實吉達郎『人類はいつから強くなったか』
副題:『古代猛獣との死闘』。
1986年に「古代の牙王 サーベルタイガー」として出版された本を、加筆・改筆・再構成・再編集したもの。
私は古い方の版も持っていたりする(笑)。
400万年前、ネコ族Felisは二つの系統にわかれていた。そのひとつがのちに現生のトラ、ライオン、ヒョウ、ヤマネコ、飼いネコの祖先になり、いまひとつにホプロフォネウスという中型の捕食獣を、まず生み出した。
これがサーベルタイガー第一号であった。
ホプロフォネウスの系統には、エウスミルス、サンサノスミルス、メガンテレオンなどが現れ、マカイロドゥスに続く。
これは大きな体に巨大な牙という、独特な特徴を持った肉食動物だった。
そして、それは最後の剣歯虎・スミロドンSmilodonへ受け継がれた。
スミロドンが出現したのは、猿人アウストラロピテクスの時代だった。
以来、人類(の祖先)対スミロドンの壮絶な戦いが始まる。
著者は、人類(の祖先)たちと、古代獣達との関係を、わかりやすく追っていく。
スミロドンだけではない。
ホラアナライオン、ホラアナグマ、ホラハイエナ、長毛マンモス、長毛サイ、原牛アウロックス、その他その他。
そして、恐ろしい結論を引き出す。
これは、核戦略用語でいう「オーバーキル」である。人類は、ネアンデルタール時代からか、それともクロマニョン(新人類)になってからか、「必要なだけ殺す」という自然界の捕食者の掟を破りだしたのである。
どこかでたががはずれたのだ。
まだ現代にくらべると比較にならないほど少なかった人類が、世界じゅうの、少なくとも大型の動物を絶滅か激減の方向に向けてしまった。まさかそんな時代に?銃もないのに?と信じたい思いがするが、人類はすでに世界中の居住可能なすべての地域に住みひろがっていた。そして、彼らが住み着いて何代かたつと、必ずその地方の大型獣が減少しはじめるのだ。
人類は、25万年前から自然を破壊していた!
たとえば、火を使って。
獣を出すためだけに、広大な地域に火を放つ。
それを繰り返せば、植生が変わり、そこに適応していた動物たちは住めなくなる。
アフリカの大型哺乳類の各属のうち40%近くが絶滅したのは、6万年前の(人類による)大放火の頃だという。
ヨーロッパでも同じような滅亡が3~1万年前におこった。
そして、アメリカ大陸。
人類が移住すると、アフリカやヨーロッパでは数万年かかった動物大滅亡・激減が、たった1000年くらいの間に達成されてしまった。
それでも、バイソンはまだ6000万頭は残っていたのだ。
白人達が北米に渡る前には。
1860年にバイソンの大虐殺がはじまると、みるみる数を減らし、29年後の1889年には、「人に飼われていたものまで入れて」たった1091頭にまで減ってしまった。
60,000,000頭が1,091頭!!!
読んでいると、暗澹たる気持ちになってくる。
このヒトという種は、なんという種なんだろう!
それでも、最後に少しだけ救いがある。
あるいは著者の単なるロマンかもしれないが。
もしかして、もしかして、世界のUMA=未確認動物といわれるものの中には、最後のスミロドンや長毛マンモスがいたのかも知れない・・・?
(2008.4.4.)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『人類はいつから強くなったか』
古代猛獣との死闘 「古代の牙王 サーベルタイガー」改題
- 著:實吉達郎(さねよし たつお)
- 出版社:祥伝社黄金文庫
- 発行:2001年
- NDC:457(古生物学、化石)
- ISBN:4396312725 9784396312725
- 301ページ
- 登場ニャン物:-
- 登場動物:サーベルタイガー、ほか