日高敏隆『動物の言い分 人間の言い分』

日高敏隆『動物の言い分 人間の言い分』

 

日本人「虹は7色」オランダ人「5色でしょ」。

この本は実はアニマルライト(動物の権利)の本かと勘違いして買ってしまったのであった。

内容は全然違った。
動物と人間の視点(考え方)の違いを焦点に、各動物たちのおもしろ生態を描いた本だった。
いわば動物学の雑学書である。

さすが猫好きの日高氏、猫の話はイの一番に出てくる。
最初の章(4ページ)がネコ、次の章がイヌとネコ。
このような本の場合、多くの本では、まずイヌ、それからその半分くらいの長さでネコ、という取り扱いが多いようだが、日高氏は猫好きなので構成も猫好き用になっている(?)。
その後もネコはちらちら出てくる。猫本と歌う程ではないが。

日高敏隆『動物の言い分 人間の言い分』

日高敏隆『動物の言い分 人間の言い分』

全然ネコとは関係ないが、この本の中で、日高氏はデズモンド・モリス氏の説
「人間のメスは乳房を大きくして、尻を擬態することにした。」
をちらりと紹介している。

この説はけっこう支持されているようだ。
が、私はいつも疑問に思う。

そりゃ、シェイプアップに余念がない白人女性のはち切れそうな乳房ならお尻に似ていなくはないが、しかし正直な話、例えば我々日本人の薄い胸、それも何人も子育てしたような女性の乳房がお尻を連想させるだろうか?

ヒトの近縁であるチンパンジーもボノボもゴリラも、乳房はヒトほど大きくない。
あらゆるほ乳類の中で、こんなに大きな乳房を持っているのはヒトのメスだけだそうだ。
その理由は、しかし、尻の擬態ではなく、私は赤ん坊の保護にあると思うのだが、どうだろう?

ネコもアナウサギもカンガルーも、赤ん坊は非力でいかにも頼りないようだが、実はちゃんと自力でお母さんの乳首を見つけ出し吸い付くだけの力は持っている。
母ネコは決して、母ヒトのように、赤ん坊を抱いて乳首まで誘導してあげたりはしない。
赤ん坊が自分で吸い付くのだ。
さらに、サル科のほとんどの赤ん坊は産まれた直後から自力で母サルの体にしがみつくことが出来る。

おそらくあらゆるほ乳類の中で、ヒトの赤ん坊だけが、まるで丸太のように転がったままなのだ。

産まれた直後のヒトの赤ん坊はぎゃーぎゃー泣くだけで、自分で動き回って乳首を見つけることは出来ない。
ましてや自力で母ヒトにしがみつくなんてできやしない。
すべて母ヒトまかせ。

母ヒトはお乳を飲ませるとき、しっかりと赤ん坊を抱きかかえ、赤ん坊の口を自分の乳首に持って行かなければならない。
他の動物では考えられないことだ。

私は、乳房の大きさは、そんな母ヒトのための「猶予」ではないかと思っている。

もし男のような乳房だったら、余裕がなくて、少しでも体が揺れたら赤ん坊の口から乳首から離れてしまうだろうし、逆に強く押し当てすぎたら赤ん坊は飲むどころか、下手すれば窒息か骨折だろう。
ヒトの赤ん坊は恐ろしく頼りないのだから。

ヒトの乳房は、あの大きさと厚みと柔らかさがあるいからこそ、赤ん坊は、押しつぶされることもなく、多少揺れても乳首から離れることなく、お乳を吸い続けることができるのではないだろうか。
さらに、あのクッション性があるからこそ、赤ちゃんを胸に押し付けるように抱きかかえたまま、敵から走って逃げるなんてことも可能なのではないだろうか。

これは私の勝手な説です。
認められた学説ではありませんから他人の前では言わないでね。
(でも私としては、絶対の自信があるんだけどな。)

(2003.8.14)

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『動物の言い分 人間の言い分』
角川ONEテーマ21

  • 著:日高敏隆 (ひだか としたか)
  • 出版社:角川書店
  • 発行:2001年
  • NDC:480(動物学)
  • ISBN:4047040320 9784047040328
  • 207ページ
  • 登場ニャン物:-
  • 登場動物:-

 

目次(抜粋)

まえがき
動物たちの生き方
動物の論理
動物からの発想
動物と人間
人間の論理

著者について

日高敏隆(ひだか としたか)

東京大学理学部動物学科卒。理学博士。東京農工大学教授、京都大学教授、滋賀県立大学学長を経て、現在、総合地球環境学研究所所長。京都大学名誉教授。専攻は動物行動学。昆虫、魚類、哺乳類などの幅広い研究活動で知られる。

(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)


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日高敏隆『動物の言い分 人間の言い分』

8.3

動物度

9.8/10

面白さ

9.0/10

情報度

8.5/10

猫好きさんへお勧め度

6.0/10

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