桜井海『おじさまと猫』第10巻
飼い主が夜逃げ。残された子猫を救え!
あらすじ
保護猫カフェのオーナーにレスキュー要請がはいった。アパートの借り手が夜逃げし、猫が部屋に残されたらしい。しかしオーナーはぎっくり腰でろくに動けない。おじさまと、おじさまの元教え子・九重は、オーナーに付き添ってレスキューに乗り出した。
そのアパートはまさにゴミ屋敷だった。あらゆるモノが積み上がり、腐臭がすごい。こんな部屋に本当に猫がいるのか?まだ生きているのか?もしまだ生きているなら、一刻も早く助け出さないと餓死してしまう!
感想
傷つき震える2つの若い魂が登場します。
ひとつ目は、置き去りにされた子猫のもの。まだ幼いのに、苦労しか知らない猫でした。腐った水を飲み、運よくご飯にありつけたときは急いでがっついて食べる。希望も何もない、ただ今日この日を生き延びる事だけを考えてきた子猫。
もうひとつは、若いピアニスト。幼少時代は神童といわれ、あの神田冬樹(=おじさま)の唯一の教え子にまでなったのに、あまりに繊細で傷つきやすい心は折れてしまいました。
この二人の間に、あまりに無邪気に飛び込んでいくのは、もちろん、またまたふくまる。気に入らないことがあっても、寂しくても、大好きなパパさん(=おじさま)を思って、
「ふくまる 良い子 かしこい子」 「ふくまるの心は宇宙より広いにゃー!!」
とがんばります。
ふくまるはかわいいだけの猫じゃないんです。パパさんの事が好きすぎて、いつだってパパさんのために必死です。その健気さがいじらしい。
もちろんパパさんの方も、ふくまろのためならなんだってします。ふくまろが可愛すぎて、猫全般が好きになり、ついに猫ボラまではじめちゃう猫まっしぐらぶりが、なんともかわいい。
こんなピアニストが奏でる音は、どれほど美しいでしょうか。聴いてみたいですね。
きめ細かい心理描写、底知れぬ優しさ。猫と音楽の持つ魅力、否、それ以上の、魔力?猫好きさんにも、音楽愛好家さんにも、超おすすめなマンガです。
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
目次(抜粋)
- 86話 パパさんはどんにゃ音?
- 87話 禍々しい出会いにゃ
- 88話 決闘にゃ!
- 89話 想い出あふれるにゃ
- 90話 アンコールにゃ!
- 91話 宇宙よりも広いもにょ
- ふくまるの決断にゃ
『おじさまと猫』第10巻
- 著:桜井海(さくらい うみ)
- 出版社:株式会社スクウェア・エニックス
- 発行:2022年
- 初出:ガンガンpixiv 2022年3月~8月掲載、書き下ろし
- NDC:726(マンガ、絵本)マンガ
- ISBN:9784757582620
- 171ページ
- カラー、モノクロ
- 登場ニャン物:ふくまる、シャム、他
- 登場動物:-