アリ・ブランドン『書店猫ハムレットの挨拶』

アリ・ブランドン『書店猫ハムレットの挨拶』

書店猫ハムレットシリーズ最終話。書店経営は軌道に乗ってきたが、ダーラの心中は・・・?

原作ではこれが「書店猫ハムレットシリーズ」6作目ですが、和訳では5冊目となります。

あらすじ

書店の2階を改装したコーヒー・バーは利益を上げはじめ、稀覯本のオンライン販売も増えてきた。ダーラの個人書店経営は今のところうまくいっている。

なのに、ダーラはモヤモヤしっぱなし。その原因はリース刑事の婚約者、コニー。なぜか彼女はダーラに頻繁に連絡をくれ、すべてにおいて頼ってくるようになった。知り合ってまだ間もない、まだ友人ともいえないような間柄なのに。それになにより、コニーの性格!感情の起伏があまりに激しく、衝動的で唐突で、一緒にいるだけでこちらの方が疲れきってしまう。

その日もコニーのウエディングドレス選びに強引に付き合わされていた。運命のドレスを探して試着し続けるコニー。うんざりのダーラと親友のジェイク。そう、ジェイクまで巻き込まれていたのだ。

と、そのとき、コニーの耳をつんざくような鋭い悲鳴が!ダーラたち、またまた死体に遭遇しちゃったのか!?それとも?

その一方で。ダーラの周辺では新たな恋がつぎつぎと、ひそかに、あるいは堂々と、うまれているのだった・・・

感想

不思議な能力を持つ黒猫ハムレット。いくつもの殺人事件を解決―――正確には、解決のためのヒントを与え続けてきました。犯人を暗示する本を棚から落としたり、キーボードに飛び乗ってタイプしたこともありました。さらにダーラを守るため殺人犯に飛びかかったこともありました。かと思うと、とんでもない技を披露して一躍「動画配信の大人気者」になったり。まさにスーパーキャットです。

今回のハムレットはさらに進化しています。今まで以上に早くから犯罪を予見し、殺人犯に気づき、ダーラにいくつものヒントを送ります。しかし人間の方は今までにも増してノンビリで、ハムレットの意図を理解できません。皆さん、やれ結婚式の準備だ、感謝祭の準備だ、デートだなんだと忙しいですからね。ハムレットひとりが頑張っている感じ。

そんな最中に、思いがけない人物が亡くなり、思いがけない人物が結婚します。ダーラのごく身近な人たちです。ダーラはまた、殺人犯相手の危険な冒険にも飛び込みます。同行のハムレットだけを頼りに、スマホを握りしめて。

私は、この最終話が一番「推理小説(ミステリー)」としては面白かったです。前作ではヒントなど「後出しすぎない?」と書きましたが、今作品は良い感じにヒントも配分されていました。もちろん、「読み物」としては『書店猫ハムレットの休日』の方がお気に入りですが、ー--なんたってキャットショーが舞台なんですもん!猫だらけの猫好きだらけ!ー-ーミステリーとしてならこっちの方だな、と。

また、この作品は「コージーミステリー」より「ミステリーロマン」と呼ぶ方がもっとふさわしいかも?ダーラ自身の恋は全然発展しないのですが、彼女のまわり中、じわじわと、あるいは急激に、お相手を見つける人が増えていきます。もし次回作があれば、おそらくハムレットまでカップリングしちゃうんだろうな、って勢いです。そのお相手にふさわしいと思われる猫ちゃんまで登場したのですから。あの子のその後が気になります。幸せな飼い猫になれるのかな。

これがシリーズ最終話なんて残念。もっと読みたかった!

アリ・ブランドン『書店猫ハムレットの挨拶』

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

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著者について

アリ・ブランドン Ali Brandon

ダイアン・A・S・スタカート名義で〈探偵ダ・ヴィンチ〉シリーズを発表したほか、ヒストリカル・ロマンスをアレクサ・スマート、アンナ・ジェラードの名義でも発表。 (著者プロフィールは本著からの抜粋です。)

『書店猫ハムレットの挨拶』

「書店猫ハムレット」シリーズ

  • 著:アリ・ブランドン Ali Brandon
  • 訳:越智睦(おち むつみ)
  • 出版社:株式会社東京創元社 創元推理文庫
  • 発行:2018年
  • NDC:933(英文学)長編推理小説
  • ISBN:9784488286064
  • 362ページ
  • 原書:”Twice Told Tail” c2016
  • 登場ニャン物:ハムレット
  • 登場動物:
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