江口裕輔『イノシシから田畑を守る』

江口裕輔『イノシシから田畑を守る』

 

副題:『おもしろ生態とかしこい防ぎ方』。

里山に囲まれた集落に引っ越して約10年。
自然が豊かで、動物層も豊かで、そして動物達による田畑被害もそりゃもう豊か、しかも、年々ひどくなる!?

当然です。年々、集落の人口は高齢化する、年々、耕作放棄地は増える、サルを追いかける脚力が無くなり、防護柵を修理する腕力がなくなり、まして里山を整備する体力も気力もなく、この10年で耕作地は半減、山は大前進しました。草も藪も低木も増えて、山と人里の区別がつかなくなりました。

人の目で見てさえ、管理地なのか放棄地なのかわからないような畑もあります。草茫々の荒れ地の中に細々と畝が作られて、そこにわずかな自家消費用の作物が植えてあったりします。

こうなったらもう、イノシシにとっては、食べ放題、したい放題です。毎晩のように出没しては、乱雑に掘り返し、お土産に黒い糞を残していきます(汗)。

ひとつの畑にイノシシが出れば、隣の畑も無事では済みません。ネットで囲っても、トタンで囲っても、電気柵で囲っても、何をどうしても、イノシシは巧みに忍び込み、一晩でサツマイモを全滅させ、里芋を食い散らします。

私の畑も当然やられました。2010年の秋の実りは、9割までがイノシシほか動物達のお腹に収まりました。

周辺農家は皆、怒り心頭です。そして困り切っています。
私も一応、困った顔をしてはいますが・・・内心は、ワクワクさせられっぱなしでした。

なぜなら私という人間は本来、植物には何の興味も無いからなんです。畑をしているのはあくまで生活のためであって、本当の関心は動物達、なかでもけだものたち、哺乳類に集中しています。せっせと畑を耕すのは、自分が食べるためが第一義ではありますが、動物達との交流を楽しむためでもあるのです(←でもこれは内緒)。

ああ、それにしても。
イノシシって、なんて賢く、なんて用心深く、なんて力持ちなんでしょう!
固い石だらけの地面をボッコボコに掘り返す力は感動的でさえあります。
それにウリ坊のかわいいこと!人間に見つかって、アタフタ、アタフタと駆け回る、その姿の愛らしいことといったら!

江口裕輔『イノシシから田畑を守る』

とても具体的です。

そんな私ですから、『イノシシから田畑を守る』はとても面白く読みました。

イノシシ生態については、私がここ10年で観察してきたことが裏書きされていて、嬉しく思いました。
イノシシ防御法についても、たぶんこうすればいいんじゃないかと思っていた方法がほぼそのまま書いてあって、それも嬉しい確認でした(でもあまり実践していません・・・だって完全に防御しちゃったらつまらないもん?・・・大汗!)。

本著は、イノシシ害を防ぎたい農家のために書かれた本ではあります。けれども、動物としてのイノシシに興味がある人にも、実際的な情報が多く、とても面白い本です。著者はイノシシの行動学が専門の方。そのため「被害を防ぐ側の農家の立場よりイノシシの立場のほうが詳しい。イノシシの気持ちには、すぐなれるということだ。(p.38)」だから読んでいて楽しいというか、後味が良いんですね。これが、先祖代々根っからの農家で、イノシシに対する憎しみに凝り固まった人が書いた本なら、読む前から憎悪オーラがメラメラ立ち登っちゃって、どれほどすばらしい対策が書いてあろうと、きっと読者はどんより落ち込んでしまうだろうと思うんです。どんな理由があるにせよ、憎悪を根底に書かれた本は、読む人もマイナスの空気に包みます。

この本はきわめて実用的で役立つだけでなく、読みものとしても面白く、私はますますイノシシが好きになりました。

(2011.4.1.)

江口裕輔『イノシシから田畑を守る』

江口裕輔『イノシシから田畑を守る』

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『イノシシから田畑を守る』
おもしろ生態とかしこい防ぎ方

  • 著:江口裕輔(えぐち ゆうすけ)
  • 出版社:農山漁村文化協会
  • 発行:2003年
  • NDC:615.8(作物栽培)作物保護学、農業災害、動物の害
  • ISBN:9784540021237
  • 147ページ
  • 登場ニャン物:-
  • 登場動物:イノシシ、ほか

 

目次(抜粋)

まえがき

第1章 なぜイノシシを防げないか―被害対策10の盲点
1.「柵をつくれば安全」は大間違い
2.音、光、臭いは必ず慣れる―イノシシの頭のよさ
3.被害は餌づけ、人慣れの園長にある
4.個体数管理はイタチごっこを招く!?

第2章 イノシシのしたたかさ、泣きどころ
1.狩猟動物としての誤解、伝聞
2.跳ねる、這う、くぐり抜ける
3.鋭い感覚能力、高い知力
4.餌の好み、食べ方
5.ブタとは違う出産、子育て
6.臆病と大胆が裏腹ーその行動パターンと弱点

第3章 誰でもできるイノシシ対策の実際
1.田畑を囲う前にできること
2.集落の人の動きがカギをにぎる
3.かしこい田畑の囲い方、防止柵の設置
4.そのほかの対策
5.個体数管理(捕獲)のやり方

第4章 イノシシとの共存を目指して
1.日本人とイノシシとの闘い
2.一九七〇年以降に被害が拡大
3.イノシシに強い中山間地の農地管理

付録1 捕獲したイノシシを食す
付録2 イノシシ肉の解体の方法
あとがき
資料

 

著者について

江口裕輔(えぐち ゆうすけ)

麻布大学大学院獣医学研究科博士課程修了(動物応用科学専攻)。近畿中国四国農業研究センター鳥獣害研究室を経て、2003年1月より麻布大学講師。「イノシシの飼育管理に関する行動学的研究」で、日本畜産学会奨励賞を受賞(2001年)。

(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)


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【付録:我が家周辺の、イノシシの活動跡。】

江口裕輔『イノシシから田畑を守る』

平らなはずの地面が、ボッコボコに掘り返してあります。大きな石も放りだしてあります。比較の対象に、穴の中に私のゴム長を置きました。

江口裕輔『イノシシから田畑を守る』

こんなに深い穴なんです。すごいでしょう?

江口裕輔『イノシシから田畑を守る』

里芋被害。順調に成長していたのに、一晩で1本残らず掘られ食べられました。ものすごい食欲です。

江口裕輔『イノシシから田畑を守る』

でも、時には悲劇も起こります。ネットにひっかかって動けなくなったところを農爺に撲殺されたウリ坊の頭蓋骨。まだこんなに小さな子が、かわいそうに。

 

江口裕輔『イノシシから田畑を守る』

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動物度

9.0/10

面白さ

8.0/10

情報度

8.5/10

猫好きさんへお勧め度

1.0/10

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