桜井海『おじさまと猫』第14巻

おじさまの「師匠」は、あの世界的ピアニスト。
今回の初登場人物は、天才ピアニストのおじさまのお師匠様。その人の名は、マルガレーテ・ドレッセル!世界最高峰のピアニストの一人です。
おじさまは、なんとマルガレーテ・ドレッセルの一番弟子だったのです。

そのマルガレーテがこっそり日本に来ていました。実はおじさまのスランプを知って飛んできたらしいのですが、勝ち気なマルガレーテはもちろん、そんなことは言いません。それどころか昔通りにズバズバとキツイ言葉を並べおじさまをスパルタ教育します。
ナイーブなおじさま、師匠の指導に耐えられるのでしょうか?
厳しい師匠ですが、この方も大の猫好き。おじさまが自宅に誘いますが、あっさり断ります。ところが「猫がいますよ」の一言であっさり「行くわ」。にゃは。

さて、私にはこのマルガレーテさん、マルタ・アルゲリッチに見えて仕方ありませんでした。
Maria Martha Argerich、アルゼンチン・ブエノスアイレス出身、1941年生まれ。高齢となった現在もすばらしい演奏を聞かせてくれるクラシック界の生けるレジェンド。マンガではマルガレーテは町のピアノ少年に、ショパンの「革命のエチュード」(Etude Op.10,No.12ハ短調)を弾いて聞かせます。アルゲリッチもショパン国際ピアノコンクールで優勝していますし(1965年)、また日本とのつながりも深く、何回も来日しています。
でも残念ながら、いくら検索しても、アルゲリッチが猫と暮らしているとか猫好きだという情報は出てこないんですよね。あんなに世界中を旅して歩いているピアニスト、猫とのんびりできる時間なんてほとんどなさそうですし。
猫好きで世界的な女性ピアニストといえば、やはり、フジ子・ヘミングさんでしょう。本名:ゲオルギー=ヘミング・イングリッド・フジコ(Georgii-Hemming Ingrid Fuzjko、1931年12月5日 – 2024年4月21日)。聴力は左耳のわずか40%だけ、まるで現在版ベートーベンですが、晩年まで美しすぎる音を奏で続けました。
猫好きとしても有名でした。フジ子・ヘミングさんのまわりにはいつも猫がいました。彼女の有名な語録のひとつに(「あなたにとってピアノとは?」と訊かれて)「猫達を食わせていくための道具ね」なんて答えた、という話もあるくらいです。彼女と猫についての本も出ています。
でも私にはなぜか、このマンガの師匠のモデルはマルタ・アルゲリッチに思えてなりませんでした。正直、若い頃のアルゲリッチはあまり好きじゃなかったんですよ。タッチがちょっとベタっとしているように思えて。でも年をとるほどに音も澄んできて、今は大好きなピアニストの一人です。
町のピアノ少年の成長もたのもしいです。天才ピアニストたちに実際に会って、重要なことを悟ります。

そ・し・て!
こんなにも傷つきやすく、くずれやすい「天才」たちを支えているのは、いつだって猫。ふくまるはじめ、マリンや、愛らしい子猫たち!
おじさまの周りには、今日もやさしい空気があふれています。おすすめ。

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

目次(抜粋)
- 110話 坊やの挑戦にゃ
- 111話 飛んで来たにゃ
- 112話 王者の魂
- 113話 猫とピアノとミステリアス
- 114話 そっくりにゃ
- 115話 傷だらけの心
- 一番は誰にゃ
『おじさまと猫』第14巻
- 桜井海(さくらい うみ)
- 出版社:株式会社スクウェア・エニックス
- 発行:2024年
- NDC:726(マンガ、絵本)マンガ
- ISBN:9784757595675
- 165ページ
- モノクロ
- 初出:ガンガンpixiv 2024年3~8月掲載、描き下ろし
- 登場ニャン物:ふくまる、マリン、つよまる、モリン、まゆゆ、ハッチー、やんやん、カノン/li>
- 登場動物:-
