ポール・ナース『WHAT IS LIFE?(ホワット・イズ・ライフ?)』生命とは何か

竹内薫訳。生命とは?ノーベル賞生物学者が人類の謎に答える。
海外で大評判な本と聞いて、和訳が出たと知って、さっそく読んでみました。なるほどね、これならベストセラーも納得。
さらに嬉しいのが、日本語版の訳者が竹内氏だということです。こういう本はともすれば、その道の専門家が、正確だがつまらない訳で出版してしまいがちなのですが、これはなんせ竹内薫氏ですもの。自然な日本語の文章、それも読んで楽しい文章になっていて、どこにも文句のつけようがありませんでした。すばらしい。
内容的には、まあ基本的なことばかりではありました。私はただの動物好きな兼業農婦です。「ニュートン」誌等を愛読していますけれど、生物学とか細胞学とかをきちんと学習したことはありません。その程度の私でも、特別に目新し情報というのはありませんでした。ましてや生物学の専門家であれば、そんなこと全部知っているよ、となるのではないでしょうか。
にもかかわらず、引き込まれて読んでしまう面白さがありました。話の進め方や知識のまとめ方がうまいのでしょう。そして読み終えた後、散らかっていた知識がきれいに整頓された爽快感もありました。ゴミ屋敷に住んでいた人が、プロの片付け屋を頼んで、美しく片付いた自分の部屋に「うわあ」と感動する、そのくらいの気持ちよさがありました。

この本を読めば、地上のすべての生命が繋がっていることが実感できます。人間はあまりに奢り高ぶっていますが、そんな奢りに根拠がないこともわかります。ヒトがヒト種単独では生きていけないこともわかります。そもそもヒトの体のほとんどが多種の生命からできた集合体であることも再認識されます。地球全体が、ひとつの巨大な生命体に感じられてきます。
しかし、とはいえ。
根源の、もっともい根本的な疑惑は、あいかわらず何も解明されていないと言ってよいかもしれません。その疑惑とは即ち、
「なぜ生命が、というより宇宙そのものが、存在するのか?」
ということ。
著者は、地球の生命が宇宙からやってきた可能性を示唆していますが、その宇宙のどこにしたって、どうして生命が誕生したの?どうして宇宙そのものが誕生したの?最大の謎だと思いませんか!!??この謎を人類が解明することはあるのでしょうか?この謎の解明は、超大統一理論の完成より、はるかに難しいことだと思うのです。
さてさて。
この本を読んで私が思った「生命とは何か」の答え。それは
「生命とは、生き続けることを願う”ある存在”のことである」。

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

目次(抜粋)
まえがき
ステップ1 細胞 細胞は生物学の「原子」だ
ステップ2 遺伝子 時の試練をへて
ステップ3 自然淘汰による進化 偶然と必然
ステップ4 化学としての生命 カオスからの秩序
ステップ5 情報としての生命 全体として機能するということ
世界を変える
生命とは何か?
謝辞
訳者あとがき
著者略歴
著者について
ポール・ナース Pqul Nurse
遺伝学者、細胞生物t学者。細胞周期研究での業績が評価され、2001年にノーベル生理学・医学賞を受賞。ほか、2002年に仏レジオン・ドヌール勲章、2013年にアルベルト・アインシュタイン世界科学賞を受賞。
竹内薫(たけうち かおる)
利学博士、サイエンス作家。小説、エッセイ、翻訳など幅広い分野で活躍している。主な訳書に『宇宙の始まりと終わりはなぜ同じなのか』(ロジャー・ペンローズ著)、『奇跡の脳』(ジル・ボルト・テイラー著)等。 (著者プロフィールは本著からの抜粋です。)
『WHAT IS LIFE?(ホワット・イズ・ライフ?)』
生命とは何か
- 著ポール・ナー Paul Nurse
- 訳:竹内薫(たけうち かおる)
- 出版社:ダイヤモンド社
- 発行:2021年
- NDC:460(生物化学、一般生物学)
- ISBN:9784478111079
- 269ページ
- 原書:”What is Life? – Understand Biology in Five Steps” c2020
- 登場ニャン物:-
- 登場動物:-
