谷村志穂『いつものお茶、いつもと違う猫』
猫のことは書かない作家のはずだったのに。
猫を飼い始めたとき、編集者に言われたそうだ。
「・・・猫を飼ったからといって、自分の猫についてあれこれ書くような作家にだけはならないでくださいよ。約束してくださいよ」
谷村氏は約束し、『以後、自分の猫についてはほとんど書かない、意志の強い書き手としてやってきた』はずだったが・・・
ある日、どうしても猫について書かなければならないような事件が起こってしまった!
事件といっても、猫と同居経験のない人にとっては、そんなことは事件のうちに入らないだろう。
馬鹿馬鹿しいと舌打ちするだけではないか。
が、猫と暮らしている人であれば、それが禁を破るほどの「大事件」だという谷村氏の言葉に深く頷くはずだ。
そしてその後でニタニタっと顔が崩れるだろう。
「うんうん、わかるわかる」と。
自分の猫について書かないはずの作家なので、この本でも猫に割かれた紙数はあまり多くはない。
が、、あちこちで筆が滑って猫という文字が出てくる。
もちろん猫の章もある。
愛猫家の作家に猫無しの文章なんか書けるわけがないのだ。
この本の構成は、大半が谷村氏のエッセイ、後ろの方に書評論を少々と、動物学者の河合雅雄氏との対談が載っている。
「猫については書かない」の禁を破ってしまった谷村氏、これからもどんどん猫について書いて下さいね。
楽しみにしています!
(2003.9.1)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『いつものお茶、いつもと違う猫』
- 著:谷村志穂(たにむら しほ)
- 出版社:中公文庫
- 発行:2000年
- NDC:914.6(日本文学)随筆、エッセイ
- ISBN:4122036127 9784122036123
- 251ページ
- 登場ニャン物:チャイ
- 登場動物:-