『同居人はひざ、時々、頭のうえ。』第1巻~第10巻

『同居人はひざ、時々、頭のうえ。』

原作:みなつき、作画:二ツ家あす。

同じ出来事が、人視点と猫視点の両方から描かれるという二重構成になっている点がめずらしい作品です。TVアニメにもなりました(AT-X、2019年)。

みなつき原作 二ツ家あす作画『同居人はひざ、時々、頭のうえ。』

ストーリー

朏素晴(みかづきすばる)は、大の人間嫌い。子どものころから本に、本の世界だけに没頭して生きてきた。あらゆる人間を避けてきた。人間だけではない、あらゆる生物との接触を避けて生きてきた男なのだ。両親は他界し、今はまったくの一人ぼっちである。

幸い文才があり、推理作家として立派に独立している。両親が遺してくれた家もある。作家という職業は、家に閉じこもってひたすら書いていればよいのだから、素晴にはまさに天職だ。編集者の河瀬は、そんな素晴を心配し、もっと外に連れ出して社会経験をさせようとする。が、素晴は断固拒否。他人がいる場所なんて「思考の妨げにしかならないっ」。

そんなある日、まったくの偶然で「猫が釣れた?」。

みなつき原作 二ツ家あす作画『同居人はひざ、時々、頭のうえ。』

 

両親の墓参り中に、供え物に喰いついた野良猫がいた。新作のアイディアにつまっていた素晴は、ネタが来たと、その野良猫を連れて帰る。

みなつき原作 二ツ家あす作画『同居人はひざ、時々、頭のうえ。』

猫はインスピレーションの宝庫だった。その目つき、仕草、何もかもが、素晴の空想力をかきたて、新作は大人気。

が、猫は生き物。生き物と暮らすには、食べ物その他の世話をしなければならないし、病院へもつれていかなければならない。つまり、嫌でも外に出て他人と接する機会が増えてしまうということ。それまで猫どころかどんな生き物とも生活したことのなかった素晴にとっては、すべてが緊張、すべてが冒険だった。そのうえ、素晴の編集担当者も、唯一の友人も、大の猫好きときたからただじゃすまない。理由にならぬ理由をつけては、あるいは理由もなく、素晴の家を訪ねてくる。そして長時間居座って猫と遊んでいく。さらに他の猫好き人間も集まりようになり、素晴の生活も徐々に変わっていくのだった。

みなつき原作 二ツ家あす作画『同居人はひざ、時々、頭のうえ。』

感想

素晴は、最初、猫の事はなにも知りません。ペットショップでアドバイスをうけるとき、店員に性別や年齢を聞かれて、自分の性別や年齢を答えてしまうほどの猫初心者でした。

みなつき原作 二ツ家あす作画『同居人はひざ、時々、頭のうえ。』

しかも、超が付く人嫌い。誰とも会いたくない!話したくない!他人が家に来るなんて考えられない!

そんな素晴が、猫と暮らすようになって、どんどん変わっていく(変わらされていく)姿が見所です。

そして面白いのが、どの話も、人間の素晴からの視点と、猫の陽(はる)ちゃんからの視点という、ふたつのまったく別な視点から描かれているということです。人間が思っていたことと、猫が感じていたことが、同じ出来事でも全然違う。猫がしようとしていたことと、人間がそれをどう受け取ったかも、全然違う。笑っちゃうくらい違うんです。なのに、結果的にはうまく収まっていて、ほのぼのと暖かい空気が流れます。

この雰囲気、桜井海の人気コミック『おじさまと猫』シリーズにちょっと似ていますね。そして、猫が人間を一生懸命守ろうとしているところ、これは海外の小説ですが、ウェルズ『通い猫アルフィー』シリーズに通じるものがあると思いました。

みなつき原作 二ツ家あす作画『同居人はひざ、時々、頭のうえ。』

そうです、陽ちゃんは、いつだって、素春を守るために必死なんです。自分よりはるかに体の大きな素春を「あの子」と呼び、すっかり保護者気分です。というのも陽ちゃんは子供の頃、幼い兄弟たちを必死にお世話した経験があるから。自分もまだチビなのに、もっと小さな弟妹たちを、懸命に守って育てようとした過去。空しく死なせてしまった記憶。

みなつき原作 二ツ家あす作画『同居人はひざ、時々、頭のうえ。』

その悲しい経験が、陽ちゃんをとりわけ母性本能の強い猫に育てたのでしょう。素春を幼い子供のように、手のかかる守るべ存在と見、かいがいしく面倒を焼きます。それが実にかわいいんです。素晴と陽ちゃん、どちらも自分こそ相手の保護者と思い込んでいます。

ある日、素晴たちの家の床下で、子猫たちが見つかりました。捨てられたのでしょう。

素晴はここでさらなる困難に直面します。里親探しという難題。見知らぬ他人に声をかけてチラシを配るという、かつての彼には考えられなかった行動。でも、子猫たちのために人見知りを克服しました。それが縁で、素春の世界はさらにぐんとひろまりました。

猫と引きこもり男の交流。なんともいえず暖かい世界です。超おすすめ!

余談ですが

アマゾンで次の最新刊の発売日を調べていて、あることに気づきました。この作品、ドイツ語にも翻訳出版されていたんですね!で、そのタイトルは;

“My Roommate is a Cat: Von Katzen und Menschen aus beiden Perspektiven erzaehlt – eine tierische Comedy!”

なぜかタイトルは英語で(和訳「ルームメイトは猫」)、サブタイトルはドイツ語。意味は「猫と人間の両方の視点から語られる—―動物コメディ!」。なーんかドイツ人らしいというか、きっちり説明しているじゃないのと、ちょっとおもしろく感じた次第です。

みなつき原作 二ツ家あす作画『同居人はひざ、時々、頭のうえ。』
みなつき原作 二ツ家あす作画『同居人はひざ、時々、頭のうえ。』

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

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『同居人はひざ、時々、頭のうえ。』

第1巻~第10巻

  • 原作:みなつき
  • 作画:二ツ家あす
  • 出版社:フレックスコミックス株式会社
  • 発行:2015年(第1巻)~
  • NDC:726(マンガ、絵本)コミック
  • ISBN:9784593881161(第1巻)
  • 158ページ(第1巻)
  • モノクロ、口絵
  • 初出:COMICぽらりす2014年10月~(連載中)
  • 登場ニャン物:はる(陽)、レオ、はち、ろく、トラ姉さん、クロ、だんご、コジロー、陸、他
  • 登場動物:タロー、きなこ(犬)
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