アリ・ブランドン『書店猫ハムレットの休日』
ハムレット、全米キャット・ショーに出演する。
原作ではこれが「書店猫ハムレットシリーズ」4作目ですが、和訳では3冊目となります。
あらすじ
個人書店「ペティストーンズ・ファイン・ブックス7」のマスコット猫、ハムレットは、アメリカンショートヘアーにしては大きすぎる雄猫だ。この真っ黒な猫が、大会中に飼い主ダーラの真似をして、空手の型を自発的に披露してみせたのだから、話題にならないはずがない。会場にいあわせた何人もの人がそれぞれ動画を勝手にSNSにアップした。ハムレットは一躍、超有名「空手キャット」となった。
ハムレットは特別ゲストとして全米キャット・ショーに招かれることとなり、飼い主のダーラと、親友のジェイクが付き添うことになった。開催地はフロリダ。往復航空券もショー開催中のホテル代もすべてキャット・ショーが出してくれる。しかもフロリダにはジェイクの母親が住んでいて、キャット・ショーのボランティアとして働く。ダーラはこのチャンスをとらえて、1週間の長期休暇をとることにした。思えば大叔母から書店を相続して以来、まとまった休暇を楽しむ暇もなかった。まだ35歳と若いとはいえ、そろそろ羽を伸ばさないと疲れちゃうわ!
ゆっくり休暇を楽しむつもりで、飛行機に乗った二人と1ニャンだったが・・・
もちろん、そうは問屋が卸さニャい。一行を待ち受けていたのは、またもや・・・死体!
感想
前作では、猫ミステリーなのにハムレットの登場が少なすぎると少々不満でしたが、この作品では大満足♪ なんたって旅行先のキャット・ショーが舞台なんですもの。最初から最後まで猫だらけの、猫愛好家だらけ。しかも旅行先とあって、ハムレットとダーラはほぼ常に同じ空間にいるか、一本のリードで繋がっているかで、ハムレットの登場シーンも多い♪
いや、楽しい作品でした。まさにこれぞ「猫ミステリー」。
猫だけじゃありません。南フロリダの、いかにもリゾートっぽい風景が詳細に描かれていて、読んでいる方も体半分をフロリダに置いているような気分です。出てくる食べ物もおいしそうで、料理名を何回画像検索したことか。登場人物たちもいかにも南国っぽい。陽気でいっけんチャランポランだけど、実は頼りになるタクシー運転手のあんちゃん。年齢のわりには元気すぎるボランティアたち。キャット・ショーにはお決まりの猫愛護活動家たちのデモと、これまたお決まりの、猫を私欲の道具としか見ない悪徳ブリーダー。
最初から最後まで賑やかで、華やかで、キャーキャーワイワイ言っているうちに終わったみたいな。トイレに行きたくなってもなかなか「切りの良いところ」に差し掛からず、途中で本を置きにくい作品でした。ほぼ一気読みでした。
また、これは究めて個人的な感想になりますけれども。
終末でジェイクは保護猫を引き取ろうとします。そのシャムの子猫、トリクシーちゃんは3本肢なので里親希望者が現れず残っていたのでした。・・・残っていた?いえ、、、最期の瞬間に最高な里親家族が現れますから安心して!
実はうちにも3本肢の猫がいます。車に轢かれて真夏のアスファルトに横たわっていた小さな子猫。見つけたときはすでに片腕を失っていて、体中傷だらけ、さらにノミだらけ。あと30分発見が遅れていたら虎太郎は確実に死んでいたでしょう。以後、私はどうしても肢の無い子が気になって仕方がないのです。トリクシーちゃんが巻末で幸せになれて、この作品への好感度も爆上がりしちゃいました。
猫好きのあなたに、ぜひお勧めな一冊です。ぜったい楽しめます!
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
著者について
アリ・ブランドン Ali Brandon
ダイアン・A・S・スタカート名義で〈探偵ダ・ヴィンチ〉シリーズを発表したほか、ヒストリカル・ロマンスをアレクサ・スマート、アンナ・ジェラードの名義でも発表。 (著者プロフィールは本著からの抜粋です。)
『書店猫ハムレットの休日』
- 著:アリ・ブランドン Ali Brandon
- 訳:越智睦(おち むつみ)
- 出版社:株式会社東京創元社 創元推理文庫
- 発行:2017年
- NDC:933(英文学)長編推理小説
- ISBN:9784488286040
- 405ページ
- 原書:”Literally Murder” c2014
- 登場ニャン物:ハムレット
- 登場動物:ローマ(イタリアングレーハウンド犬)