うめざわしゅん『ダーウィン事変』08巻
TVアニメ制作中!
人間を超える知能と、チンパンジーを超える身体能力を併せもつ、半分ヒトで半分チンパンジーの「ヒューマンジー」チャーリーと、恋人のルーシー。チャーリーの兄弟で同じくヒューマンジーのオメラス。彼らと、彼等をめぐる人々の争い、欲望、陰謀の数々。
生物の「種」とは何か。「種差別」とは何か。世界中で翻訳が進んでいる話題のコミックです。
TVアニメも決まりました。監督は津田尚克。ダーウィン事変アニメ公式サイトはこちら。(2024年12月現在、まだ内容は薄いですが💦)
ストーリー
ルーシーがオメラスにさらわれた。いや、もしかしたらルーシーが自らオメラスを追っていったのかもしれない。いずれにせよ、ルーシーが今、オメラスと一緒にいるのは確からしいのだ。
危険すぎる!
オメラスはルーシーに何をするかわからない。なにしろオメラスは恐ろしすぎる相手。FBIさえ、オメラスを下手に刺激することを恐れ、公開捜査に踏み切ることさえできずにいる。しかし水面下での捜査では、ふたりの居所さえ、なかなかつかめない。
チャーリーたちもルーシー救出のために必死に動く。ついに場所の検討がついた。チャーリー達一行はそちへ移動をはじめる。
その一方、ルーシーはオメラスの恐ろしい陰謀を知ってしまう。ルーシーの身に真の危機が・・・!
感想
生物の「種」とはなにか。ふたつの生物個体が同じ種に属するかどうかの第一定義は「自然環境で互いに交配して繁殖可能な子孫を生むことができるか」にあるとされています。
この「自然環境で」という部分が重要なのです。たとえばライオンとヒョウを人工的に交配させてレオポンを産ませることは可能です。が、レオポンに繁殖能力はありません。あるいは、私にわかりませんけれど、現代の遺伝子工学を駆使すれば、無理やり「レオポンの子」を作り出すことは、もしかしたら可能になったかもしれません。しかしそのような交配や繁殖は「自然環境で」とはかけ離れた状態であることは、誰の目にも明白なことです。
現在、人類は徹底的に「種差別」をしています。つまり、ヒトとその他の生物種を差別し、ヒト以外の生物種は「ヒトが何をしても良い相手」とみています。コンパニオン・アニマルと呼ばれるごく一部の動物達は、それなりに「ヒトと同じくらいに」扱われることがありますが、とはいえ、ヒト自身の身が危なくなるような状況では、そのような動物達もたちまち「ヒト以下」に落とされてしまいます。まして家畜たちにいたっては。牛・豚・鶏・羊・馬・その他。ヒトは彼等をモノとして扱い、搾取しまくっています。
オメラスとチャーリーは、ヒトとモノの間に生まれた存在です。そうです、研究動物としてのチンパンジーだって、ヒトにとっては「なんとでも好きに扱える」一種のモノに他なりません。
このあまりに根強い種差別を、少しでも和らげることができるのか。
オメラスの悲願は、種差別をなくすこと。その思想そのものはとても尊いものです。が、彼がそのために行おうとしている方法は、それは恐ろしいものです。そんな方法で種差別意識が少しでもなくなるのか。この先、どう展開していくのか。怒涛の第8巻でした。
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
目次(抜粋)
- 第38話 権原
- 第39話 an interview
- 第40話 Truth or Dare
- 第41話 コロニアル
- 第42話 noclipping
著者について
うめざわしゅん
作品集『パンティストッキングのような空の下』が「このマンガがすごい!」2017(宝島社)のオトコ編第4位にランクインし、話題になる。本作『ダーウィン事変』にて「マンガ大賞2022」大賞受賞、第25回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞受賞、「このマンガがすごい!」2022のオトコ編10位ランクイン、フランスの第50回アングレーム国際漫画祭にてBDGest’Artsアジアセクション賞受賞、フランス・バンドデシネ評論家協会Prix Asie de la Critique ACBD2023受賞など、数々の賞を獲得した。他作に『ユートピアズ』『一匹と九十九匹と』『ピンキーは二度ベルを鳴らす』『えれほん』など。
(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)
『ダーウィン事変』第8巻
- 著:うめざわしゅん
- 出版社:株式会社講談社 アフタヌーンKC
- 発行:2024年
- NDC:726(マンガ、絵本)
- ISBN:9784065374634
- 159ページ
- モノクロ
- 初出:「アフタヌーン」2024年7月号~11月号
- 登場ニャン物:-
- 登場動物:-