畠佐代子『すぐそこに、カヤネズミ』

畠佐代子『すぐそこに、カヤネズミ』

 

体重わずか8g、草の上にバッタのように乗っちゃうネズミ。

カヤネズミは、体の大きさは人間の親指くらい、体重は500円玉と同じくらいという、とても小さな動物です。あまりに軽いので、バッタのようにちょこんと草の上に乗ることができます。乗るだけじゃありません。長い尻尾をくるりんと草に巻き付けて、バランスを取ります。小さなお手手も、かわいいあんよも、しっかりと草をつかむことができます。

昔は日本中に生息していました。ところが今は、すっかり減ってしまいました。京都府や東京都をはじめ、多くのと都道府県の「レッドデータブック」に掲載されてしまうくらいに。

この本は、そんなカヤネズミの生態を、わかりやすく解説した本です。くもん出版「くもんジュニアサイエンス」シリーズの一冊ですから、読者の想定は主に子供、ローティーンくらいでしょうか。

でももちろん、大人が読んでも学べる内容です。カヤネズミはあまり一般に知られている動物ではありませんから、むしろ大人こそ、こういう本をしっかり読んで、カヤネズミを守るにはどうしたらよいか、考えてほしいと思います。本の中にも書かれていますが、ほんのちょっとのことが、カヤネズミたちにとっては多大な効果をもたらす場合もあるのです。

畠佐代子『すぐそこに、カヤネズミ』

畠佐代子『すぐそこに、カヤネズミ』

実は私が住んでいるところには、かなりのカヤネズミが生息しています。もしかしたら「大生息地」と呼んでも良いくらいの規模かもしれません。ほんとに本のタイトルの通り、すぐそこにカヤネズミがいる環境なんです。その気になってちょっと探せば、すぐに巣を見つける事ができます。農作業のために草刈りをすれば、カヤネズミの巣がごろごろ出てきます。耕作中の自分の畑の周囲に、28個もみつけたことときは、「万歳」って気分でした。少なくともここでは絶滅危惧種じゃないぞ、と。

しかし、カヤネズミちゃんに会うのは困難です。ちっちゃい体で、おそろしくすばしこく、憶病で、しかも夜行性!よほど運が良いか、よほど根気よく探さない限り、めったに会えません(「子育て巣」の中を覗くなんて愚挙は論外)。ですので、私も数えるほどしか会ったことがないんです。巣はこんなに沢山あるのに。それがちょっと残念です。

畠佐代子『すぐそこに、カヤネズミ』

畠佐代子『すぐそこに、カヤネズミ』

著者の調査結果と、当地の様子とでは、ちょっと違う部分があることにも気づきました。

たとえば、巣の地面からの高さ。

本では「地上80cmから120cmの高さに集中してつくられていることがわかりました」(page85-86)とのことですが、当地ではもう少し低く、子育て用巣でも、私の膝くらいが多いのです。高さとしては地面から30-70cm程度じゃないでしょうか。

また、著者の調査地では、巣に使われた植物のトップはオギだったそうです(page85)。しかし私の農地内はオギはあまり生えていません。そのためでしょう、巣に使われる一番人気はススキです。でももっと低い草にもよく作ってあります。著者の調査地では「草たけが100cmより低い植物は、ほとんど巣作りに使われませんでした」(page86)そうですが、私は夏の草刈り中に、まさかこんな低い草むらに巣はないだろうと油断していたら、うっかりまだ緑色の巣(=ってことはたぶん使用中)がついたままの草を刈りとってしまったことがあります。幸い中に赤ちゃんはいませんでしたが、その時の草むらの高さは、50cmあるかないかでした。

これはカヤネズミたちが、その地域の特色や環境に合わせて、臨機応変・柔軟に適応しているということでしょう。あのちっちゃい頭で、よく考えているんですね。なんて賢い♪

畠佐代子『すぐそこに、カヤネズミ』

畠佐代子『すぐそこに、カヤネズミ』

この本を読んで、カヤネズミについてもっと知りたいと思った人は、ぜひ全国カヤネズミ・ネットワークにアクセスしてください。

この本を、お子さんやお孫さん、甥っ子さん姪っ子さん、赤の他人でも動物好きな子どもがいたら、プレゼントしてください。小さな小さなカヤネズミ、カヤネズミのような動物を暖かく見守れる社会こそ、成熟した大人の社会なのです。カヤネズミのためにちょっとだけ配慮して暮らせる人、そんな大人に育ってほしい、そんな大人がもっと増えれば、きっとこの日本ももっと暮らしやすくなるでしょう。カヤネズミを保護するということは、カヤネズミという特定品種だけを守る事ではないのです。カヤネズミが安心して暮らせる環境は、他の多種多様な生物たちも繁殖していけます。そういう意味ではカヤネズミは指標動物でもあります。カヤネズミは巣というわかりやすいマークを残してくれますので、そこの自然が健全に保たれているかどうか、誰にでもわかりやすいのです。

日本中のカヤ原に、休耕田に、畑に、カヤネズミが戻ってくる日を願っています。

畠佐代子『すぐそこに、カヤネズミ』

畠佐代子『すぐそこに、カヤネズミ』

畠佐代子『すぐそこに、カヤネズミ』

畠佐代子『すぐそこに、カヤネズミ』

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『すぐそこに、カヤネズミ』
身近にくらす野生動物を守る方法

  • 著:畠佐代子(はた さよこ)
  • 出版社:くもん出版 くもんジュニアサイエンス
  • 発行:2015年
  • NDC:460(生物科学. 一般生物学)
  • ISBN:9784774324166
  • 144ページ
  • カラー
  • 登場ニャン物:-
  • 登場動物:カヤネズミたち

 

目次(抜粋)

はじめに―――さあ、フィールドに出かけよう
◆住宅地から、ほんの100mほど
◆グラウンドのすぐそばで見つけた!
◆フィールドが水没して、泥だらけに
ほか

第1章 カヤネズミ、きほんの「き」
◆カヤネズミって、どんなネズミ?
◆どこに分布している?
◆体のつくりを見てみよう
ほか

第2章 カヤネズミの親子と、すんでいる草むら
◆子育てのようす
◆カヤネズミがすむ草むらの植物
◆カヤネズミがすむ草むらの動物

第3章 なぜ、カヤネズミが減っている?
◆ふつうに出会えたカヤネズミ
◆『レッドデータブック』にのるカヤネズミ
◆ウナギやカタツムリお
ほか

第4章 カヤネズミを調べる―――先生から出された宿題
◆カヤネズミのどんなことが知りたいか
◆カヤネズミの巣を見つける
◆ついに巣を発見!
ほか

第5章 カヤネズミを調べる―――飼育しながら観察する
◆カヤネズミをつかまえる
◆なかなかのできばえ、自作トラップ
◆自作トラップは空ぶり
ほか

第6章 カヤネズミを調べる―――野外で観察し、調査する
◆調査地の巣が全滅
◆巣のデータを記録する
◆巣から巣への引っこし
ほか

第7章 草刈りとカヤネズミを両立できるか・・・・・
◆変わりはてた堤防
◆草刈りの理由はわかるけれど・・・
◆全滅していなかったカヤネズミ
ほか

第8章 カヤネズミの巣を探して三千里!?
◆落ちてきたアイデア
◆「全国カヤマップ」づくり開始
◆カヤネズミレッドデータの調査
◆絶滅のおそれあり
ほか

第9章 みなさんも「カヤニスト」になろう!
◆フィールドに出る準備
◆カヤネズミの巣の探しかた
◆ノートに記録しよう
ほか

おわりに―――野生動物を守りたいと思っているあなたへ
◆ちょっとかわった道を進んだわたし
◆動物大好き、読書大好き
◆わたしが研究者になったwけ
ほか

あとがき

著者について

畠佐代子(はた さよこ)

研究・業績等:琵琶湖・淀川水系をメインフィールドとしてカヤネズミの生態を研究する傍ら、市民活動ベースでの全国的なカヤネズミの生息地保全にも取り組む。著書に『カヤネズミの本』など。
全国カヤネズミ・ネットワーク

(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)


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カヤネズミの巣

ちょっと草刈りしただけで、こんなに巣がごろごろと。(全部すでに空き家になっている巣でしたので、ご安心を。)

カヤネズミ

近所の田んぼで見かけた子

草むら

うちの畑は金網の防獣フェンスに囲まれています。フェンスの外周にはあえてススキを残し、フェンスの内側数十センチには草を残すほか、エンバク等を撒いて「麦ベルト」としています。このお陰か、この畑周囲だけでカヤネズミの巣が28個もありました。

畠佐代子『すぐそこに、カヤネズミ』

8.2

動物度

9.9/10

おもしろさ

8.5/10

情報度

8.5/10

お子さんへのお勧め度

10.0/10

猫好きさんへお勧め度

4.0/10

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