『古典文学動物誌』
古典の世界に棲む動物の百科!
全部で126種の動物たちを、まず「実在の動物たち」112種と「幻想の動物たち」14種に大きく分類。実在の動物たちはさらに、獣・鳥・虫・魚・介にわけて紹介しています。
【実在の動物たち】
- 獣=犬、狼、狸、狐、猫、他
- 鳥=雉子、鶏、鶉、鷹、鳶、他
- 虫=蝶、蚕、蓑虫、松虫、蟋蟀、他
- 魚=鯉、鮒、泥鰌、鯰、鰻、他
- 介=海老、蟹、寄生虫、割殻、蛤、他
【幻想の動物たち】
- 龍、獅子、麒麟、鳳凰、迦陵頻伽、他
たとえば【猫】の項では、まず最初に簡単にネコ家畜化の歴史。それから、『寛平御記』(宇多天皇の日記)がチラリと出てきたあと、『枕草子』(清少納言)の猫「命婦のおとど」、『源氏物語』(紫式部)の柏木・女三の宮の猫、『更級日記』の霊的な猫、御伽草子『猫の草子』、などが簡潔に紹介されています。さらに近世の浄瑠璃『今川本領猫魔館』、歌舞伎『花埜(の)嵯峨猫また稿』、『有松染相撲浴衣』の名前があげられ、『徒然草』(兼好法師)の猫又や『北越雪譜』の大猫、俳諧で「猫の恋」が季語になったことも書かれています。
どの生き物も1~2ページにまとめられていますので、各文献はタイトルだけか内容をごく簡単にかいてあるだけで、雑学としては面白いものの、深い知識を得られるというほどではありません。でも、それを足がかりに、もとの文献を入手して読みこめば、きっととても楽しめるでしょう。というか、そういうガイドとしてこの本は編集されたのだと思います。古典に興味のある方、動物についてもっと知りたい方、この本をおおいに活用してください。
なお、私が所持しているのは1995年発行の旧版。2007年に新装版『知っ得 古典文学動物誌』が出ました・・・が、これも2023年現在、中古でしか入手できないようですね。こういう知識の宝庫こそ長く続けてほしい本なのに、くだらない書物ばかり増えて良書が駆逐されてしまうのは残念です。電子書籍のデータは紙の本より長く残る・・・のかなあ?であれば、こういう本から早く電子書籍化してください。
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『古典文学動物誌』
國文學増刊(1994・10)改装版
- 編者:國文學編集部
- 出版社:株式会社 學燈社
- 発行:1995年
- NDC:910.2(日本文学)
- ISBN:9784312700216 (旧版431210042X)
- 216ページ
- モノクロ