石田祥『猫を処方いたします。5』

化学薬品より、生きた猫のほうがずっと効きます。
中京こころのびょういんは、どこにも宣伝は出していないし、検索しても何故か出てこない、不思議なびょういん。人づてに「良いメンタルクリニックがある」と聞いた患者だけが、ウロウロ探し回ったあげく、やっと見つけることができます。
びょういんにいるのは、ニケ先生と千歳看護師。ニケ先生はまだ若くやたら軽い感じで、この人がメンタルクリニックの名医かと誰もがとまどってしまうほど。千歳看護師は、キツイ美人で品があって、でもそのツンと取り澄ました中にふと優しさを感じることがあります。
あらすじ
バリキャリな姉が、珍しく、突然妹を頼ってきた。頼られたのはあるいは初めてかも?とまどいながら姉のマンションへ向かった妹は、「こころのびょういん」から処方されたという猫を姉の代わりに返却にいったのだが、なぜかニケ先生は受け取ってくれず・・・?
高齢者用ケアハウスに勤務する女性。入居者に聞いて「こころのびょういん」に来てみた。実はそれほど深刻な悩みを抱えているわけでもないが・・・。その彼女にニケ先生は「猫を聞いてみろ」という。猫を聞くって?
中京こころの病院の隣に会社をかまえている椎名は、離婚した妻との間に娘がいた。不器用な彼は、昔から、人を気遣うあまりについ嘘を重ねてしまい、離婚に至った原因も結局はそんな嘘が積み重なったからだ。離婚はしても娘には嫌われたくない、必死なパパ・・・
そして、あび野。京都の芸妓で、千歳の(元)飼い主。いな、あび野はまだ、行方不明になったままの千歳をあきらめてはいない。あび野の妹分のゆり葉の最近の様子も気がかりだ。

感想
必要な人が、必要なときに訪れたときしか見つけられない不思議なびょういん。受付に座っているのは、京の都にふさわしい古風な美人で、ツンとそっけなく冷たいが、底に優しさを秘めています。彼女と対照的なのがニケ先生。ヘラヘラと軽く、つかみどころがなくて、しばしば居眠りもしていて、およそ医者っぽくありません。
でも、このびょういんにかかった患者の心は確実に健康に近づきます。薬のかわりに本物の猫を処方されることがおおいですが、ときには猫の音を聞かされたり、ときには・・・猫が往診にくることも?
全体的にふんわりとしていて、やさしくて、あたたかくて、ちょっと切なくて。この本そのものが「メンタルクリニック」みたいな本です。
そして、今回の最後はとても気になります。このびょういんはまだ続いてくれるのでしょうか?ニケ先生は大丈夫なのでしょうか?ニケ先生は、いったい、誰をこんなにも待っているのでしょうか・・・?
※著作権法に配慮し、本の中見の画像にあえてボカシをいれる場合があります。ご了承ください。

目次(抜粋)
- 第一話
- 第二話
- 第三話
- 第四話
著者について
石田祥(いしだ しょう)
2014年、第9回日本ラブストーリー大賞へ応募した『トマトの先生』が大賞を受賞しデビュー。『猫を処方いたします。』が第11回京都本対象、第13回うつのみや大賞文庫部門大賞を受賞。 著書に「猫を処方いたします。」シリーズ、「ドッグカフェ・ワンノアール」シリーズ、『元カレの猫を、預かりまして。』『夜は不思議などうぶつえん』『火星より。応答せよ、妹』『にゃんずトラベラー』がある。
(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)
『猫を処方いたします。5』
- 著:石田祥(いしだ しょう)
- 出版社:株式会社PHP研究所 PHP文芸文庫
- 発行:2025年
- NDC:913.6(日本文学)小説
- ISBN:9784569905181
- 282ページ
- 初出:(書き下ろし)
- 登場ニャン物:ミュー、ミミ太、モコ、ほか
- 登場動物:-



