やまねひとみ『神社猫おくじの昔話』
副題:神社の猫伝説
老三毛猫が子猫に聞かせる不思議な昔話
あらすじ
神社のおみくじ売り場の番をしているのは、人間ではなく、年老いた三毛猫でした。
その三毛猫を慕って、子猫のニャ吉がよくやってきます。三毛猫はニャ吉に昔話を語って聞かせるのでした。
とおいとおい昔のお話。神様が世の中をおつくりになり、人々がそこに暮らすようになりました。あるとき、その国に災難がふりかかりました。その禍から逃れるには、選ばれし者が危険な山に登って神聖な梅の木をとってこなければなりません。
その選ばれし者たちとは、山を越えたむこうにすむ兄弟のこと。使者に選ばれた二人の青年が兄弟のもとへむかい、危険な旅に出かけます。
感想
神社猫とあるからには猫の話かと期待したのですが、ぜんぜんでした。語り手が猫という設定になってはいるものの、その話の内容に猫はチラリとも出てこず、犬が大活躍します。そしてその語り手の猫も聞き手の猫も、猫らしいことは何もしません。ただ若い方が老いた方の猫のところにやってきて、さて物語の始まり始まり、という構図です。
ですので、猫の本をもとめていらっしゃる方には不向きと言わざるを得ません。
その、語られる昔話とは、創作神話のようなもの。国の災難を救うために、二人の青年が特定の兄弟を迎えに行き、四人そろって冒険し、無事に「神聖な梅の木」をとってくるという、ストーリー的にはよくあるものです。ただそれを語るのが猫、という設定が少しユニークです。
各章の最初と最後に少し猫たちが登場しニャアニャア言いますが、三毛猫が語り始めてからはニャの字も出ないふつうの文章で、上記の通り、猫はどこにも出てきません。いわば猫はただのアクセント?猫に語らせるなら、物語の中で活躍する動物も犬ではなく猫ならよかったのに、とちょっと残念ではあります。
冒険もののネタ晴らしを書いてしまうのは興ざめなだけですから、ここではひかえさせていただきますね。もう少し振り仮名が多いつくりなら、小学校高学年から良さそうな内容で、それなら小学校の図書館にも置けたのにと、勿体ない気がします。
と、ここで、全然関係のない話ですが。
「梅の木」でふと思い出したのが「紅天女」。そう、あの美内すずえの超大作漫画『ガラスの仮面』に出てくる架空の戯曲です。『ガラスの仮面』ってまだ続いているの?いつ完結?それに、細川智栄子あんど芙〜みん『王家の紋章』。いつ完結するの?
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
目次(抜粋)
- 序
- 一 神様の庭
- 二 使命への旅へ
- 三 黒雲山
- 四 守られし者たち
- 五 春は来たり
- あとがき
『神社猫おくじの昔話』
神社の猫伝説
- 著:やまね ひとみ
- 出版社:株式会社文藝者
- 発行:2019年
- NDC:913.6(日本文学)小説
- ISBN:9784286206431
- 157ページ
- 登場ニャン物:おくじ、ニャ吉(あん吉)
- 登場動物:真白(犬)、山犬