杏有記『小さないのちはどこへ行く?』
副題:ペットを飼う人たちに知ってほしいこと。
杏さんは、はじめは何も知らなかった。
人間の身勝手さも、捨てられた子達の運命も。
飼い犬のヨークシャーテリアに当然のようにお産をさせ、幼い子犬のしっぽを当然のように断尾した。
ヨークシャーテリアのしっぽは切るのが当たり前だと疑っていなかった。
が、子犬が死んでしまったことで、命の重さに気が付く。
成り行きで、「ハッピーハウス」というアニマルシェルターでボランティアとして働き始める。
当時のハッピーハウスは3人の女性の細腕とわずかばかりのボランティアに支えられた小さな施設だった。
動物達は容赦なく捨てられていく。
激しい怒りを感じながらも、当時の法律では何も出来ない。
ひたすらに動物達を救って歩く。
いろいろな事件が起こる。
阪神淡路大震災では450頭もの動物達を抱え込んだ。
ブルー十字倒産事件では実験動物用の犬猫が600匹も置き去りにされた。
「耳と足先を切り取られた4匹の子犬たち」の話は、新聞テレビでも結構大きく取り上げられたから、ご記憶の方も多いだろう。
それらの動物達の世話をし、1頭1頭に里親さんを見つけていく。
気の遠くなるような仕事。
理不尽な法律。
勝手で無責任な飼い主達。
金儲けしか考えていないペット業界。
非情なブリーダーたち。
さらに、安楽死の問題、個人シェルター崩壊の問題など、どこを見ても難問ばかりで解決の糸口も見えない。
それでも、アニマルハウス代表者・甲斐さんは突き進んでいく。
その使命感の強さ、命に対する愛情、底知れぬバイタリティー。
杏さんも必死に働く。
いやなことばかりではない。
なんといっても、不幸だった犬にすばらしい里親さんがついて、幸せになった姿を見ることが一番うれしい。
人間の方も成長した。スタッフとして働いた登校拒否のティーンエイジャー達は立派に巣立っていった。
著者は犬の飼い主であり、本の内容もほとんど犬のことしか書いていないが、ハッピーハウスでは猫も保護している。
猫たちの運命も犬とおなじ。
どうかこの本を読んで、動物達の置かれた立場について、もう一度考えてください。
(2005.7.8)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『小さないのちはどこへ行く?』
ペットを飼う人たちに知ってほしいこと
- 著:杏有記(あんず ゆき)
- 出版社:ハート出版
- 発行:2004年
- NDC:645.6(家畜各論・犬、猫)
- ISBN:4892955043
- 223ページ
- 登場ニャン物: 多数
- 登場動物: 犬多数
目次(抜粋)
- 全ての始まり
- 第1章 ペットたちのゆくえ
- 初めてのハッピーハウス
- 汗と汚れと貧乏
- その他
- 第2章 ハッピーハウスの事件簿
- 阪神淡路大震災
- 秋田県放置事件
- その他
- 第3章 小さないのちに出会ったら
- 小さないのちに出会ったら
- 動物保護なんでもQ&A
- その他
- 【巻末付録】お勧め獣医一覧