畠佐代子『カヤネズミの本』

畠佐代子『カヤネズミの本』

 

副題:『カヤネズミ博士のフィールドワーク報告』。

うちの畑のすぐ横に、カヤネズミの生息地がある。
時には畑の中に伸びてきたススキに巣がかけてあることもある。

だから草刈をするときは気を付けなければならない。
まず草刈り予定地に分け入って丹念に巣を探す。
もし巣があればその周辺は刈らずに残す。
巣には触らない。

しかし、ひっじょーに残念なことに、カヤネズミの姿を見たことは数えるほどしかない。
しかも、子供はまだゼロだ。
巣を見つけた場合、驚かしてはいけないと、遠くから伺うだけなのだが、一度だって子どもが頭を出すなんて幸運にはまだ出会っていない。
いつか必ず見たいと願っている。

カヤネズミは、学名(ラテン名)を “Micromys minutus” という。
この綴りを見れば、ラテン語を知らない人でも意味は推測できるだろう(私もラテン語は知らない)。
minutus 、つまり「小さいネズミ」の意。
そう、日本で一番小さなネズミ。
世界的に見ても、とても小さなネズミ。

どのくらい小さいかというと、体の大きさは、人間の大人の親指くらい(頭胴長約6cm)、体重は500円硬貨1枚分(7~8g)。
あまりに軽くて小さいので、バッタのように草の上に乗れる。

畠佐代子『カヤネズミの本』

畠佐代子『カヤネズミの本』

ちなみに、ドブネズミの大きな個体は頭胴長28cm、体重500gにも達する(注1)。
ペットショップでおなじみのジャンガリアンハムスター(ドワーフハムスターと表記されることも)は、短い尾を含む全長7~11.3cm、体重32~40g(注2)。
うちの過去最デブだったジャンガリアンは60gに届きそうな巨体だった(汗)。

こんなにちっちゃくて、こんなに可愛いカヤネズミなのに、残念ながら一般知名度は低く、研究者も少なく、このままではひっそりと姿を消してしまいかねない状況にある。
それに待ったをかけたのが、著者。
インターネットを駆使して「全国カヤネズミ・ネットワーク」を立ち上げ、カヤネズミ情報を収集し続けている。
私もデータがそろったら是非送りたいとは思っているけど・・・なかなか・・・色々と忙しいし(汗;)

くだらない前書きは止めましょうね。

ま、私が何よりも言いたいのは。
「カヤネズミ、かわいい~~~!」 ってこと。
本当に可愛く、愛らしく。
この本を読めば、あなたも必ず叫びたくなるでしょう。
「カヤネズミ、かわいすぎるぅ~~!!」

豊富なカラー写真。
分かりやすい文章。
それでいて、しっかりした調査に基づいた、科学的な内容。
すばらしい。

唯一の欠点は、たった106ページの本だということか。
406ページだったら嬉しかったのになあ。

カヤネズミ・ファンの方はもちろん、今までカヤネズミという名さえ知らなかった方でも、この本を読めばきっと、カヤネズミを愛しく思うようになるでしょう。
そして、もしカヤネズミのことを少しでも考えていただけるなら、彼らをなるべく傷つけずに済むよう、草刈り時・野焼き時は少しだけ配慮してあげてください。
どうかどうか、お願いします。

(2014.10.30.)
(注1)『日本の哺乳類 』監修:阿部永 東海大学出版会
(注2)『ハムスタークラブ (カラー・ガイド・ブック) 』 著:長坂拓也 誠文堂新光社

畠佐代子『カヤネズミの本』

とても小さな動物、気が付いた時は絶滅していた・・・なんてことには、絶対にならないように!

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『カヤネズミの本』
カヤネズミ博士のフィールドワーク報告

  • 著:畠佐代子(はた さよこ)
  • 出版社:世界思想社
  • 発行:2014年
  • NDC: 489.47(哺乳類・齧歯目)
  • ISBN:9784790716136
  • 106ページ
  • フルカラー
  • 登場ニャン物:-
  • 登場動物:カヤネズミ

 

目次(抜粋)

はじめに

第1章 カヤネズミって知ってる?
基本データ/カヤネズミのひみつ/草を編んだ巣で子育て/他

第2章 フィールドワークから見るカヤネズミのくらし
出巣/採餌/グルーミング/「通い婚」ならぬ「通い子育て」/他

第3章 カヤネズミと人のくらしとの関わり
茅場とカヤネズミ/早春の火入れ/他
稲作とカヤネズミ/水田と休耕田の利用スケジュール/他

第4章 カヤネズミを取り巻く現状と保護活動
追われるカヤネズミ/緑の屍/ないないづくしの中で生まれた「全国カヤマップ」/他

あとがき
主要参考文献
写真・図表一覧

著者について

畠佐代子(はた さよこ)

所属:全国カヤネズミ・ネットワーク代表、東京大学空間情報科学研究センター客員研究員、滋賀県立大学非常勤講師(環境動物学)、同大学客員研究員。博士(環境科学)。
研究・業績等:琵琶湖・淀川水系をメインフィールドとしてカヤネズミの生態を研究する傍ら、市民活動ベースでの全国的なカヤネズミの生息地保全にも取り組む。
著書に『外来種ハンドブック』(共著、地人書館、2002)『制が医学からみた里やまの自然保と保護』(KS地球環境科学専門書)(共著、講談社、2005)、『野生動物保護の事典』(共著、朝倉書店、2010)。

(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)


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カヤネズミの巣

管理人所有地でみつけたカヤネズミの巣。いずれもすでに空き家でしたのでご安心を。

カヤネズミ

管理人が畑(トウモロコシ畝)で撮影。か~わいい!

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