柴田よしき『猫はこたつで丸くなる』

猫探偵正太郎の冒険3
これも短編集。
今までで一番良かったかも。
全体的にすごく自然なのだ。プロの作家さんに対しこんな言葉は失礼かもしれないが、肩の力が抜けて、正太郎達がより自然体になり、ストーリーにも無理がない(猫が推理するという設定自体が無理だという点は別にして)。動物達は可愛く、賢い。
ただ、血統書付き猫は当然交配して子猫を産ませるもの、という前提の話だけはいただけなかったけれど。
今回は正太郎の永遠の恋人トマシーナの視点から書かれた短編も含まれている。そのため登場人物にも場所設定にも変化がでて、退屈する暇がない。
シリーズものは回を重ねるに連れつまらなくなるものが少なくないが、この正太郎シリーズは回を追うごとに面白くなって、裏切られません。次が楽しみ。
【猫探偵正太郎シリーズ】
主人公の正太郎は、ペルシアもどきの雑種ネコ。ミステリー作家・桜川ひとみ宅に同居している。
桜川ひとみは、天然でお気楽な現代女性。これでミステリー作家が勤まるのかと心配になってしまうほど。正太郎の名前さえ、しばしば「クロちゃん」だの「タマちゃん」だの、適当な呼び名でごまかして平気である。
それに対し、正太郎は、日本語は完璧に理解し、文字も「まぐろ」くらいなら読めちゃう天才猫。人間顔負けの推理をして、殺人・殺猫事件の謎を解いてしまう。
それから、おもしろいのが、一番最後の「解説」。作家の図子慧(ずし けい)氏によるもの。氏は、「猫を飼うと、猫について語りたいことがブクブクとガスのように溜まって」くるいい、そこでネットに書き込みをしたり、猫友だちと「お互い自分の飼っている猫の話しかしないのですが」長電話したりしちゃうのだ、と、書き、そして、
延々と、自分の猫の話。柴田氏の本の解説なのに!(笑)
なんか、こんなところも、いかにも猫好きが集まっている感じで、かえってとても良いのであります☆
(2004年4月10日)

柴田よしき『猫はこたつで丸くなる』
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『猫はこたつで丸くなる』
猫探偵正太郎の冒険3
- 著:柴田よしき(しばた よしき)
- 出版社:光文社カッパノベルス
- 発行:2004年
- NDC:913.6(日本文学) 短編推理小説
- ISBN:4334075487 9784334740160(文庫版)
- 289+3ページ
- 登場ニャン物:正太郎、トマシーナ(トーマ)、ゴンタ
- 登場動物: サスケ(犬)
目次(抜粋)
- 正太郎ときのこの森の冒険
- トーマと蒼い月
- 正太郎と秘密の花園の殺人
- フォロー・ミー
- 正太郎と惜夏のスパイ大作戦
- 限りなく透明に近いピンク
- 猫はこたつで丸くなる
- *あとがき
- *読者代表より 川端由香里
- *解説 図子慧