大山淳子『猫弁と奇跡の子』

「猫弁」シリーズ第2シーズン完結編。
百瀬太郎、弁護士。依頼されるのはペット訴訟ばかり、で、あだ名は猫弁。癖の強い前髪、丸メガネ、安っぽいスーツ、靴だけは上等。名声欲・出世欲・金銭欲、すべて無し。見るからに冴えない男だが、その頭脳は超優秀で、かのアインシュタインをも凌ぐほどとの噂さえある。

ストーリー
亜子との新婚生活にも少しずつ慣れてきた。まだまだぎこちない。呼ぶときも、つい「大福さん」と呼びかけてはあわてて「亜子さん」と付け加える。そのため、毎回、フルネーム(それも旧姓の)で呼んでしまっている。そんな新婚さんだが、強い愛で結ばれている。
百瀬に幼なじみから相談があった。昔ながらの商店街で、昔ながらの精肉店を引き継いでやっている男だ。友人価格で、つまり店のコロッケだけの実質無料で相談にのってやったのだが、その内容が奇妙だった。
男も知らぬ間に商店街で福引きが行われていて、好奇心で引いてみたら「いっとうしょう」が当たってしまって、その景品が・・・猫!生きた本物の猫!え、いっとうしょうって一頭賞ってこと?どういうこと?
もう一件、変なくじ引きの変な「いっとうしょう」。こちらはなんと「一棟賞」?
いっぽうの、亜子の勤務する「ナイス結婚相談所」にも意外な客が。その客の依頼は、もちろん、結婚式を挙げることだが、その相手というのが?
さらに、以前百瀬に押しつけられたことのある子供が、またやってきて・・・

感想
亜子が、シリーズの回を追うごとに、どんどん無邪気透明になってくる気がします。最初の頃は、こんなにほやっとふんわりした女性ではなかったのですが。
それだけ百瀬の影響が強いということでしょうか。
しかし、百瀬は優しいだけではありません。根は強い。強すぎる。その強さに気づけないと、周囲の人間は翻弄させることになります。しかも、ふわふわしているようでいて、実は誰よりもしっかりと自分というものを持っています。
百瀬は、百瀬自身もしらないうちに亜子と出会っていて、しかもそのとき、亜子は百瀬に初恋の片思いをしてしまいました。亜子にとって百瀬は、憧れて、憧れぬいて、ついに一緒になれた相手です。
それほどの亜子でさえ、この作品のなかで、とうとう百瀬にいうのです。「百瀬さん、さようなら」と。百瀬とわかれようと思ってしまうのです。
一方の百瀬も、今は亜子のことを深く愛しています。しかし自分を通すためには、・・・何も言い返せません。
この作品で思うのは、百瀬も亜子も善人だが、周囲も善人だらけだなあ、ということです。優しさが押し合いへし合いしている。善人はひとりでは無力だが、善人が固まって押し合いへし合いすれば、思わぬ遠くまでもぐぐっと進むことが出来る。なんかそんな感想を持ちました。
とにかく優しい雰囲気の本です。でも底に何かコツンと当たる芯があります。百瀬は相変わらず猫とかかわっていますが、猫は背景のようなもので、活躍はしません。主体はあくまで人間達です。人間達の泣き笑いです。
第2シーズン最終話ということは、猫弁シリーズ、これで終わってしまうのでしょうか?それともいつか再開してくれるのでしょうか?
もちろん、私は再開希望です。おそらく多数の読者達も、また猫弁に会えることを熱望していると思います。ですから、ぜひ!お願いしますね!
⇒まとめ:大山淳子「猫弁」シリーズ

※著作権法に配慮し、本の中見の画像にあえてボカシをいれる場合があります。ご了承ください。

目次(抜粋)
- 第一章 ミステリーくじ
- 第二章 おじいさんと犬
- 第三章 脱走
- 第四章 さようなら百瀬さん
- 第五章 奇跡の子
著者について
大山淳子 (おおやま じゅんこ)
2006年、『三日月夜話』で城戸賞乳腺。08年、『通夜女』で函館港イルミナシオン映画祭シナリオ賞グランプリ。11年、『猫弁~死体の身代金~』にて第三回TBS・講談社ドラマ原作大賞を受賞しデビュー、TBSでドラマ化もされた。他著に「あずかりやさん」シリーズ、『赤い靴』『犬小屋アットホーム!』など。
(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)
『猫弁と奇跡の子』
- 著:大山淳子 (おおやま じゅんこ)
- 出版社:株式会社講談社 講談社文庫
- 発行:2025年
- NDC:913.6(日本文学)小説
- ISBN:9784065414965
- 347ページ
- 初出:2024年単行本で発行
- 登場ニャン物:テヌー、ボンシャンス
- 登場動物:-


