アリ・ブランドン『書店猫ハムレットの跳躍』
超マイペースな黒猫が本を落とすとき。
原作ではこれがシリーズ2作目ですが、和訳では1冊目となります。
あらすじ
ダーラは30代半ばの独身女性(バツイチ)。大叔母の死後、ニューヨークの書店とそのアパート付き建物、そしてそこに住む黒猫のハムレットを相続した。
書店には店長のジェイムズがいるが、彼とダーラの二人だけでは人手が足りない。アルバイト募集に求人は少なくないが、適格者となると・・・
なにしろ、条件が厳しすぎるのだ。本の知識はもちろん多い方がよい、人当たりももちろん大事だ、が、何より優先されるのが、ハムレットとの相性!この気難しい雄猫に認められない限り、書店で雇うわけにはいかない。ハムレットは応募者をことごとく追い出してしまっていた。
そこへ現れた十代の青年。ゴス風の黒づくめの服装、ティーンエイジャー特有のぶっきらぼうな態度、しかもこの顔、なんとなく見覚えが?ダーラは即断ろうとしたが、なぜかハムレットが彼を受け入れてしまう。ダーラは仕方なく、この猫背の若者を雇うことにした。
さて、書店にくる常連さんたちの中には、ダーラの苦手な人もいる。ときにはトラブルもおこる。女性のダーラ・初老のジェイムズ・ティーンエイジャーのロジャーという組み合わせでは心許ないこともあるが、番猫のようなハムレットと友人たちに助けられてなんとか切り抜けていく。
その一方で、気になる男性も来店する。デートに誘われてウキウキなダーラ。
なのに。常連さんの一人が殺された。しかも第一発見者はダーラ!?
唯一の目撃者は黒猫
ハムレットはアメリカンショートヘアにしては体の大きな黒猫。その雰囲気は、
もしだれかが彼女の書店での生活にサウンドドラックをつけてくれるとしたら、ハムレットということばが出るたびに、キーッというバイオリンの音とともに不吉な”ダダダーン”という登場テーマが流れるだろう。
page12-13
なんて猫なのです。いわゆる「書店のマスコット猫」的存在とはほど遠い。誰にも媚びず、常に自分を主張して、堂々と、そっけなく、鼻先で人間をあしらうような猫。猫というより黒豹のイメージに近いかも?
この猫が、尋常の猫ではない。殺人事件解決のヒントを「本を落とす」という方法で教えてくれるのです。問題は、人間の方。落とされた本を並べて、それが何を意味するのか、誰を指しているのか、ああでもないこうでもないと頭を悩ませることになります。そんな人間たちを冷ややかに見下ろしながら、ハムレットは書棚の間をひっそりと行き来します。
なかなか楽しいミステリーでした。猫そのものの描写が少々少なすぎるとは思いましたけど。ハムレット、せっかくこんなに魅力的な猫なのに、もっと描いてほしい!
ところで、書店猫ハムレットシリーズ、この作品の前にもう1作あり、本作は2作目にあたるそうです。あとがきによりますと、
日本で二作目からご紹介する運びになったのは、本作が最もハムレットの魅力をみなさまにお伝えできると判断してのことです。いずれ1作目 Double Booked for Death もご紹介できればと思っていますが、(以下略)
page302
と書いてありますので、その1作目が出るのをずっと待っていました。が、シリーズ完結編とされる『書店猫ハムレットの挨拶』が出た後も、気になる1作目が出る様子がない?シリーズ全6作中、最初の1作だけ訳さないって、何故?そういえば「シャム猫ココ『猫は・・・』シリーズ」も、最初は本来の発表とは異なった順番で翻訳されていましたっけ。まあ、あちらは最終的には全話翻訳されましたけれど。
出版社にお願いです。シリーズ物は、最初から順番に刊行してください。2作目の方が面白ければ、1作目と同時発売でもいいじゃないですか。そうでないと、読む方は落ち着きません!
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
著者について
アリ・ブランドン Ali Brandon
アメリカ、テキサス州生まれ。ダイアン・A・S・スタカート名義で「探偵ダ・ヴィンチ」シリーズを発表したほか、ヒストリカル・ロマンスをアレクサ・スマート、アンナ・ジェラードの名義でも発表。
(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)
『書店猫ハムレットの跳躍』
- 著:アリ・ブランドン Ali Brandon
- 訳:越智睦(おち むつみ)
- 出版社:株式会社東京創元社 創元推理文庫
- 発行:2015年
- NDC:933(英文学)長編推理小説
- ISBN:9784488286026
- 394ページ
- 原書:”A Novel Way To Die” c2012
- 登場ニャン物:ハムレット
- 登場動物:-