鈴木直樹『マンモスを科学する』

マンモスが、日本にやって来た!。
「愛・地球博」で公開された冷凍マンモスを実際にご覧になった方は多いのではないだろうか。
「愛・地球博」は、2005年3月~9月に愛知県で開催された。参加国121カ国+4国際機関、来場者は2200万人。
冷凍マンモス「ユカギルマンモス」は、間違いなく、最大の呼び物のひとつだった。
当初、万博側では、パビリオン内を2つのコースに分け、どちらのコースを通っても最後にはマンモス・ラボに到着するよう設計した。
が、「マンモスだけを見たい」という希望が殺到、オープン翌月にはマンモスラボ単独観覧コースを設置せざるを得なくなっている。
それほど、人々のマンモス熱は高かった。
大人も子供もマンモスを見たがった。
マンモスほど太古のロマンをかきたてる動物はいない。
恐竜たちと違い、我々人類の祖先と共存していた動物。
人類にとって最大の獲物であり、かつ、人類が絶滅させた最初の動物のひとつであるかもしれないマンモス。
大きくて、強くて、頼もしくて、なのにどこか儚い。
著者の鈴木氏は、最新の(人間用)医科的技術でマンモスを解析する技にかけては世界の最先端を行く。
ベビーマンモス「マーシャ」(身体)と「ジーマ」(心臓)をはじめてCT装置にかけた人物でもある。
貴重な冷凍マンモスにメスを入れずに内部調査を可能にした画期的な試みだ。
その鈴木氏にとんでもない話が舞い込んでくる。
「愛・地球博」で冷凍マンモスの発掘・展示が計画され、その調査団のメンバーになってほしいというのである。
すばらしく魅力的な話、が、鈴木氏は専門家だけに、それがいかに困難なプロジェクトであるかも痛いほどわかる。
即答はできない。
1週間も悩む。
いざ心が決まってからは獅子奮迅の活躍だった。
次々と襲いかかるトラブルの数々。
せっかくの最新機械が書類上の手続きミスで現地に運べなかったり。
予算が削られて予定が大幅に狂ったり。輸送に伴う困難。
その他その他。
マンモスを日本に運ぶのが、どれほど大変な事業だったか。
この一大プロジェクトに、どれほど多くの人々が世界中から参加し、どれほど多くの貴重なデータを入手できたか。
私は万博には行かなかったのだが、それでも、いよいよ冷凍マンモスが公開されたときの興奮はビシビシと伝わってくる。
実際にご覧になった方ならなおさら、ぜひこの本を読んでください。
マンモスが生きて目の前に現れるような錯覚を覚えるでしょう。
(2008.1.29)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『マンモスを科学する』
- 著:鈴木直樹(すずき なおき)
- 出版社:角川学芸出版 角川学芸ブックス
- 発行:2007年
- NDC:457.87(古生物学、化石)
- ISBN:9784046519870
- 199ページ
- 登場ニャン物:-
- 登場動物:マンモス