アリ・ブランドン『書店猫ハムレットのうたた寝』

アリ・ブランドン『書店猫ハムレットのうたた寝』

ダーラの友人が突然死。事故?病死?それとも・・・まさかの殺人?

原作ではこれが「書店猫ハムレットシリーズ」5作目ですが、和訳では4冊目となります。

あらすじ

ダーラは個人書店「ペティストーンズ・ファイン・ブックス」のオーナー。30代半ばの女性、今は独り身。

それまでラウンジに使っていた2階を、コーヒー・バーに改装。十代と若いロバートは、販売員からバリスタに転向した。書店の副業としてはまずまずの客の入りだ。若者たちが、コーヒー(と、イケメンなロバート)を目当てに来店するようになったのもよかった。それまでの客層はシニア層がメインだったから。今はまだ1階の書店部分を通り過ぎるだけだけど、いずれ本を買ってくれるようになるかもしれないし。

そんな十代の女の子たちの会話を漏れ聞いたダーラ。近所のコーヒー・バーに、よほど美味しい豆があるらしい?近いうちに是非偵察しなければ、と思う。何しろ昨今の個人書店経営は厳しい。倒産なんて事態に陥らないよう、もっと客を集めなくては!

そのための別の企画も準備していた。「ブロック・パーティー」の開催である。その日だけ車両の侵入を規制して、商店街をあげてのお祭りを行う。ライブバンドの演奏や、空手やダンスの演技、子ども達の競技、各種模擬店。一人でも客が増えればと、店主たちも必死だ。

ブロック・パーティーは大いに盛り上がった。大成功に見えた。

なのに。

その最中にまだ若い隣人が、突然死するなんて!?

感想

ダーラとハムレットの距離が随分縮まった感じがあります。それはつまりハムレットの登場シーンが増えたというか、いつもそこにいて、ダーラも頻繁にハムレットに話しかけているということですけれど。リードとハーネスをつけてダーラと一緒に外出する機会が増えたのもいいですね。室内飼いのハムレットの行動範囲がぐんと広がって、探偵の才能もますます冴えています。

前作品は、いかにも南国フロリダらしい雰囲気にあふれていましたが、今回はいかにもアメリカらしい(?)雰囲気にあふれた作品でした。ブロック・パーティーの準備やその様子が丁寧に語られていて、その騒ぎっぷりが目に見えるようです。日本のお祭りとは、またちょっと違う、というか、全然違うんですよね、あちらのパーティーは。若者だけでなく、お爺ちゃんもお婆ちゃんもノリノリで陽気で。

そんな中で人が死んだのですから、ダーラたちがゾッとしちゃうのも無理ないんです。はい、今回も死体の第一発見者はダーラ!

“推理小説”としての要素は、・・・ちょっと後出しすぎない?みたいな面もありましたけど・・・まあこの作品は推理小説といっても”コージーミステリー”ですし、その”コージー”な部分をおおいに楽しめばよい作品だと思います。巧妙なトリックと絶妙なヒントを織り込んで、読者に犯人当てを挑戦させるような、古典的な推理小説ではありません。

そして、以下は半分「ネタバレ」になりますが・・・

今回、ダーラは「死体」よりもっと気がかりなことができてしまいました。おかげでずっとモヤモヤしっぱなし。ダーラの「モヤモヤ」は、その後どう展開していくのか?次の作品でその「モヤモヤ」は晴れるのか?読んでいる方もモヤモヤ半分、期待半分で終わる作品となっています。

アリ・ブランドン『書店猫ハムレットのうたた寝』

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

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著者について

アリ・ブランドン Ali Brandon

ダイアン・A・S・スタカート名義で〈探偵ダ・ヴィンチ〉シリーズを発表したほか、ヒストリカル・ロマンスをアレクサ・スマート、アンナ・ジェラードの名義でも発表。 (著者プロフィールは本著からの抜粋です。)

『書店猫ハムレットのうたた寝』

「書店猫ハムレット」シリーズ

  • 著:アリ・ブランドン Ali Brandon
  • 訳:越智睦(おち むつみ)
  • 出版社:株式会社東京創元社 創元推理文庫
  • 発行:2017年
  • NDC:933(英文学)長編推理小説
  • ISBN:9784488286057
  • 344ページ
  • 原書:”Plot Boiler” c2015
  • 登場ニャン物:ハムレット
  • 登場動物:ローマ(イタリアングレーハウンド犬)
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