常喜寝太郎『全部救ってやる』巻03

常喜寝太郎『全部救ってやる』

とにかく、助けたい。

私利私欲を捨てるはもちろん、自分の健康さえ平気で捨ててしまう覚悟の久我。そんな久我を心配し必死に手伝う星野。動物保護の世界にするどく切り込むコミックです。

ストーリー

ペットにされる動物は犬猫だけでない。一時期大流行したミドリガメもそのひとつ。しかし、カメは長生きする。縁日の屋台などで気楽に買ったミドリガメ(ミシシッピアカミミガメ)も、ちゃんと飼育すれば30年40年と生き、ギネス記録は50年だという。カメと一緒に飼い主も老いていく。どれほど愛情があっても老いには勝てない。カメ専門の保護活動者なんているのだろうか?

 

常喜寝太郎『全部救ってやる』

 

悲惨な事故もある。ブリーダーの家でおきた火事。そこにはチワワがなんと124頭。まっさきに駆け付けた久我が救助に飛び込む。他の団体も駆けつけてくる。燃え盛る火。世話をしていたのは高齢女性ただ一人。

 

常喜寝太郎『全部救ってやる』

 

無事犬たちを救い出せた、と思ったが、6頭たりないという。行方不明の6頭はどこへいった?そもそも申告の124頭という数は合っているのか?たった一人で124頭もお世話できていたのか?

 

常喜寝太郎『全部救ってやる』

 

久我や団体中でのトラブル、SNSでの誹謗中傷、人間たちの思惑が黒く渦巻く。

感想

動物の保護活動を描いたマンガには、特定の個人や団体を非現実的なまでに理想的に描く一方で、他の個人や団体をこっぴどくこき下ろすようなものが少なくありません。中には「こんな悪い団体がある、あんな悪いボランティアもいる」と酷評するばかりでウンザリするような作品もありました。愛護団体の裏話もよいですが、そんなのばかりだと人々が団体を信じられなくなって、助けられる命さえ助けられなくなってしまいます。ほとんどの団体は、皆それぞれの方法で、必死に活動しているんです。

 

常喜寝太郎『全部救ってやる』

 

そんな中、この『全部救ってやる』は、中立の立場でよく描いていると思います。久我の弱点もちゃんと描いていますし、一見強引にみえた団体の事情も「そういうことか」とわかるように説明されています。人々の保護活動に対する無理解、悪徳業者の存在、保健所職員の苦労もえがかれています。本の帯に「全国書店で推薦多数!!」とコピーをうってあるのもうなづける内容です。

 

おすすめです。ぜひお読みください。

 

常喜寝太郎『全部救ってやる』

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

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目次(抜粋)

  • 第18話 善人が損する世界なんですね
  • 第19話 カメの保護活動
  • 第20話 煙
  • 第21話 大間違いやで
  • 第22話 承認欲求のためじゃないか
  • 第23話 ありがとう
  • 第24話 ディフェンド
  • 第25話 ファミリーやのに
  • 第26話 全部覚えてます
  • 第27話 火事の後処理

『全部救ってやる』巻03

  • 著:常喜寝太郎(つねき ねたろう)
  • 出版社:株式会社小学館 裏少年サンデーコミックス
  • 発行:2025年
  • NDC: 726(マンガ、絵本)マンガ
  • ISBN:9784098540358
  • 192ページ
  • モノクロ
  • 初出:「マンガワン」2024年9月23日~12月16日配信分
  • 登場ニャン物:猫たち
  • 登場動物:犬たち
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