室山泰之『里のサルとつきあうには』

室山泰之『里のサルとつきあうには』

 

副題:『野生動物の被害管理】。

「生態学ライブラリー21」。

著者は、京都大学霊長類研究所に所属している京都大学博士。
この本を読んだ感想も、いかにも京大の学者だなあ、というのが、第一感想だった。

サルの生態について、詳しく書かれている。
数字やグラフに裏付けされた、詳細なデータと豊富な資料。
野生のサルを相手に、よくこれだけ集めたと感心してしまう。

たとえば、[表2-1 員弁町周辺に生息するニホンザルの採食品目リスト] p.32-38。
植生を、「自生種(103種)・作物種(32種)・そのほか(キノコ・昆虫・土)」に分類、さらに「自生種」は「草本種(46種)・木本種(57種)」に分類。各分類の中には、「アカソ/アキノノゲシ/アザミ/イタドリ/・・・」と、植物の品種名。そしてさらに、各植物種について、採食部位を「葉・芽/花・つぼみ/茎・枝/果実・種子/そのほか・不明」の5つに分類して調べている。

この表を見れば、この地域のニホンザルは、アザミやイタドリの「葉・芽」「茎・枝」は食べるが、「花・つぼみ」は食べないとか、カキは「果実・種子」ばかりでなく「葉・芽」も食べ、サツマイモは「果実・種子(地下の芋を含む)」だけを食べるが、サトイモは「葉・芽」「茎・枝」を食し、土を掘って芋つまり「果実・種子」までは食べないんだな、と、一目瞭然にわかる。

さらにおまけに同様の一覧表がもう1枚、[表2-2 大山田村周辺に生息するニホンザルの採食品目リスト] 42-48。こちらは全部で、自生種草本種42、自生種木本種50、作物種29、そのほか2の、総計123種。

ちなみに、うちの畑に限っての観察だけど、うちの方のサルたちは、サトイモには一切手を付けない。そのかわり、サツマイモは、確かに食べるのは芋だけ。けれども、サツマイモは大好物のようで、春に芋づる(サツマイモの苗)を植えるとすぐにサルたちがやってきて引っこ抜く。いくら抜いても芋がついていないので、イラついてますます抜いて回るのか、あっという間に畑ひとつが全部抜かれてしまう。その抜かれた芋づるを植えなおしても、すぐにまたやってきて引っこ抜く。サルは芋づるこそ食べないが、厳重に柵で囲って用心しても、知らぬ間に侵入して次々と引っこ抜かれるので、なかなかサツマイモは芋まで育たない。

サルに食べられたカボチャ

↑サルにかじられたカボチャ。うちの畑ではカボチャはほとんど作ることができない。大きくなる前に全部サルに食べられちゃうから。ま、ここまで大きくなっていれば、サルがかじったところを落として、人間が残りを食べちゃいますけれどネ。

(さらに蛇足。サトイモの葉を食する哺乳類はニホンジカ、芋はイノシシの好物で大胆に掘り返される。サツマイモは葉はニホンジカ、芋はサルとイノシシ。芋が地表に露出していればニホンジカも食べるかもしれないけれど、今のところ、掘られたことは無い。)

具体的な被害防御技術についても、色々書いてある。本全体に言えることだが、説明図のほとんどが、写真ではなくイラストで描かれているので、とてもわかりやすい。防獣ネットの張り方、設置のポイント、電気柵の効果や問題点、色々な脅し道具、その他。

これらの章は、農家であれば、一番知りたいところだと思う。一般農家ができるサル防御策は、一通り全部書いてあるのではないか。

しかし、読めば読むほど、サル対策のむつかしさに困惑してしまうのも事実である。畑全体を、天井までガッシリ檻に囲む以外、何をしても無駄なんじゃないかという気さえする。

それくらい、サルは賢く、器用で、身体能力に優れ、しかも、なんでも食べる。 私のような動物好き人間にとっては、だからこそ楽しいのだけど(笑)。

で。

私のような動物好き人間にとって、一番気になるのはやはり、ニホンザルの分布や個体数についての章である。幸い、ニホンザルはまだ絶滅危惧種に指定されるほどではないものの、ものすごく多いわけでもない。重篤な流行病でも発生すれば、たちまち壊滅的打撃を受ける程度の頭数だ。

私はいちおう農もやっている。うちの畑をはじめ、周辺地域のサル害はかなりひどい。サル対策はしなければ暮らせない。

そんな私の、心の中の本音。

・・・サルたち!田畑を荒らすなよ!お願いだから田畑を荒らさないで!でも、もし、ひもじくてひもじくて、どうしようもなくなったら、うちの畑においで!うちの畑のものなら、いくら食べてもいいから。

本当に。

厳密にうちの畑限定で食べてくれるなら、私は決して追い払うどころか、ますます張り切って作付けしちゃうのに。しかし残念ながら、サルたちは賢いといっても、人語までは理解してくれない。うちの畑も荒らすが、他の田畑も当然荒らす。

仕方なく、サルを見るたびに、私はバケツを叩いたりロケット花火を点火したりして、サルを追わなければならない毎日なのである。無念至極である。

(2013.12.30.)

室山泰之『里のサルとつきあうには』

室山泰之『里のサルとつきあうには』

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『里のサルとつきあうには』
生態学ライブラリー21 野生動物の被害管理

  • 著:室山泰之(むろやま やすゆき)
  • 出版社:京都大学学術出版会
  • 発行:2003年
  • NDC:489.9(哺乳類)霊長類
  • ISBN:9784876983216
  • 245ページ
  • 登場ニャン物:-
  • 登場動物:ニホンザル

 

目次(抜粋)

はじめに
第1章 猿害との出会い
第2章 被害はなぜ起きる?
第3章 被害管理とはなにか
第4章 採食戦略としての農地採食
第5章 農地と集落の環境整備
第6章 被害防除技術
第7章 行政レベルの被害管理
第8章 ニホンザルの過去と現在
第9章 里のサルとつきあうには
あとがき
読書案内
引用文献
索  引

 

著者について

室山泰之(むろやま やすゆき)

京都大学霊長類研究所附属ニホンザル野外観察施設助手。京都大学博士(理学)。1962年京都府生まれ。1992年京都大学大学院理学研究科博士後期課程修了。日本学術振興会特別研究員、ルイパスツール大学客員研究員、京都大学霊長類研究所非常勤研究員、科学技術振興事業団科学技術特別研究員(農林水産省森林総合研究所関西支所勤務)を経て現職。
専門、野生動物管理学、動物行動学
主な著訳書: 『ニホンザルの心を探る』(分担執筆、朝日新聞社、1992)、『サルの百科』(分担執筆、データハウス、1996)、『霊長類学を学ぶ人のために』(分担執筆、世界思想社、1999)、『霊長類生態学--環境と行動のダイナミズム--』(分担執筆、京都大学学術出版会、2000)、『小学館の図鑑 NEO 動物』(分担執筆、小学館、2002)、『霊長類学のすすめ』(分担執筆、丸善、2003)

(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)


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室山泰之『里のサルとつきあうには』

うちの倉庫の屋根に登るニホンザル。

室山泰之『里のサルとつきあうには』

6.5

動物度

9.5/10

面白さ

7.0/10

役に立つ

8.5/10

猫好きさんへお勧め度

1.0/10

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