたまま飲み込んでしまいました。スイッチョは白吉のお腹の中で鳴き始めました。
スーイッチョ!スーイッチョ!
うるさくて夜も眠れません。はてさて、こまったぞ。
猫好き作家として有名な大佛次郎氏が書いた童話です。氏自身、この作品はとても気に入っていたようです。他愛のない可愛い小品ですが、私も好きです。
(2002.8.11)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『猫のいる日々』収録
- 著:大佛次郎(おさらぎじろう)
- 出版社:徳間書店 徳間文庫
- 発行:1994年
- NDC:914.6(日本文学)随筆、エッセイ
- ISBN:9784198902148
- 349ページ
- 登場ニャン物:(白猫)、ミミ、白吉
- 登場動物: -