實吉達郎『トラvsライオン』
副題:『獣の王決定戦シミュレーション』。
トラとライオン。
もし戦ったら、どちらが強いのか?
これは、動物好きならずとも、一生に一度は発する質問に違いない。
どちらも大きく狂暴で、巨大な牙と鋭い爪、しなやかな筋肉におおわれたその体は、見るからに強そうだ。
まさに肉食獣の最頂点に立つ動物たちである。
著者の実吉達郎氏も、子供の頃から疑問に思っていたという。
しかし
「実はこれは千古の大疑問といってよく、(中略)、教授でも博士でも明快に答えられはしない。」
「そこでそういう『需要』に応じて、出来るだけこの大疑問に答えてみようとしたのがこの本である。もし、読み終わって、不満を感じたり、反論が胸に浮かんだら、それはつつしんで承ります。いぜん、決着はついていないじゃないか、とお考えになったとしても、それが私の答えなのです。」
結論を書くな、本を読む興味が薄れるじゃないか、と怒られるかもしれない。
が、動物たちについて少しでも知っている人なら、トラとライオンが戦ったりしないことはご存じのはずだ。
少なくとも野生の状態で、そんな馬鹿げたことはしない。
もしトラとライオンが戦ったとしたら、それは飼育下の、それもきわめて不自然な状況でのみ・・・どちらが勝ったにせよ、そんな不自然な戦いが、正当な勝敗結果と認められるだろうか?
そういう意味では、結論よりも、そこへいたる考証過程を楽しむ本である。
実に様々な方面から論じられている。
トラ・ライオン以外の動物も多々出てくる。
多くの文献が引き合いに出され、多彩な場面が語られる。
ワクワクするほど面白い。
そして最後に、どちらが強いかはわからないとは言いつつも、著者は非常に控えめに、著者自身の考えを述べる。
実吉達郎が考える、どちらかといえばやや強みがある動物とは果たして、トラなのか、ライオンなのか?
それは申し訳ありませんがここには書けません。
読んでのお楽しみということで・・・(*^_^*)。
(2008.3.20.)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『トラvsライオン』
獣の王決定戦シミュレーション
- 著:實吉達郎(さねよし たつお)
- 出版社:光風社出版
- 発行:1994年
- NDC:489.53(哺乳類・ネコ科)
- ISBN:4875197578 9784875197577
- 237ページ
- 登場ニャン物:トラ、ライオン
- 登場動物:-
目次(抜粋)
第1章 コロッセウムのトラとライオン
-トラが勝つという記録上の根拠
第2章 ローマのトラはどこから来たか
-四年もかかった護送の旅
第3章 ヒョウがトラに勝つって本当か
-ヒョウに殺される少年殉教者
第4章 サーカスのトラとライオンの勝敗
-第一、ライオンに檻が破れるのか?
第5章 動物園のライオンとトラ、ヒョウ
-私の職場にいた猛獣たち
第6章 インドの王はトラとライオンを戦わせたか
-人獅子(ナラシンバ)ありトラの神あり
第7章 インドライオン興亡史とトラ
-かつてインドで両雄の決戦があった?
第8章 トラ、ライオンの徹底的比較
-より進化した方が強いか
第9章 両雄の戦いの「実写」を見た
-クラレンス君の活躍
第10章 一夜に一八頭のライオンを斃す
-過去のライオンと人との攻防
第11章 トラを説得するゴリド人デルスウ
-過去のトラと人との攻防
第12章 トラほど多くの人を殺したものはない
-人食いトラの記録と物語
第13章 マン・イーターは好みの問題?
-人食いライオンの記録と物語
第14章 猛虎に襲いかかる赤い狩猟軍
-トラに勝つ野生動物は何か
第15章 「百獣の王」どころの騒ぎじゃない
-ライオンを負かす「野犬群」とは何か
第16章 御馳走を食い損ねた黒い怪獣
-実在した黒いトラと白いトラ
第17章 ライオンのプライドの持つ機能
-怠け王も楽じゃないのだ
第18章 放蕩息子の帰還後はどうなったか
-若いライオンの“人生”
第19章 トラが来たぞとサンバーは咆える
-孤独なトラの現実生活
第20章 大樹海は王の領土(ウラデーニエ)であった
-一九〇〇年代のアムールトラの生態
第21章 ヒグマはトラの向こうを張る
-教授達の意見は対立する
第22章 ゾウに対してはどうか
-発情注のゾウは最も恐ろしい
第23章 サーベルタイガーに子孫あり
-ユキヒョウとウンピョウ
第24章 ジャガーは第三獣王か
-トラと“アメリカトラ”の比較
第25章 次席を占める万能選手
-ピューマはジャガーの好敵手か
第26章 サイに対してはどうか
-アジアとアフリカの貴重な角
第27章 カバに対してはどうか
-四五キロもある赤ん坊を狙う
これまでの総括